ドラゴンになったので世界を救う為に国と跡継ぎつくります!

ファウスト

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いざ行かん、リットリオ

アウロラとテルミット

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協力の内容は彼女達の雇い主を一堂に集める口実を作ること。龍の癇癪玉を混ぜた宝玉を送りつけ、全員が集まったところでドカンと行こうという考えだ。
この際できるだけ被害は大きいほうがいいがかといって全滅する必要もない。彼らがダークエルフのギルドに疑問を抱けばいいのだから。
 暗殺という暗部を扱う以上信用は大事だし、暗殺者が依頼主を害するなど以ての外だろう。そうなればその時点でギルドは壊滅に向けて傾き始める。

 「私がギルドを潰す・・・?」

さすがに恐ろしくなったのかアウロラは青い顔をしている。だが仕方ないのだ。二つの種族が手を取り合い、共存していればそもそも暗殺者ギルドなんて作る必要は無かったのだから。

 「結果としてはそうなるな」
 「ヴォルカン様、その子を本当に信用するんですか?」

 計画を着々と進めているとテルミットは不満げに言う。今回の騒動では一番出資が多いのは事実だがどうにもそこら辺以外にも不満があるようだ。

 「ああ、信用するさ。」
 「ですが・・・。」

ふむ、ここらへんで一番いい対処法はどういったモノがいいだろうか・・・。
 下手に扱えば彼女達の間で不和が生じるのは確実だしなあ。お互いにプライドが高いだけに下手に我慢させるのはよろしくないが。

 「いいか、俺は彼女ダークエルフ達とテルミット達エルフを出来るだけ同等に扱うつもりだ。それにあたって仕事をしたのがお前達だけとなれば事情を知るお前はともかく部下が納得しないだろう?」
 「それはそうですが・・・」
 「お前の感じる不満は・・・今は俺の不徳の至りとしか言えん。不満があればこれからも遠慮せず言え、できるだけ叶えるよう善処する」

とりあえず困ったことは俺に振ってもらうしかない。大見得を切った以上彼女達に適切に指示を飛ばし、願いをかなえることが信頼を得る最良の道だ。
 特に俺の稼ぎで大きく儲かっているとはいえ彼女には金銭的な負担から情報の確保等多岐に渡る仕事を任せている。性格というかドラゴンが関わるとアレなのでスルーしがちだが彼女のバックアップあってこその今回の計画だ。

 「あ、あのっ!」

そんな中、不意にアウロラが声を上げた。

 「テルミットさん・・・私、思うんです。私達のご先祖様ってずっと同じドラゴン様をお慕いしてきたじゃないですか。」

 何をいまさらと言わんばかりのテルミットをまっすぐに見つめたままアウロラは動じることなく話を続ける。

 「私は・・・そろそろ仲直りして力を合わせるべきだと思うんですよ。ずっと皆なんで争っているのかも私にはわからなかった・・・私達は御二人のドラゴン様を慕っていただけなのにどうしてどちらかの優劣を決めなければいけなかったのかも。長い時間が掛かって、たくさん辛いことも苦しいこともありましたけど私達って皆遠い親戚みたいなものでしょう?」

そういいながら彼女はちらりと俺を見やると再び言葉を紡ぐ。

 「折角きっかけが向こうから歩いてきたのですから・・・そろそろ私達も動き出すべきじゃありませんか?」
 「私達が・・・」

テルミットはかつて自分達が争っていた相手からの思いがけない提案に戸惑っていた。確かにきっかけは今となっては馬鹿らしい内容かもしれない。
けれどもそれ故に此方から折れてたまるかと意地になっていた所があった。

 「それに・・・そのきっかけはとっても危なっかしくて、無茶もする人だからどうあっても貴女達の力が必要ですから。」
 「それって・・・」

 二人して俺を見る。そしてどちらともつかず同時に噴出し、互いに顔を見合わせて笑っていた。互いに目尻に涙まで浮かべて笑う様はまるで本当の姉妹のようにも見える。話の内容は全く持って心外だが二人が仲良さそうに笑い合い、肩を叩く姿には彼らが祖先を同じくする根源的な同一性を感じさせる。
 彼女達はこれから何年が経とうとも決して別れることなく、時に争い時に手を取り合っていくのだろう。それが俺の時代にだけでも手を取り合う時期に立ち会える事が嬉しい。

 「まあ、なにはともあれ・・・幸先のいいスタートを切れそうで何よりだ。」
 「ええ、私も今確信が持てました・・・ですがほどほどにしてくださいよ?」
 「それは保障できんな。」

 悪巧みは徹底的に、そして事前準備を必要とするのだ。
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