ドラゴンになったので世界を救う為に国と跡継ぎつくります!

ファウスト

文字の大きさ
153 / 282
ドラゴンと独立宣言の章

大砲とドワーフたち その3

しおりを挟む
試作品は程なく完成した。溶接の技術があったのは驚いたが考えて見れば俺も似たようなことをしていたっけか。彼らも鉄の扱いは心得た物で大砲製造のノウハウというより以前に円筒を作るノウハウがあった様だ。そういえば温泉のパイプも作ってたっけか、あの時のノウハウだな。溶接技術もすばらしい。
聞けば先代ブンロクがもたらしたものだとか・・・あの爺様はホント何者なんだ?

「これが俺達の兵器の第一号だ。此処からが俺達の始まりだ」

馬車の車輪を利用してくみ上げた第一号は少数の鋳造された砲弾を持って試射の運びとなる。

「ここら辺がいいかな・・・こっちには何もないな?」
「はい、仰せのままに10キロ圏内を探索しましたが森だけです、獣がすんでいた形跡もありません」
「よろしい」

俺はその報告を受けて大きく息を吸い込むと前方に向かって大きくブレスをぶちかました。試射には邪魔にしかならないからな。

「すげえ・・・」
「将来はお前達がコレに匹敵するものを作るんだ」
「俺達が・・・」

発展させていけばやがてこの世界で俺達の敵になろうという連中は居なくなるだろう。その時こそ俺達の国は安寧と繁栄を約束される。

「よし話は終わりだ、早速試射に入る!装填開始!」

ゴンゾ達はカートリッジに癇癪玉の粉末と砲弾を装填し、ソレを本体に装填する。発射には熱した棒や火の魔法が込められた金属の鍼が使用される。

「装填完了だ!」
「よし、では撃て!」

俺の合図で炸薬に火が入ると轟音を立てて砲弾は砲口から発射される。そして見る見るうちに小さくなっていき、倒木の一部に直撃した。

「よし、カートリッジを引き出して冷やしておこう、それから弾着観測だ。威力の程を見ておこう」

口径はざっと見て9センチほど、それほど大きな威力にはならないかも知れないが大砲は音と衝撃だけで実際の威力以上の威力を発揮する。

「ここらへんか・・・かなり飛ぶな、弓矢や投石器なんて目じゃねえ」

ゴンゾが着弾したであろう地点へと向かう途中でそう溢した。それもそのはずだ試作品ながら飛距離は5キロ近くに上っている。

「おーい!ここだ!」

技術となると目の色が変わるのかドワーフ達は低い頭身ながら元気に動き回って着弾地点を見つけ出した。着弾した倒木は固定されていないにも関わらず真ん中から粉砕されており二つに折れてはじけ飛んでいた。

「・・・」

皆は大砲がもたらした一撃の破壊力に絶句していた。古今無類の強さを誇っていた要塞も騎兵をも跳ね返す密集陣形も、そして剣も槍も通じない堅牢な皮膚を持つ魔物すらも破砕できるだろう。

「テストは成功だ、これから俺達は第二段階に入るぞ」
「第二段階?」
「この砲弾は固い物を目標にしているがそれゆえに直撃しなければ意味がない。なので次に爆発する砲弾・・・榴弾を作成する。砲も随時改良していくからそのつもりで居てくれ」

フランキ砲は黎明期の大砲では画期的だったがそれでもガスの漏洩などで威力が上がれば上がるほど危険性が付き纏う。そして砲弾は徹甲弾だけでは駄目だ。兵士や動物といった軟目標に効果的な榴弾を開発しなければならない。

「爆薬の開発が先決か、竜の癇癪玉の応用でなんとかならないか・・・」

爆発する力は大きく、粉末にすれば砲弾などの炸薬に最適な燃焼速度になるのは一発だけとはいえ実験で成功した。砲の強度も9センチ砲としては初射に関しては飛距離・弾道共に良好だ。ついでに薬莢も開発してしまうか。そうすればするほど必要な知識が減って撃つ事に専念できる。次に閉鎖機の開発をゴンゾらドワーフ達に任せ、ブンロクも合流させて開発を継続する。

「次は爆弾か、これを開発しちまえば榴弾、手榴弾、迫撃砲の開発も整ってくるよな」

榴弾に俺が今使っている竜の癇癪玉を如何様にして充填するかが問題だ。粒が粗いほど爆弾向きの反応をしてくれるのだが・・・残念ながら荒いと反応しやすく取り扱いが難しい。射撃の衝撃で爆発しかねないからだ。手荒く扱えない兵器など何の価値があるというのか。

「爆薬か・・・そういえば爆発は空気と火の反応とか・・・最悪火薬と同じように砲弾を中から破裂させれば同じ効果が得られるか」

そう思うと俺の頭の中に魔法の知識が浮かび上がってくる。むかしマリエルが風と火の魔法の接点について教えてくれたっけか。

『坊ちゃま、火の魔法と風は相性がよろしゅうございます。燃え盛る火に風を送り込むとさらに激しく燃え広がるのと同様です』

そういう話を思い出しながら俺は板に風と火の魔法を刻んで張り合わせると魔力を伝導させる。すると・・・。

『バァンッ!』
「ぐおっ??!」

思いがけない威力で反応した。手が少ししびれたが威力以外は思い通りの反応だ。密閉した空間で火と風の魔法を発動すると火と風が同時に起こり、互いに勢いを高めながら隙間を求めて殺到する。

「クックック・・・爆薬よりも簡単じゃねえの」

恐らく誰かが試して居るかもしれないが良くてブービートラップレベルだろう。しかし俺にはこれが容易く、そして簡単に製造できる事に気付いた。風と火の魔法陣を刻んだ板か紙かに魔力を流せばたちどころに砲弾は爆発するのだ。安全性に難があるが・・・信管に気を配ればタダの紙か板だし、魔力を同時に流れなければ可燃性のものなら暴発事故にはならない。かといって細工さえ間違えなければ魔物などに使われるような屑魔石などでも信管に加工できる。結構溜まってるんだなぁ屑魔石がよ・・・!

「さっそく実験だ!」

俺はゴンゾ達から中身をくりぬいた砲弾を試作してもらうと色々と試すことにした。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...