ドラゴンになったので世界を救う為に国と跡継ぎつくります!

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ドラゴンと独立宣言の章

能天気な皇太子

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そう思いながらバレストラ公爵と話し合っている頃、王宮ではバレストラ公爵とは違う問題が起きていた。

「皇太子殿下!」

獅子の間という部屋が彼の眼前に広がる。其処は皇太子に割り当てられる王宮の中で二番目に格式の高い豪華な部屋だ。身分が低い者はドアをノックすることすら憚られる高貴な者が居る間に彼は一目散に走り、バーダック公爵は慌てて皇太子のいる筈の獅子の間へと駆け込む。通り抜け様に何人か衛兵を跳ね飛ばしたがそんな事は些細な事だ。後でこっぴどく怒られるかもしれないがそれが注意の類で済む程度の立場ではある。

「グルンドル公爵か、良き時に来てくれたな」

そんな彼の心配する声にこたえたのは妙齢の美女であった。国王と同じ目の覚めるような金髪と母御と同じ眼差しを浮かべ微笑みを湛える姿は気品と優雅さを兼ね備えた貴族の令嬢そのものである。

「皇太子殿下・・・ですね?」
「いかにも、私がリットリオ公国が皇太子、フィオレンティーノ・ジェラルド・パブロ・リットリオである。爺が慌てて私の元に来たのは幼少の頃、王宮を抜け出して以来だな」

悪戯っぽく笑う仕草にバーダックは漸く目の前の女性が皇太子だと理解した。第二王子もそうだったが国王の下で生活するには何かと制約が多く自由が限られていたが生来我の強い母御の影響を受けたのかやんちゃで度々決まり事を破っては重臣達に冷や汗を欠かせており、その手の武勇伝は沢山持っている。

「あの頃は爺もまだ近衛騎士であったか」
「路地裏に入り込む前でよかったですよ・・・あの時は」
「あれしきで私をどうにかできようものか」

からからと皇太子は笑うがその当時はまだマフィアや反国王の手先が跋扈していただけでなく、王妃派と側室派の権力闘争が激化していた時期でもあった。ホンの子供であったとはいえそんな事を気にせず街に繰り出そうとしていた彼を捕まえて連れ戻すのには多大な労力を払ったものだ。
しかし幼い皇太子はそれに飽き足らず何度か近衛の目を盗んではあちこちを歩き回っていたようだ。
そんな彼が大人しくなったのは奇しくも弟であるアージェ王子が生まれたときだった。幼い弟に自身と同じ想いをさせまいと決めたのか、その日から皇太子は今までのやんちゃ振りがなりを潜め勉学に励み、剣を振って王族としての務めを果たす為研鑽を積み始めたのだ。

「突然の豹変ぶりにあの時は陛下も大層悩んでおいででしたな」
「ふ、兄となったからには子のままではおれぬと思ったまでよ」

品行方正な国王と違い王子達は奔放な性格をしており、突然の豹変が度々あった。大抵は重大な決意を人知れずしている場合があったがそれも自身の胸に留めているので当然ながら他人には何故?と頭を抱えるような性格をしている。

「そういえばアージェ王子が素行不良になったのも突然でありましたな」

幼い頃奔放だった皇太子と違いアージェは幼い頃は甘えん坊で聞き分けの良い優等生だったがある時突然素行が悪くなり、皇太子がかつて行ったようにふらふらと出かけたり、勉学をサボりだしたのだ。
意味がわかった今となってはバーダックも思い出して苦笑する程度でよくなったが当時は突然の豹変に頭を抱えたものだった。

「はっはっは、教えずともやつもやつなりに考えているという事だな。ふふふ、それにしても自身の株を下げてまで私を立ててくれるとは可愛いやつだ」

歳が離れていて可愛いのか皇太子はアージェをいつも気にかけている。アージェは基本的に兄である皇太子に尊敬の念を隠さず、それでいて気さくに話しかけるので彼にとってアージェとのコミュニケーションは王族としての重責を忘れることの出来る貴重な存在でもあった。

「アージェが次に此処に来るのはいつだろうな。楽しみだぞ」

皇太子はこんな状態にも関わらず普段どうりに振る舞い、アージェと会える日を楽しみにしている。
焦ったからといってどうにかなるものでもないが些か危機感にかけるのではとバーダックは頭を抱えるが皇太子の神経の図太さは不良を演じていたアージェと違い筋金入りなのでこちらの矯正は不可能なのである。

「・・・はぁ」

人知れずため息が漏れる。大事件のはずが騒いでいる自分がバカバカしくなるほど皇太子は変わっていなかった。むしろもう女性のままでも彼ならなんとかしてしまうのでは?という考えすら浮かぶほど平常運転であった。

「しかし女の体というのは面白いぞ爺、体が男より柔かいのだ・・・ほら」
「殿下!はしたない!」

笑顔でそう言った皇太子は足を大きく開き、片足立ちをして足をピンと伸ばした。新体操のようなポーズで足を抱え、蹴り上げたような状態になる。騎乗服を身につけているとは言えとても令嬢がする体勢ではなかった。怒鳴るバーダックを見ても笑顔を崩さず自慢げに体を捻ったり伸ばしたりして柔かいからだを見せ付けてくる。

「はっはっは、呪いが解けずとも良いな。このまま私は女王となるのもいいかもしれん!」

バーダックはただ頭を抱えてため息を吐くことしかできなかった。

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