ドラゴンになったので世界を救う為に国と跡継ぎつくります!

ファウスト

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いざ行かん、リットリオ

腰になんか挿そう

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挨拶を交わして訓練場を跡にすると俺は心を落ち着けるために息を大きく吐いた。いやー、若いもんの鍛錬に加わるのはいいもんだ。え、今は俺も若いだろって?でもこの体でも30回っちゃったしなー。
ウキウキしながら帰る最中、俺は鍛冶屋に寄った。

 『鍛冶屋 Wホットショット』

ドワーフが経営する店でオカマのキャサリンの息が掛かった店のはずだ。

 「よう、開いてるかい?」
 「開いてなきゃ看板は出さねえよ。」

どこのどいつだ?と奥から小柄なおっさんが出てきた。髭もじゃの筋肉質なおっさんで典型的なドワーフだ。

 「キャサリンの紹介できた。」
 「オカマにゃ見えねえが・・・両刀か?」
 「よせよ、男色の趣味はないぜ。」

そう言うとドワーフのおっさんはあからさまにほっとしたような態度をとる。
ケツを狙われてたのか・・・。

 「それで、あのオカマの紹介となると無碍にできねえやな。」

 用件はなんだ?と聞いてくる。今回はそうだな・・・。

 「刀を作って欲しい、わかるか?」
 「カタナ? なんだいそりゃ。」
 「折れず、曲がらずを目標に作られた片刃の曲剣さ。できるか?」

ふーむ、と唸りながらおっさんは考える。おそらく俺の言葉からカタナを想像しているのだろう。

 「出来なくはないぜ、イメージが違うかもだが何本か作ってみる。」
 「ありがてえ、お礼と言っちゃなんだが魔導金属を融通してやるよ。」
 「話がわかるな、こっちもサービスといっちゃ何だがそこの剣を一本持ってってくれ。」

そういうとドワーフのおっさんは籠を指差す。まるで傘立てのように乱雑に扱われているそれは素人目にみても可哀想なシロモノだ。

 「あれは?」
 「ウチの新人が作ったモンさ、耐久度のテストかねて入り口に立てかけて風と湿気に当ててんのさ。」

 切れ味のテストもしたいが時間がなくてな!と大きな声で帰ってくる。サービスついでに弟子達のテストもさせるってか強かなもんだ。
 俺は遠慮なくいろいろと物色すると中に一本だけやたらと頑丈に作ってある剣があった。こりゃ剣というより鉈じゃん。

 「鉈がおいてあるからもらっとくぞ!」

 俺はそういうと鉈とその鞘を干してある場所から引っ手繰って店を跡にした。


 「あのヤロー、一番いいのを選びやがったな。」

ドワーフのおっさんは店でハンマーを振るいながら呟いた。その鉈は頑丈さと刃の体力を特に気にして作らせた戦場向けの頑丈な剣だ。剣は手入れしなければすぐに駄目になる。その中でおっさんは剣を手入れしなくても使える時間を延ばすためにあの鉈を作ったのだ。数ある新人の作品から自分のを抜き取ったヴォルカンにおっさんは目を細める。耐久テストと嘯いたが実は使い手の目をテストしていたのだ。ガラクタ同然の新人の作品に自分のテスト品を混ぜて判断してもらおうという目論見にヴォルカンはパスしたとも言える。

 「こりゃ大変な仕事になりそうだぜ。」

ため息とは裏腹におっさんの表情はおもちゃを見つけた子供のように輝いていた。俺は鉈を腰にさして意気揚々と歩く。店では鉈だと詰ったがこれはあのおっさんが作った物だろう。
 鉄のよしあしはすぐにわかるし、俺はこの鉈に篭められた職人の技を見抜いていた。この鉈は表面が汚くされているが革のベルトで擦ってみれば・・・これだ。
 刃は鈍い輝きを帯びておりとても放置された物とは思えない。きっと磨いてはペイントして誤魔化してたんだろう。さて、そして俺がなぜ唐突に剣なんか買ったかと言うと。


 「・・・。」


 景色に同化しながら俺の後ろをこそこそついてきているヤツがいるからだ。足音すらさせないのは返って不自然だぜ。
さて、内心ほくそ笑みながら俺はわざとらしくえっちらおっちらと歩いていく。
 看板を見つけては振り返り、綺麗な女性がいれば笑顔で進路を変える。
そのたびに追跡者が困惑しているのがわかる。プロを投入する気になったらしいが・・・。どうにもありゃ様子見だな、ところどころ甘い。
 最悪見ていることがばれても仕方ないと言った感じで不気味な感じもするが・・・かなり若いな。そろそろ可哀想なので俺はわざと人気のない場所へ移動する。さて、誰がでてくるやら。路地裏の袋小路にフラフラと歩いていくと追いかけてくる気配は徐々に増えていく。ひーふー・・・6人。

 「さて、そろそろ隠れてないででてきな。俺が良い男だからって恥ずかしがらなくていいぜ。」

 曲がり角から影が伸びてくるが・・・嘘っぱちには引っかからないぜ。

 「ほいっと。」
 「!!?」

 腰の鉈をベルトに挟んだまま後ろに突き出すと追跡者の腹部にめり込んだ。影は陽動、一人が魔法で気配を消して回りこむ闇討ち戦法か。
くの字に折れる襲撃者を壁に叩きつけて埋め込むと顔を隠している布を剥ぎ取る。

 「お、女の子か。しかもダークエルフ。」

 褐色の肌に尖った耳、エルフの姉妹種族ともいうべき存在で異なるドラゴンに仕えたためにエルフの中でダークエルフのような種族が産まれたのだという。
エルフは揃って希少な種族だが時には表舞台で歴史に名を刻む彼女らと違いダークエルフは仕えたドラゴンが闇のドラゴンだったため歴史の闇を暗躍する暗殺者が多いという。
 彼らの闇の魔法は強力で先ほどの様に影を操ったり闇は呪いの類も操るのだそうだ。

 「さて、お仲間がピンチだが誰も助けに来ないな。」

そういいつつ俺は壁に埋まったままのダークエルフと見詰め合っている。理由は簡単、襲撃を警戒するふりをして彼女の口封じを警戒しているからだ。 捕まったら即処分して渡す情報を最小限にする。呪いの呪印も人によればそれだけで内容を読み取るものもいるかもしれない。
 彼女は暗殺者であるだけでなく情報の塊でもある。

 「こうなっちゃ出て来れないわな。」

ようし、お兄さん結界はっちゃうぞ!俺はありったけの魔力を篭めて結界を展開する単純かつ効果絶大な結界。その名もアンタッチャブル・エリアマジック。
この魔法は魔力を篭めた分だけあらゆる物を弾き飛ばす攻勢防御魔法。
 欠点は流した魔力を上回る魔力を流されるとお手上げになることだが結界を解析されたりする心配がないので安心。
 普通の結界を鍵付きのドアに例えるとこの結界はガードマンが立っているようなもの。いくら結界に詳しかろうとガードマンを倒さない限り進入はできないのだ。

 「さてと、お嬢ちゃん、楽しい楽しい尋問タイムだ。」

 俺は結界に取り残されてじたばたともがくダークエルフを前に満面の笑みを浮かべた。
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