ドラゴンになったので世界を救う為に国と跡継ぎつくります!

ファウスト

文字の大きさ
186 / 282
ドラゴンと独立宣言の章

休日

しおりを挟む
一抹の不安を重ねつつも俺は故郷での一時を楽しんだ。やはり何時帰ってきても落ち着く場所だ。

「さて、居るだけじゃ退屈になってきたな・・・」

そう思いつつ屋敷を徘徊していると物置に長い筒が何本もあるのを見つけた。

「なんだこれ?」

長さが1・5メートルくらいの竹らしき者の筒である。吹き矢の筒かなにかだろうか。こういうのを見ていると昔を思い出すモノだ。

「どうせ退屈だったしこれで遊ぶか」

弾が無いようだったのでそこから自作することにする。尖らせると危ないから丸に空気受けの羽をつけて・・・よし、できた。俺はさっそく此れを試すべく三人がゴロゴロしているであろう部屋へと向かう事にした。

「さて、記念すべき犠牲者第一号は・・・おっ、ちょうどいいところに」

ヴァルターがのこのこ歩いているのが見える。マルレーンも一緒だ。俺はいちゃいちゃしている二人にしっかりと狙いを定め、第一射をヴァルターのケツに向けて発射した。

「プッ!」

「イッ・・・!!!!」

尻を押さえて飛び上がった。噴出したくなるのを堪えながら次にキョトンとしているマルレーンの尻に狙いを定める。

「くくく・・・プッ!」

「キャヒッ!!!・・・わ、若旦那様!」

腹を抱えて笑っていると犯人が誰かはわかったのか二人が此方に走ってくる。

「酷いよ兄さん!」
「はっはっは!ボサッとしてるからだ、仲良しも程ほどにな」
「勘弁しませんよっ!」
「わはは、そう簡単に捕まる俺では無いわ!」
「きゃっ!」
「うわわ・・・いってぇ!」

マルレーンの両腕を掴むと振り回してからヴァルターに投げつける。ヴァルターが勢いに負けてひっくり返ったところでダメ押しにヴァルターの頭にオマケの射撃を加えてやった。

「なんてこった、想像以上に楽しい」

怒る二人を尻目に笑いながら走り去ると童心に帰ったような気持ちになる。つまらない事に全力を注げる事に無上の喜びを感じていた日々を思い出す。

「さて、次だ次・・・」

次のターゲットを探して屋敷をうろついていると今度は親父に出くわした。

「何しとるんだ?」
「問答無用、ぷっ!」
「いたっ・・・、けどなにそれ面白そう」
「物置にあった」

短くそう言うと親父は当たった弾を拾うと笑顔で走り去っていった。さて、本番は此処からだぜ。

「さっきの様には行かんぞ!くらえっ!」
「ぐおっ!なんのこれしき!」

ものの数分としないうちに親父が吹き矢を片手に戻ってきた。そして突然の射撃である。西部劇のガンマンさながらの射撃の応酬がはじまる。

「ぷっ!」
「ぷっぷっぷ!」
「うわっ!汚いぞ!」
「勝負に汚いもクソもあるか!」

親父が俺の猛攻に耐えかねて部屋を飛び出す。俺はそれを追いかけながら吹き矢の弾を発射し続ける。

「わはは!降伏するのだー!」
「なにをー、騎士に敗北の二文字はないのだー!」

時折足を止めて打ち合いつつ互いに屋敷の中を駆け回る。いい年のオッサンだがこれでも楽しいのだから仕方ないのだ。楽しいのが悪い。

「ぷっ!」
「おっと・・・あ」

しかし、楽しい時間はそう長くは続きはしない。流れ弾がお袋の額に直撃した瞬間俺達の楽しい遊びの時間は終わりを告げた。

「降伏はなくても・・・常識は持ってくださいね?」
「えっと、あのその・・・なんといいますかこれは重要なことで」
「そうそう・・・俺達にもその悪気があったわけでなくて。そうだ、これ狩猟にも使えるからその練習にね・・・?」

親父と二人であれこれと言い訳を重ねる。通じないと解っていてもしてしまうのは何故だろうか。

「へぇ、狩猟用・・・」
「う、うんだからね・・・その、許してくれたらうれしいかなーって」
「許す?何をです?」
「えっ!?いやそのぉー・・・怒ってないの?」

解っていても聞かずには居られないのはなんでだろう。親父の足が生まれ立ての小鹿のようになっているのは気のせいでは無いし、恐らく俺の顔は真っ青になっているのだろう。この家で一番怒らせては行けない人の筆頭だからだ。

「ええ、怒ってませんよ」
「そ、そう?なんか青筋立ってるけど・・・あ、小皺」
「うひぃっ!」

うっすらとしか見えなかった青筋がくっきりと・・・!お、親父ぃ!不必要に刺激するなーっ!どうなってもしらんぞーっ!

「そ、そうだ、今日は狩りに行くんじゃなかったのかな?親父、なんなら手伝おうか?」

親父が火に油を注ぎ始めたので俺は離脱を考えて言葉を捻りだす。

「そそうだな、狩りは重要じゃからして・・・」
「そうそう、だから今から準備・・・」

二人で勝手に話を進めて逃げだそうとした瞬間俺達二人の肩をがっしりとお袋が掴んだ。

「なにを言っているのかしら?その手に持ってるのは狩猟の為の道具なんでしょ?ならさっさと行きなさい」
「「えっ」」
「武器はそれがあれば大丈夫でしょう?さぁ、さっさと行きなさい。仕留めて来れなかったら家に入れてあげないから」
「「そ、そんなぁ・・・」」
「なんか文句あるの?」



「あれ、御領主様と若旦那様じゃありませんか。なんですかそれ・・・」
「気にするな・・・」
「そうですか・・・?」

俺達は弓や剣を携える猟師に混じって吹き矢片手に野山へと繰り出すことになった。そもそも吹き矢に塗る毒も矢もなかったので結果もでるわけもなく・・・。

「開けてくれー・・・」
「お腹減ったよー・・・」

寒空の下親父と共に屋敷の外で野宿する羽目になった。

「「もう吹き矢はいいや・・・」」

星空の下俺と親父の呟きが闇に消えていった・・・。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...