77 / 100
次の町 モリッツ
治癒術と錬金術
しおりを挟む
かつて、錬金術とは不老不死を求める人々の飽くなき欲求によって生み出された。魔法という概念がまだかつて彼方の世界に残っていたころ。先生の世界ではその技術の開発に様々な技術者や学者がその学問に没頭していった。
金属を未知・既知を問わず変換し、新たな物を生み出したり新たな物質を探し出したり。
「まさにこれは魔法・・・魔法が当たり前の私ですらそう思うわ」
治癒術の限界を早々に知って、私は先生が何故患者を時折却って傷つけてまで治療する外科?の意図に気づいた私は先生の偉大さ、そして先生の世界の知識になんとなく寂しさも感じた。
精霊もなく、魔法もなく、地は人口の石で覆われ、空気は淀み神は消えた世界。しかしその技術のすさまじさを知る度に彼の世界の変化に納得した。
必要ないのだ。魔法も、神も、なにもかもが。技術と知識で全てが片付く世界。殺風景で、悍ましい世界だ。
「けど、その技術が人を救う。知識の、人の及ばない領域に手を伸ばした・・・魔法の領域に」
出血を止めるのが精いっぱいの治癒術でケガが完治する。化膿した傷口が清潔になり、青ずんだ腕の色が元に戻り痛みが消える。組み合わせるだけで、神官や聖女の本職の技術を凌駕する。量が足りなくても悪化させずに済む。
「えっと・・・もう大丈夫なんで?」
「ん?ああ・・・そうね、貴方はお仕舞。次の人!」
思わず考え事をしてしまっていた。意識を戻すと目の前の彼の傷はとっくに完治していた。神様の訓練のお陰か時折並列思考というか、考え事をしながら作業に没頭できてしまう。ミスらしいミスはなかったけれども悪い癖だ。
「さて、これでお仕舞かしら」
それから一時間はかかっただろうか。数人相手に結構時間がかかってしまった。完治までもっていけたのでまあ、そこを落としどころにして考えないようにしよう。
「すごい、腕前も本物ですね・・・それどころか一流のお方だとは」
「これくらいならね、骨が折れたりするともっと薬草とか添え木とか使わないとダメだけど」
「物があればできるだけでも全然違いますよ、ここにはそれすら難しい場合が殆どだから」
オーナーさんのため息から察するに本当に本職が居ないようだ。多少目利きが居る程度なんだろうか。
もしくは治療まで行けない、ざっくりと傷に効くとか熱さましだとかそんな程度の知識で商っているのだろうか?
まさかそんなことは無いだろうけど。
「治癒術はあくまで応急手当と治療促進だから劇的な治癒は普通は難しい。魔法でもそれは同じことだものね」
「やはりそうなりますか・・・」
「でもそれを可能にするのが先生の技術、それを私が受け継いでいるわけだけど・・・薬学自体はともかく組み合わせの問題は部外秘だから教えてとかそんな頼み事は受けないでね?私も嫌だし」
とにかく、腕前も信用してもらえたようでなにより。ここでしばらくお金稼ぎをさせてもらおう。
「それじゃあ私は昼食の続きに戻るわ」
私はそう言うと店に戻ることにした。
「オーナー、彼女は一体・・・?」
「マックさんの冒険者仲間の友人という話だ、腕前も最初は半信半疑だったが・・・医師としてはもちろん、ならず者相手の立ち回りも凄かったよ」
オーナーが店での騒ぎを伝えると怪我で寝込んでいた猟師達は皆驚きを隠せなかった。相手はモリッツの町では有名なならず者達であり、猟師達も一対一ならともかく騙し討ちやいざとなれば武器や刃物の使用を辞さない彼らには散々に手を焼かされていたからだ。
「彼女達ならそうそうやられる事はないし、見ず知らずとはいえ奴らに比べたら遥かに善良で話の通じる相手だ。味方につけておいて損はないだろう」
「そうだったんですか・・・」
猟師たちは手際よく治療していた彼女の姿を見る限りとても彼女が悪辣なならず者をあっさりと撃退したとは信じられなかったがオーナーが嘘をつくはずもなく、想像だけとはいえ彼女が医者だけでなく戦士としての腕前もあるという事が事実であるという事だけを知らされて戸惑うばかりであった。
「あんな可愛い子が・・・」
全員が治療を受けていた時の彼女を想像してみる。真剣な表情で治療をし、終わるとほほ笑んで回復を喜び、賛辞を望むでもなく次の患者へと移っては手を抜くことなく治療する。誤魔化しもできるだろうに、彼女は全員を完治させたのだ。医師の数は少なく、何度も治療を行ってお金を取る事も可能であるにもかかわらずである。
「少なくとも仕事の上では間違いない人みたいだな・・・」
「手を抜こうって感覚が無い感じだったな」
彼らは猟師であり、学があるわけではない。だが彼らも職人である。彼女の仕事ぶりに彼らは職人のそれを見出していた。そして中には・・・。
「それに・・・なんだか良い匂いもしたしな・・・」
「ああ、それに体もすごかった・・・」
「あんな子が奥さんだったらなぁ・・・」
若い猟師には目の毒になりがちな体つきと顔立ちも合わさって老若それぞれが高い評価をしていた。
金属を未知・既知を問わず変換し、新たな物を生み出したり新たな物質を探し出したり。
「まさにこれは魔法・・・魔法が当たり前の私ですらそう思うわ」
治癒術の限界を早々に知って、私は先生が何故患者を時折却って傷つけてまで治療する外科?の意図に気づいた私は先生の偉大さ、そして先生の世界の知識になんとなく寂しさも感じた。
精霊もなく、魔法もなく、地は人口の石で覆われ、空気は淀み神は消えた世界。しかしその技術のすさまじさを知る度に彼の世界の変化に納得した。
必要ないのだ。魔法も、神も、なにもかもが。技術と知識で全てが片付く世界。殺風景で、悍ましい世界だ。
「けど、その技術が人を救う。知識の、人の及ばない領域に手を伸ばした・・・魔法の領域に」
出血を止めるのが精いっぱいの治癒術でケガが完治する。化膿した傷口が清潔になり、青ずんだ腕の色が元に戻り痛みが消える。組み合わせるだけで、神官や聖女の本職の技術を凌駕する。量が足りなくても悪化させずに済む。
「えっと・・・もう大丈夫なんで?」
「ん?ああ・・・そうね、貴方はお仕舞。次の人!」
思わず考え事をしてしまっていた。意識を戻すと目の前の彼の傷はとっくに完治していた。神様の訓練のお陰か時折並列思考というか、考え事をしながら作業に没頭できてしまう。ミスらしいミスはなかったけれども悪い癖だ。
「さて、これでお仕舞かしら」
それから一時間はかかっただろうか。数人相手に結構時間がかかってしまった。完治までもっていけたのでまあ、そこを落としどころにして考えないようにしよう。
「すごい、腕前も本物ですね・・・それどころか一流のお方だとは」
「これくらいならね、骨が折れたりするともっと薬草とか添え木とか使わないとダメだけど」
「物があればできるだけでも全然違いますよ、ここにはそれすら難しい場合が殆どだから」
オーナーさんのため息から察するに本当に本職が居ないようだ。多少目利きが居る程度なんだろうか。
もしくは治療まで行けない、ざっくりと傷に効くとか熱さましだとかそんな程度の知識で商っているのだろうか?
まさかそんなことは無いだろうけど。
「治癒術はあくまで応急手当と治療促進だから劇的な治癒は普通は難しい。魔法でもそれは同じことだものね」
「やはりそうなりますか・・・」
「でもそれを可能にするのが先生の技術、それを私が受け継いでいるわけだけど・・・薬学自体はともかく組み合わせの問題は部外秘だから教えてとかそんな頼み事は受けないでね?私も嫌だし」
とにかく、腕前も信用してもらえたようでなにより。ここでしばらくお金稼ぎをさせてもらおう。
「それじゃあ私は昼食の続きに戻るわ」
私はそう言うと店に戻ることにした。
「オーナー、彼女は一体・・・?」
「マックさんの冒険者仲間の友人という話だ、腕前も最初は半信半疑だったが・・・医師としてはもちろん、ならず者相手の立ち回りも凄かったよ」
オーナーが店での騒ぎを伝えると怪我で寝込んでいた猟師達は皆驚きを隠せなかった。相手はモリッツの町では有名なならず者達であり、猟師達も一対一ならともかく騙し討ちやいざとなれば武器や刃物の使用を辞さない彼らには散々に手を焼かされていたからだ。
「彼女達ならそうそうやられる事はないし、見ず知らずとはいえ奴らに比べたら遥かに善良で話の通じる相手だ。味方につけておいて損はないだろう」
「そうだったんですか・・・」
猟師たちは手際よく治療していた彼女の姿を見る限りとても彼女が悪辣なならず者をあっさりと撃退したとは信じられなかったがオーナーが嘘をつくはずもなく、想像だけとはいえ彼女が医者だけでなく戦士としての腕前もあるという事が事実であるという事だけを知らされて戸惑うばかりであった。
「あんな可愛い子が・・・」
全員が治療を受けていた時の彼女を想像してみる。真剣な表情で治療をし、終わるとほほ笑んで回復を喜び、賛辞を望むでもなく次の患者へと移っては手を抜くことなく治療する。誤魔化しもできるだろうに、彼女は全員を完治させたのだ。医師の数は少なく、何度も治療を行ってお金を取る事も可能であるにもかかわらずである。
「少なくとも仕事の上では間違いない人みたいだな・・・」
「手を抜こうって感覚が無い感じだったな」
彼らは猟師であり、学があるわけではない。だが彼らも職人である。彼女の仕事ぶりに彼らは職人のそれを見出していた。そして中には・・・。
「それに・・・なんだか良い匂いもしたしな・・・」
「ああ、それに体もすごかった・・・」
「あんな子が奥さんだったらなぁ・・・」
若い猟師には目の毒になりがちな体つきと顔立ちも合わさって老若それぞれが高い評価をしていた。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ
neonevi
ファンタジー
運命に連れられるのはいつも望まない場所で、僕たちに解るのは引力みたいな君との今だけ。
そんな風に引き寄せ合う者達が、世界の波に翻弄されながらも抗い生きる物語。
※この作品は小説家になろうにも掲載されています
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる