万能虚弱賢者の異世界放浪記

ファウスト

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アルネ村

薬の知識のチュートリアル

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俺は連れられるままに詰め所らしき場所へと連行されていく。結構足早に移動したので疲れる。

「さて、もう一度尋ねるが・・・薬売りではないのか?」
「ええ、一応・・・」
「曖昧な言い方だな」


そうだなぁ、自分でもそう思うが・・・。自分から『賢者でえす!』と名乗るのもいかがなもんか。中身はただの高校生にすぎないのだからして。ましてや魔法使いです!ってのもないな。

「一応一念発起して諸国を漫遊しようかと思い・・・」
「旅を・・・、それにしては軽装だが」
「慣れていないもので、加減を間違えたので」

言い訳としては苦しいが事実である。世間知らずの学者とかそんな感じに想像してくれたら嬉しいんだけどな。

「なるほどな、しかしならこの薬の量はおかしくないか?」
「うーんと・・・」

俺はそういわれて座らされている取り調べ机に並んだ鞄の中身に目をやる。
小瓶や紙包み。もしくは乾燥させた葉や根っこなどなどの薬草類。それが机一杯に並んでいる。

「これは・・・自分用といいますか」
「これが?」
「どうにも心配性といいますか、かかりそうな病気にだけは心当たりがありまして」

苦笑いを交えつつ俺はひとつずつ包みや瓶を指差していく。注目すればそれが長く見慣れたモノかのように説明が頭に浮かぶので不思議だ。

「これは咳止めでしょ、これはお腹が痛いとき、これは熱が出たときで・・・それからそれから」
「ふむふむ」

薬の説明を続けていったがその量が多かったのか途中から衛兵の男性達もあきれた様子で聞いていた。

「これが眠れない時の・・・」
「わかった、もういい・・・もう一回聞くが、あんた医者じゃないんだよな?」
「ええ、残念ながら」
「医者に詳しい訳じゃないが・・・アンタそこらの医者より医者に向いてるんじゃないのか」
「それは買いかぶりというものでしょう」
「っていうかこれが自分用って事はあんたどこまで虚弱なんだ」

至極全うな意見が飛び出す。ホント自分でもそう思う。どうしてこんな体質で旅に出ようなんて思ったのか。自分なら絶対しないよな。

「とりあえず此処に来るまでに結構気分がよろしくない程度には・・・」
「よくよくみると顔色悪いな」
「これじゃあウチで悪さするどころか近くの町に行けるかどうかも怪しいぞ」

途中から俺の取り調べは俺の体調に関する話題にシフトしていき、いつのまにか療養がてら泊まっていく事が決定していた。なんでもここらへんは薬草の産地だとか。
彼女に苦し紛れで言った事がどうやら当たっていたようでひと安心。

「とりあえず他の警らの連中に声かけてくるから養生しなよ」
「ええ、ありがとうございます」

離れに案内してもらった俺は衛兵の人達に連絡が済むまではうろうろしないでくれと一応言われて解放された。和風テイストの建物にはい草の香りが漂っており、俺の心を癒してくれる。どことなく現実感はないがからだのだるさや咳の辛さなどはとてもリアルで、そして人達の仕草も人間達のそれであった。

「知らない世界・・・か」

ワクワク感が全くないと言えば嘘になる。俺はこういうお話は大好きだし、恥ずかしい話妄想も結構してきた。しかし俺がまさか裏方役というか賢者になるとは思っていなかったが。

「一応、薬を調合してみるか」

薬研を取り出して俺は薬草をごりごり磨り潰していく。作りたい薬を思い浮かべれば自然と手が素材を薬研に放り込んでいくのでそれをまたごりごり。作ったのは胃腸薬。
食事が合わない可能性もあるし、胃腸が弱い可能性もかなりある。なにせちょっと走っただけでバテてしまうくらいだ。胃腸が弱いくらいの可能性はいくらでもある。

「苦いのは困るけど・・・、即効性が要るから粉末にするしかないんだなぁ」

薬の形状もいくつかあり、錠剤やらシロップやら。ポーションみたいな飲み薬なんかもあるが面白いことにそれぞれに効能が付与されるらしい。

粉末:味のバフが全くかからない代わりに効能や即効性付与
錠剤:味のデバフ解消。飲めない薬もこれで安心。ただし効能や即効性にデバフ
シロップ:味にバフ効果あり。ただし効能にデバフがかかる。またコストが高い
ポーション:加工が容易く、粉末と同様の効果があるが一度に服用する量が増えるため苦い薬などは地獄。ただしシロップと混ぜて二重加工すると味にもバフがかかる。

薬草をしがんでもいいがそれにもいろいろと良し悪しがある。

「とりあえず三つほど作って・・・うぐ、ごほん」

さっそくひとつ飲む。水は水筒を譲ってもらったのでそれでどうにか飲む。に、苦い。
驚くほど苦い。これはシロップの作成も視野にいれなければならない。

「素材には薬草と・・・、イエロービーのはちみつか」

手に入れられたら作ろうっと。
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