ドラゴンになったので世界を救う為に国と跡継ぎつくります!

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ドラゴンと独立宣言の章

温泉でのごたごた

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温泉で身も心もほかほかになった俺達は宿に戻って畳の上にごろりと横になった。い草かどうかは解らないが似たような匂いに包まれて俺は郷愁の念を少しだけ呼び起こされる。

「落ち着く匂いだ・・・木材の床も悪くないが畳はまた格別だ」

そう呟きながらまったりしていたが・・・。

『兵隊が来た!皆は武器を取って集まれ!』

俄かにあわただしくなりワーダイン族の女性だけでなく男性も弓などを手に慌しく出て行った。

「兵隊だと?」
「穏やかではありませんね」

リットリオがやってきたのなら面倒な事になる。どうにかしてお帰り願うしかあるまい。

「こうなると人間の姿で行くと面倒だ・・・こうするしかあるまい、お前達は少し離れた所で見ていてくれ。知り合いがいると不味い』

俺はそう言うと宿を飛び出して翼をはためかせる。リットリオが此処でザンナルと揉めるとそのバックに着いたサマルとももめる事になる。






「誰だお前達は!リットリオの騎士団か!」

温泉街の入り口ではワーダイン族と鎧姿の騎士達とが対峙していた。騎士団は総勢で五百名を超える集団であり、守勢であるワーダイン族に威圧を掛けていた。

「我はリットリオ公国、グルンドル伯爵である。永らく猶予を与えてきたがザンナルが敗北した今この地を治める正当性は我等にある」
「だったらなんだ!我等に出て行けとでも言う気か!ザンナルも何度も追い返した!争ってばかりのお前達にこの地を渡すワケにはいかない!」

斧槍を構えて猛るワーダイン族にリットリオの騎士達も槍を構える。

「国相手に事を構える気か?ワーダイン族がそこまで愚かとは思えないが?」

あくまで五百人というのは先遣隊であるという事を伝えると伯爵は羊皮紙を取り出して要求を読み上げる。

「我等リットリオ公国の地とし、この地で採取される鉄鉱石、治癒の効果のある温泉の権利等の一切を国の管理とする!部外者には早々に国土から立ち去り我が国民がこの地で勤労と納税の義務に着く事を妨げるあらゆる行動をかたく禁ずる事を通達する!」
「ふざけるな!それでは私達から追い出すのと同義ではないか!」
「リットリオ公国の決定に逆らうならば三千の兵を持ってこれを鎮圧する!準備は既に済んでいるぞ」
「さ、三千だと・・・」

同様が彼女達に広がる。この集落では三百のワーダイン族が暮らしていた。彼女らがいかに屈強な戦士といえど十倍の戦力を前にこの温泉宿を守りきる事は難しかった。たとえ今回を乗り切っても相手はこれからはザンナルを気にせず兵を動かせるのだ。三千で留まるはずは無い。また彼女達の住む家や施設を破壊されてしまえばどの道彼女達はこの地で暮らしていけなくなるのだ。

「くっ・・・」

相手はワーダイン族が生活できなくするだけで十分なのだ。対する彼女達は少数で施設と住居を守りきらねばならない。勝負は火をみるより明らかである。互いに戦いになる前に介入するか。

『そこまでだ、人間よ』

俺は両者の間に割ってはいるように降り立つ。

「ど、ドラゴン!」

今度は騎士団の方に動揺が走る。ドラゴンが此処にいるなど思いも寄らなかったのだろう。ドラゴンが相手となれば三千では物足りなくなるからだ。例え準備万端で待っていたとしても人間相手とドラゴン相手では規模も装備も日数も全てが違う。騎士団だけではナイフで戦艦に挑むようなものだ。

『リットリオの騎士か』
「はい!我・・・いや私はアルトハイム・グルンドル伯爵と申します!ご尊顔を拝し誠に恐悦至極」

そう言うと彼らは一斉に膝を着いて頭を垂れた。確認するまでもないがワーダイン族は全員土下座状態である。

『面を上げよ、双方まずは武器を収めるところからだな』
「「ははーっ」」

俺の言葉を受けて皆は武器を収め、互いに話し合いの態勢に移る。こういう時場を制する事のできる立場があると楽で良い。

『そなた等が主命を受けているのは容易にわかるが・・・この地を我が物顔で歩くのを許した覚えは無い。一体誰がこんな事を許可した?』
「そ、それはその・・・」
『答えよ、以前にもこの様な事があったな?隠し立てすると為にならんぞ』

口の端から火を漏らしながらずいと顔を近づけると滝のような汗を掻きながらグルンドル伯爵はもごもごしていたが・・・。

「すいませんでしたーっ!私の独断ですーっ!」

俺に睨まれるのに耐えかねたのか遂に自供した。それに共回りの騎士達もやれやれと息を吐いている。

『なぜこのような事を企んだ?ザンナルが衰退したとてサマルや扶桑が此処に関する取り決めをするとは思わなかったのか?』
「重々承知です・・・ですが実は父上が怪我をしまして・・・」
『怪我?そのためにありもしない命令書を偽造したのか・・・』

どうにも事情がありそうだが誠に呆れた話だ。そんな事の為にワーダイン族と事を構えようとしたばかりか最悪国同士の揉め事になりかねない事をしたのだから。
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