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ドラゴンと独立宣言の章
お店で内緒話
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店の扉を潜ると中は酒場と言うよりバーのようになっており派手な看板の割には大人しめの内装で落ち着いてお酒を楽しむような上品な雰囲気すら漂っている。
「いらっしゃい・・・あら、王子様がお友達を連れてくるなんて珍しいわね」
カウンターで気だるそうな感じを隠さずに応対してくれたのは妙齢の美女。バーのママといった感じの彼女は薄いグリーンの髪で片目を隠し、そして感情を隠すように気だるげな眼差しに微笑みを浮かべている。
「殿下、もしや素性を話したのですか?」
「いや、話したつもりはなかったんだが・・・」
「お貴族様、隠したって私にはお見通しですよ。素性を誤魔化して生きてる人間なんてここには沢山くるんだから」
煙管を取り出して流れるような動作で火をつける彼女はどうやら特殊な客層のこの店で長く働いているようだ。そんな彼女が相手では若造がいくら氏素性を偽った所でお見通しなんだろう。
「しかしどうしてわかった?」
「金銭感覚が可笑しくって、明らかに市井の立ち振る舞いに疎くて、そんでもって表の看板見て期待して来ちゃう子を世間知らずのお坊ちゃん以外の何にみろというの?」
「それはそうか」
おのぼりさんが都会できょろきょろしてるようなもんだろうか。彼女のような特殊な職場で働いている者にとってはそれだけでわかるのだろう。彼女の口ぶりだと余程の箱入りか無知でもなければ表の看板に惑わされずちゃんとした目的で来れるとのこと。
「そういうサービスもない事はないんだけど、ちょっと踊ったり歌を歌うくらいよ。それ以上は本当にお店の子を口説ける器量があるかどうかね」
「なるほどな、特に・・・君なんかは敷居が高そうだな?」
「ふふ、貴方素敵ね。でもごめんなさい。火遊びするほどもう若くないから」
「そうか、まあそれには同感だ。俺もいい歳だからな」
「そうです、ヴォルは私のです!」
そんなやりとりをしているとアウロラが俺の右腕に抱きついて彼女を威嚇し始める。そんなアウロラの姿にカウンター越しに微笑む彼女は笑みを深める。
「あらかわいい・・・幸せを掴んでいるのね貴女」
「そうです、私が掴んでるんだから誰にもあげません!」
そう言うと彼女の表情が若い子を見守る母親的な表情になっている。必死に張り合っているつもりなのだろうが大人の女性という立場で言うならアウロラはボロ負け状態だ・・・。そろそろ王子様達との会話に戻らないと固まっちまってるぞ。
「奥さんが怖いから私は仕事に戻るわぁ・・・お幸せにねぇ」
良い物を見たという感じの女性。対するアウロラはむくれたままだったが・・・完全に遊ばれてるよなあれ。
「テラさんにあそこまで気に入られるなんてさすがですね」
「そうなのか?いい感じの・・・ゴホン、接客の一環じゃないのか」
「普通ならあれほど会話してもらえませんよ、私も結構通って顔なじみになってからですし」
驚いているのは解るが遊び呆けているのが教育係に漏れているのは気にならないのだろうか。さっきからバーダック公爵の顔が金剛力士像みたいになってるけど。
「さて、とりあえずこれからの事を話すんだろ?」
「そうでした、VIPルームへ行きましょう」
アージェ王子がそう言うとその声を何処から聞きつけたのか先ほどのテラさんという女性とは別の女性がやって来た。ミニスカートのメイド服に身を包んだ猫系の獣人のようだ。茶色のショートカットにエメラルドグリーンの瞳を輝かせながら軽い足取りでアージェに抱きついた。
「お帰りなさいませご主人様!」
「わっぷ!ヴィータ!」
「にゃにゃにゃー」
猫らしい積極的なアプローチで体を摺り合わせて好意を表現している。扶桑国でも猫系の獣人は珍しくないがあの手の好意表現をする女性は親愛レベルの好意を寄せていることが多かった。さらに猫系の獣人は情熱的で気分屋ながら恋は一途な者が多いとされ、恨みも愛情も決して忘れない情け深い一面を持っている。
「ヴィータ、お客さんが居るから・・・」
「にゃ?そうだったにゃ・・・VIPルームにご案内にゃ」
尻尾を揺らしながら彼女はアージェ王子の手を引いて歩き出した。おうおう、見せ付けてくれるね。
「殿下・・・」
「アレくらいの歳なら恋愛の一つや二つするもんさ。無理に引き離すと反発するだけだ、店に通うくらいは目を瞑ってやるんだな」
「いえ、それは構わんのですが・・・」
「だったらなんだ?」
「あんな破廉恥な服装をお好きとはけしからんですぞ・・・嘆かわしい」
気にする所そこかよ・・・。それにミニスカートの何処が悪いというのか!嘆かわしいというのは此方のセリフだぞ!そう思いつつ俺はアウロラの格好に目をやる。褐色の肌を隠す旅姿のマントと制服姿だがスカートは短く、膝上何センチか・・・ちらりと覗く太ももが眩しい。
「・・・」
「なんですか?」
うん。これは議論するまでもない。ミニスカートは揺ぎ無き正義である。スリットを入れてもいいかもしれないがそれだとアウロラが注目を集めすぎる。悩ましい所だ。
「いらっしゃい・・・あら、王子様がお友達を連れてくるなんて珍しいわね」
カウンターで気だるそうな感じを隠さずに応対してくれたのは妙齢の美女。バーのママといった感じの彼女は薄いグリーンの髪で片目を隠し、そして感情を隠すように気だるげな眼差しに微笑みを浮かべている。
「殿下、もしや素性を話したのですか?」
「いや、話したつもりはなかったんだが・・・」
「お貴族様、隠したって私にはお見通しですよ。素性を誤魔化して生きてる人間なんてここには沢山くるんだから」
煙管を取り出して流れるような動作で火をつける彼女はどうやら特殊な客層のこの店で長く働いているようだ。そんな彼女が相手では若造がいくら氏素性を偽った所でお見通しなんだろう。
「しかしどうしてわかった?」
「金銭感覚が可笑しくって、明らかに市井の立ち振る舞いに疎くて、そんでもって表の看板見て期待して来ちゃう子を世間知らずのお坊ちゃん以外の何にみろというの?」
「それはそうか」
おのぼりさんが都会できょろきょろしてるようなもんだろうか。彼女のような特殊な職場で働いている者にとってはそれだけでわかるのだろう。彼女の口ぶりだと余程の箱入りか無知でもなければ表の看板に惑わされずちゃんとした目的で来れるとのこと。
「そういうサービスもない事はないんだけど、ちょっと踊ったり歌を歌うくらいよ。それ以上は本当にお店の子を口説ける器量があるかどうかね」
「なるほどな、特に・・・君なんかは敷居が高そうだな?」
「ふふ、貴方素敵ね。でもごめんなさい。火遊びするほどもう若くないから」
「そうか、まあそれには同感だ。俺もいい歳だからな」
「そうです、ヴォルは私のです!」
そんなやりとりをしているとアウロラが俺の右腕に抱きついて彼女を威嚇し始める。そんなアウロラの姿にカウンター越しに微笑む彼女は笑みを深める。
「あらかわいい・・・幸せを掴んでいるのね貴女」
「そうです、私が掴んでるんだから誰にもあげません!」
そう言うと彼女の表情が若い子を見守る母親的な表情になっている。必死に張り合っているつもりなのだろうが大人の女性という立場で言うならアウロラはボロ負け状態だ・・・。そろそろ王子様達との会話に戻らないと固まっちまってるぞ。
「奥さんが怖いから私は仕事に戻るわぁ・・・お幸せにねぇ」
良い物を見たという感じの女性。対するアウロラはむくれたままだったが・・・完全に遊ばれてるよなあれ。
「テラさんにあそこまで気に入られるなんてさすがですね」
「そうなのか?いい感じの・・・ゴホン、接客の一環じゃないのか」
「普通ならあれほど会話してもらえませんよ、私も結構通って顔なじみになってからですし」
驚いているのは解るが遊び呆けているのが教育係に漏れているのは気にならないのだろうか。さっきからバーダック公爵の顔が金剛力士像みたいになってるけど。
「さて、とりあえずこれからの事を話すんだろ?」
「そうでした、VIPルームへ行きましょう」
アージェ王子がそう言うとその声を何処から聞きつけたのか先ほどのテラさんという女性とは別の女性がやって来た。ミニスカートのメイド服に身を包んだ猫系の獣人のようだ。茶色のショートカットにエメラルドグリーンの瞳を輝かせながら軽い足取りでアージェに抱きついた。
「お帰りなさいませご主人様!」
「わっぷ!ヴィータ!」
「にゃにゃにゃー」
猫らしい積極的なアプローチで体を摺り合わせて好意を表現している。扶桑国でも猫系の獣人は珍しくないがあの手の好意表現をする女性は親愛レベルの好意を寄せていることが多かった。さらに猫系の獣人は情熱的で気分屋ながら恋は一途な者が多いとされ、恨みも愛情も決して忘れない情け深い一面を持っている。
「ヴィータ、お客さんが居るから・・・」
「にゃ?そうだったにゃ・・・VIPルームにご案内にゃ」
尻尾を揺らしながら彼女はアージェ王子の手を引いて歩き出した。おうおう、見せ付けてくれるね。
「殿下・・・」
「アレくらいの歳なら恋愛の一つや二つするもんさ。無理に引き離すと反発するだけだ、店に通うくらいは目を瞑ってやるんだな」
「いえ、それは構わんのですが・・・」
「だったらなんだ?」
「あんな破廉恥な服装をお好きとはけしからんですぞ・・・嘆かわしい」
気にする所そこかよ・・・。それにミニスカートの何処が悪いというのか!嘆かわしいというのは此方のセリフだぞ!そう思いつつ俺はアウロラの格好に目をやる。褐色の肌を隠す旅姿のマントと制服姿だがスカートは短く、膝上何センチか・・・ちらりと覗く太ももが眩しい。
「・・・」
「なんですか?」
うん。これは議論するまでもない。ミニスカートは揺ぎ無き正義である。スリットを入れてもいいかもしれないがそれだとアウロラが注目を集めすぎる。悩ましい所だ。
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