ドラゴンになったので世界を救う為に国と跡継ぎつくります!

ファウスト

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獣人と建国の章

サラリーマンってすごいね!

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テルミットの意志を聞けたので俺としては一安心だ。ドラゴンに対する彼女達の好感度は元から高いが流石に夫や家族としてどうかと言うのは別問題だしな。
 結局テルミットはその日もお休みということになり、二人でまったりすることにした。怒られるかと思ったが彼女の部下たちは常々彼女のワーカーホリック振りを心配していたらしく上司である彼女の休暇をむしろ歓迎していた。

 「まさか休んで有難がられるとはな・・・お前普段から働きすぎだぞ」
 「えっと・・・そうでしょうか?」
 「なら俺が来るまでに何日休んだ?」

そう言うとテルミットは少し考えるしぐさをすると笑顔で答えた。

 「そういえば毎日三時間程睡眠を取っていました!」
 「そういうのは休みと言うか!なんて仕事バカな奴だ・・・」
 「ええっ?少ないんですか?」

エルフは老い難く、彼女自身生来頑丈なタチなんだろうが・・・見た目は良く見れば19ほど、悪く見ても20前半の見た目を維持できているのか不思議でならない。とっくに老け込んでいても可笑しくないはずだが・・・。

 「お前な・・・これからは週に何日か・・・まぁ一日でもいい、休みを作るか睡眠時間を倍にするかしろ。でないとお前の体はもちろん部下の体がもたん」
 「ですが上に立つものがそんな様子でいいのでしょうか?」
 「なにもだらけろとは言ってない、休むのに慣れてないお前には難しいかもしれないがな・・・上司が昼夜問わず働いていては部下の心が休まらないだろ?なによりお前がいつ体調を崩しはしないかと皆心配している」

 部下達は仕事や頼みごとはともかくなぜか自身の休暇に関して首を縦に振らないテルミットに頭を悩ませているそうだ。何しろ部下は暇を持て余しているくらいだからな。
アランやゴンゾなどの部下を上手く使ったり、大部分を委任して育成してきた二人と違いテルミットは一から十まで報告を聞き指示をこなすタイプなのでどうしても彼女自身の負担が大きくなるし仕事が増えればその分だけ遅延もでる。それにも関わらず部下が暇をしてられるのは彼女が優秀であり、司令塔としてやや資質に欠ける面でもある。なにより部下が暇と言う事は彼女自身が部下を使いこなせていない証左でもある。

 「これからは簡単な仕事は部下に投げろ、重要な案件を先に片付けて自分がいつでも緊急に備えられるように余裕を持たせるんだ」
 「ですが簡単かどうかは誰が判断するんですか?」
 「バカ!それを判断できるだけの経験のある部下がいるだろうが!それともお前はそんな簡単な組織運営もしてこなかったのか?」

あークソ!なんで前世じゃ道場経営であっぷあっぷしてた俺が偉そうに組織運営の手ほどきなんぞせねばならんのだ・・・!しかしなぁ!ほんともう!可愛い妻のためだモンなぁ!やるっきゃないだろうよ!

とりあえずズボンだけを履いてボタン全開の上着を羽織ると俺はキョトンとしているテルミットを残して闘技場内の事務屋を集める事にした。
 闘技場の事務室はテルミットの執務室から少しだけ離れたところにあり、そこに10人以上の事務官が詰めているはずだが・・・。

 「失礼する」

ドアを開けて中に入ると机には数人の事務屋が羊皮紙やこの世界では珍しい紙の書類に目を通している。
 不躾ではあるが勝手に書類の類を手に取ってみる。

 「経費の報告書か・・・」

 面倒な話だが俺も領地経営などの知識を叩き込まれているのでこういった類のモノが必要不可欠なのはわかるが・・・、非常に細かいところまで書かれているな。俺は近くに居た事務屋に書類の内容などを尋ねる。

 「この経費の決済はだれが担当している?」
 「オーナーです」
 「そうか、じゃあこの賭けのオッズに関する売り上げと配当金の払い戻しの計算は?」
 「オーナーです」
 「闘士に関する保障金と給与に関する取り決めは誰が?」
 「オーナーです」

 頭が痛くなりそうだ。まだたった三つだけの質問とはいえ彼女の領分は俺が思っているよりもずっと多そうだ。

 「お前さんたちはなにをやってるんだ?」
 「全てのデータを書き留めて整理して、そのデータをオーナーに渡しております」
 「それだけか?ここに居るのが全員?」
 「えっと、そうです」
 「お前達は算盤を弾くだけが仕事じゃないだろ?オーナーの補佐とか、君らの給料の管理をする人とか色々いるはずだろう」

そう言うと事務屋の男性は言葉に詰まったようでバツが悪そうにしている。周囲の人間もやってませんと言わんばかりに目をそらすばかりだ。

 「テルミットが居なくなったり、病気になったらお前らどうするつもりだ?そういうののマニュアルとかあるんだろうな?」

そう言うと皆、黙り込んでしまい誰一人として俺の問いかけに答える者は居なかった。

 「・・・まさかなにも無いのか?」
 「え、ええ・・・」

ドアを蹴り破って帰りたくなった。前世で汗を流して働いていたリーマン達が如何に優秀だったかがよくわかろうというものだ。そして人類の研鑽の結果がいかに素晴らしい物かも。
とりあえずマニュアル作りからはじめよう。収益の管理や運営、集落の収入を安泰にするため、そしてなによりテルミットが落ち着いて休みを取れるようにしなければならない。
 不得手な内容だが・・・やるしかないか
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