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集落をつくろうの章
鍛冶屋のあれこれ
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翌日、リットリオの職人ギルドではちょっとした騒ぎになっていた。
『臨時休業』の文字が掛けられた職人ギルド兼用酒場には年齢も服装も様々な男達が肩を並べていた。服装から皆がそれぞれ違う仕事着であり、多岐に渡る職種である。そんな男達に共通しているのは彼らが皆リットリオで指折りの『職人』であることだ。
「ゴンゾが店畳んじまったって本当か?!」
リットリオにある職人ギルドとは職人達が自分達の技術の流出と断絶を防ぐ為に人材確保や事業の斡旋などなど相互扶助を行う職人達の組合のような物だ。その中で新人の育成に精力的であったゴンゾの廃業はリットリオの職人達にとって大変な問題であった。
「参ったな・・・これから何処に修理に出せばいいんだ?」
「修理もそうだが装備を新調するのも一苦労だぜ・・・」
ゴンゾは育成を買って出る職人達にとってありがたい存在であるだけでなく鍛冶、鍛造の腕前も高く、まさに職人の道具を造る職人であった。
「暖簾分けしてる連中じゃあまだまだゴンゾには及ばねえばかりか素人向けに甘っちょろい仕事をしてやがるらしいじゃねえか」
大工らしき恰幅のいい男が太い腕を組んで不満を口にした。身につけた服装も道具もよく使い込まれており、服には漆喰や塗料を塗った際にできる染みが点々と残っている。
「甘っちょろいなんてもんじゃないぞ。あそこはワシの店の包丁を台無しにしやがってなあ・・・」
そう言うと調理服に身を包んだ老齢のコックが不満を隠すことなく包丁を机に置いた。すると皆はそれを手にとって刃先に指を当てたりしながら唸ったり声を漏らしたりと反応を見せる。しかしながらその表情から肯定的で無い事は明らかである。
「こりゃひでえ・・・サビが出ちまってらぁ」
「これ素人の仕事じゃねえのか?刃こぼれが残ってるぞ」
金属の中で鉄を使う包丁とは砥いだ際に水に触れる為さびやすくなる。
砥いだ瞬間から錆び始めているといっても過言ではないほど鉄製の刃物は錆び易く、その為研いだらすぐさま水気を拭き取り油紙で包むなどの保存が必要になる。なにしろ錆びだけなら早ければその日の内に錆びが浮いてくるのだ。
「ああ、解体ナイフをあそこの店に出さなくて良かったぜ」
そう言うのは精肉店の店長。牛や豚だけでなく時にはモンスターすら一頭を丸々解体する彼には並の包丁やナイフでは刃が通らない物も多く、鉈の様に頑丈で日本刀を思わせるような切れ味を持たせた解体ナイフで無いと仕事にならない。
市井で手に入る包丁を必死に砥いでどうにか仕事をしているコックの老人は修理を思いとどまった店長を羨ましそうに見ている。
「しかしこんな事ならもう少しゴンゾと連絡を取り合うべきだったな・・・」
「そうだな、まさか店がつぶれちまう程困ってたなんてなぁ」
職種こそ違えど彼らは共に己の仕事にプライドを持つプロである。そんな中で盟友とも言うべき職人が一人居なくなるのは心苦しいものがあった。
そんな中である時に放った一言が彼らに疑問を投げかけることになった。
「そういや、ゴンゾの店がつぶれたってのに暖簾分けした連中から俺達に連絡が無いってのはおかしくないか?」
その言葉に一同は顔を見合わせ、そういえばと彼の店の顛末を思い返していた。
「俺はそろそろ修理の予約を頼もうと店の若いのを使いに出したら店がもぬけの殻になってるって聞いて今回のギルドを召集したんだ」
そう言うのは大工の棟梁。
「ワシは包丁がダメになったんで、弟子の不始末をつけさせようと包丁片手に店に行ったらその途中で棟梁に会ったな」
さらにそういうコック。
「俺はその二人に言われて今日此処に来たよ、潰れたなんて信じられねえ」
そう言うのは精肉店の店長。それからも皆の内の誰もがゴンゾの店が潰れた経緯を知らず、行き先すら知らないのだ。
「なんかおかしいぜ」
「うむ、もしかすると店で何かあったのかもしれんな」
今まで確かに積極的に関わってきた訳ではないがそれでも黙っていなくなるほど疎遠では無かったし、何より顧客としての関係もあるので夜逃げにしたってギルドに一言も告げずにと言うのは可笑しな話だった。
「故郷に帰ったってんならともかくアイツがなにか悪巧みに利用されてんじゃねえかと思っちまうのは俺の思い過ごしか?」
ゴンゾは職人気質で商品には五月蝿いがそれ以外には頓着がなく、ギルドに加盟していなかったらマフィア共に食い物にされていた可能性もある。
「アイツの技術にゃドワーフの奥義もあるって聞いたぞ、けど弟子達は皆リットリオで出会った人間ばっかだからなぁ・・・」
「まさか殺されたり・・・?」
腕っ節の強さはドワーフ達共通だがもしも毒を盛られたりしたら?そう考えると皆の思考は一気にネガティブな方向に加速していく。
「こ、こうしちゃ居られねえ!もう一度店にいくぞ!」
大工の棟梁が言うが早いか皆は一斉に荷物を携えて一路ゴンゾの居た『Wホットショット』を目指すのだった。
『臨時休業』の文字が掛けられた職人ギルド兼用酒場には年齢も服装も様々な男達が肩を並べていた。服装から皆がそれぞれ違う仕事着であり、多岐に渡る職種である。そんな男達に共通しているのは彼らが皆リットリオで指折りの『職人』であることだ。
「ゴンゾが店畳んじまったって本当か?!」
リットリオにある職人ギルドとは職人達が自分達の技術の流出と断絶を防ぐ為に人材確保や事業の斡旋などなど相互扶助を行う職人達の組合のような物だ。その中で新人の育成に精力的であったゴンゾの廃業はリットリオの職人達にとって大変な問題であった。
「参ったな・・・これから何処に修理に出せばいいんだ?」
「修理もそうだが装備を新調するのも一苦労だぜ・・・」
ゴンゾは育成を買って出る職人達にとってありがたい存在であるだけでなく鍛冶、鍛造の腕前も高く、まさに職人の道具を造る職人であった。
「暖簾分けしてる連中じゃあまだまだゴンゾには及ばねえばかりか素人向けに甘っちょろい仕事をしてやがるらしいじゃねえか」
大工らしき恰幅のいい男が太い腕を組んで不満を口にした。身につけた服装も道具もよく使い込まれており、服には漆喰や塗料を塗った際にできる染みが点々と残っている。
「甘っちょろいなんてもんじゃないぞ。あそこはワシの店の包丁を台無しにしやがってなあ・・・」
そう言うと調理服に身を包んだ老齢のコックが不満を隠すことなく包丁を机に置いた。すると皆はそれを手にとって刃先に指を当てたりしながら唸ったり声を漏らしたりと反応を見せる。しかしながらその表情から肯定的で無い事は明らかである。
「こりゃひでえ・・・サビが出ちまってらぁ」
「これ素人の仕事じゃねえのか?刃こぼれが残ってるぞ」
金属の中で鉄を使う包丁とは砥いだ際に水に触れる為さびやすくなる。
砥いだ瞬間から錆び始めているといっても過言ではないほど鉄製の刃物は錆び易く、その為研いだらすぐさま水気を拭き取り油紙で包むなどの保存が必要になる。なにしろ錆びだけなら早ければその日の内に錆びが浮いてくるのだ。
「ああ、解体ナイフをあそこの店に出さなくて良かったぜ」
そう言うのは精肉店の店長。牛や豚だけでなく時にはモンスターすら一頭を丸々解体する彼には並の包丁やナイフでは刃が通らない物も多く、鉈の様に頑丈で日本刀を思わせるような切れ味を持たせた解体ナイフで無いと仕事にならない。
市井で手に入る包丁を必死に砥いでどうにか仕事をしているコックの老人は修理を思いとどまった店長を羨ましそうに見ている。
「しかしこんな事ならもう少しゴンゾと連絡を取り合うべきだったな・・・」
「そうだな、まさか店がつぶれちまう程困ってたなんてなぁ」
職種こそ違えど彼らは共に己の仕事にプライドを持つプロである。そんな中で盟友とも言うべき職人が一人居なくなるのは心苦しいものがあった。
そんな中である時に放った一言が彼らに疑問を投げかけることになった。
「そういや、ゴンゾの店がつぶれたってのに暖簾分けした連中から俺達に連絡が無いってのはおかしくないか?」
その言葉に一同は顔を見合わせ、そういえばと彼の店の顛末を思い返していた。
「俺はそろそろ修理の予約を頼もうと店の若いのを使いに出したら店がもぬけの殻になってるって聞いて今回のギルドを召集したんだ」
そう言うのは大工の棟梁。
「ワシは包丁がダメになったんで、弟子の不始末をつけさせようと包丁片手に店に行ったらその途中で棟梁に会ったな」
さらにそういうコック。
「俺はその二人に言われて今日此処に来たよ、潰れたなんて信じられねえ」
そう言うのは精肉店の店長。それからも皆の内の誰もがゴンゾの店が潰れた経緯を知らず、行き先すら知らないのだ。
「なんかおかしいぜ」
「うむ、もしかすると店で何かあったのかもしれんな」
今まで確かに積極的に関わってきた訳ではないがそれでも黙っていなくなるほど疎遠では無かったし、何より顧客としての関係もあるので夜逃げにしたってギルドに一言も告げずにと言うのは可笑しな話だった。
「故郷に帰ったってんならともかくアイツがなにか悪巧みに利用されてんじゃねえかと思っちまうのは俺の思い過ごしか?」
ゴンゾは職人気質で商品には五月蝿いがそれ以外には頓着がなく、ギルドに加盟していなかったらマフィア共に食い物にされていた可能性もある。
「アイツの技術にゃドワーフの奥義もあるって聞いたぞ、けど弟子達は皆リットリオで出会った人間ばっかだからなぁ・・・」
「まさか殺されたり・・・?」
腕っ節の強さはドワーフ達共通だがもしも毒を盛られたりしたら?そう考えると皆の思考は一気にネガティブな方向に加速していく。
「こ、こうしちゃ居られねえ!もう一度店にいくぞ!」
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