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ドラゴンと独立宣言の章
リットリオでのお話を終えて
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迎え酒でどうにかしようとしているのか、それとも気恥ずかしさを隠したかったのか。一口飲んだ後は大事そうに小瓶を仕舞い込んで俺に向かい合う。
「そうかい、こちらとしては鉱山の件がカタがつけば文句はない」
「そっちの件も色々と世話を焼いてくれたようだな。ま、そちらと喧嘩する意図は俺もない。いい条件をそちらからつけてくれたんだ、せいぜい儲けさせてもらうよ」
鉄の買い取りが行われる。そしてリットリオでの鉄資源のだぶつきが無くなり次第鉱山での自主生産が始まるわけだ。それまでは俺が彼らの大口の取引相手という事だな。
「さて、アンタが話の分かる人でよかった。それなら俺から言う事はなにもないよ、なるたけ平和に儲けてくれ」
「もちろんだとも、俺は晩酌は落ち着いてしたいからな」
「ふーん、そうか・・・そうだ、旨い酒を知っている。今度それで酒盛りでもしようか」
「それは良い提案だ。喜んで受けさせていただこう」
後でわかったことだがリットリオでは酒宴は相手と親睦を深めるにはもってこいの席だそうで、こちらから誘った事は友好をアピールするうえで申し分ない提案だったといえよう。
「さて、楽しみもできたことだし俺も屋敷に戻るよ、無理を言って出て来た。」
「おう、酒の席で腹わって話せるのを楽しみにしてるよ」
そう言うとアンジェリーノ侯爵は立ち上がって笑みを浮かべる。本当に色々と様になるおっさんだが・・・。
「引き留めて悪いが・・・せめて着替えてから帰ったほうがいいぜ」
「・・・そうだったな」
でかぶつ君のお陰で目に見えるほどは残っちゃいないが・・・臭いがな。酸っぱいんだよな。
「すまないがそうさせてもらおう」
そのあと、デカブツ君の持ってきた服に着替えてアンジェリーノ侯爵は帰っていった。
なんか拍子抜けな結末だが・・・まあ、細かい話は酒の席で詰めるとして、関係者の立ち位置はおおよそ分かったな。
「皇太子殿下と話が通じた以上残った問題はリットリオ王と話すくらいか・・・」
脇は固めたと思うがそれもどう転ぶかわからない。今回の粛清の件もあって国王の影響力は大きなものだ。
仮に王の説得に失敗したら鉱山の問題もいろいろと面倒だ。
「ま、やることはやったし後はなるようになるか」
「アダムスターの俊英、まさかあれほどとは・・・」
通りを歩く中でアンジェリーノ侯爵は一人呟いた。遠巻きに彼を護衛する子飼の兵士達もかいた冷や汗を拭いつつ自身の任務を続けていた。
長く宮中で貴族達と渡り合い、領地で辣腕を振るっていた彼ではあったが今回の相手はそのどれにも当てはまらないタイプだっただけにヴォルカンの真意や人となりを見抜ききれずにいたのだ。
「旦那様、今回・・・どうみますか?」
「少なくとも自力でどうにかできるとは思えんな」
傍らに合流した護衛の筆頭と世間話に混ぜて今回の会合についての感想を交わす。初老の護衛は何気ない会話で状況を察して話を合わせてくれるのでアンジェリーノも誰に聞かれたとしても分かりにくい暗号めいた会話にすることができた。
「それでは?」
「幸い向こうは酒宴を望んでいるらしい、もてなすさ」
本来ならばこちらの立場こそ格上、しかしながら実際の実力は相手が上である。へりくだっては身内がうるさいが、歯向かえば間違いなく大惨事になる。
そんな中で相手からの酒宴の提案は真意はどうあれ、融和ムードを作りたいアンジェリーノにとってありがたい話だった。
「聞けば兄貴も世話になったと聞いたし、膿を出す手伝いもしてくれた・・・恩人だろう」
「リットリオでもお忍びでいろいろとなさったそうで」
「規模からすれば忍んではいまいがな」
苦笑するアンジェリーノに初老の護衛は確かにとうなずいた。近隣から消えたドワーフの職人、そして古い技術の持ち主であったブンロクの最後の弟子であるターニャ。彼らを如何様にしてか彼は手に入れ、そして高い技術と先見の明で莫大な財力とコネを現在進行形で作り続けている。
「はみ出し捨てられたものを全て拾い上げ、そして他がしまったと思わせるほど見事な運用をする・・・彼の見えているものというのは一体なんなのだろうな?」
「地方に散った貴族達の養子、ほとんどが彼の経営する孤児院から・・・意図がどうであれ看過はできませんな」
「とはいえ彼に立ち向かう術は我らにはない、なにせザンナルを潰せる男だ」
「旦那様はその情報の真偽を?」
公にはザンナル帝国は新興国の扶桑国に敗北し、その支援をしたサマル王国によって分割された後に三分の一以下となった国土を有してなんとか国体を保っている状態だ。その扶桑国の国王の名は謎に包まれているが・・・。
「確かめるまでもない、いや、正確には確かめないといけない事なのだろうが・・・彼はやる気がしてな。それにサマル王国も戦争に参加できるほどの余裕はなかったはずだ」
「それ故にあの戦役は彼の仕業だと?」
「考えすぎかもな、しかしやろうと思えば崩せるだろうよ。我らの国を建て直したくらいだ、逆など造作もない」
初老の護衛は穿ち過ぎな考えの主人を諫めようと思ったが、どうしても彼を納得させるだけの理由を用意できず押し黙るしかなかった。彼にはそれができそうな気がする。根拠は確かにないが・・・作るより崩す、治すより壊す方が簡単なのは明白で、ザンナルにはリットリオ同様に疲弊していた。言われてみれば亡国の兆しはあったのだろう。
彼はそれを後押しした形にすぎない。
そう、無理矢理結論づけるしかこの謎の説得力を説明する事はできなかった。
「そうかい、こちらとしては鉱山の件がカタがつけば文句はない」
「そっちの件も色々と世話を焼いてくれたようだな。ま、そちらと喧嘩する意図は俺もない。いい条件をそちらからつけてくれたんだ、せいぜい儲けさせてもらうよ」
鉄の買い取りが行われる。そしてリットリオでの鉄資源のだぶつきが無くなり次第鉱山での自主生産が始まるわけだ。それまでは俺が彼らの大口の取引相手という事だな。
「さて、アンタが話の分かる人でよかった。それなら俺から言う事はなにもないよ、なるたけ平和に儲けてくれ」
「もちろんだとも、俺は晩酌は落ち着いてしたいからな」
「ふーん、そうか・・・そうだ、旨い酒を知っている。今度それで酒盛りでもしようか」
「それは良い提案だ。喜んで受けさせていただこう」
後でわかったことだがリットリオでは酒宴は相手と親睦を深めるにはもってこいの席だそうで、こちらから誘った事は友好をアピールするうえで申し分ない提案だったといえよう。
「さて、楽しみもできたことだし俺も屋敷に戻るよ、無理を言って出て来た。」
「おう、酒の席で腹わって話せるのを楽しみにしてるよ」
そう言うとアンジェリーノ侯爵は立ち上がって笑みを浮かべる。本当に色々と様になるおっさんだが・・・。
「引き留めて悪いが・・・せめて着替えてから帰ったほうがいいぜ」
「・・・そうだったな」
でかぶつ君のお陰で目に見えるほどは残っちゃいないが・・・臭いがな。酸っぱいんだよな。
「すまないがそうさせてもらおう」
そのあと、デカブツ君の持ってきた服に着替えてアンジェリーノ侯爵は帰っていった。
なんか拍子抜けな結末だが・・・まあ、細かい話は酒の席で詰めるとして、関係者の立ち位置はおおよそ分かったな。
「皇太子殿下と話が通じた以上残った問題はリットリオ王と話すくらいか・・・」
脇は固めたと思うがそれもどう転ぶかわからない。今回の粛清の件もあって国王の影響力は大きなものだ。
仮に王の説得に失敗したら鉱山の問題もいろいろと面倒だ。
「ま、やることはやったし後はなるようになるか」
「アダムスターの俊英、まさかあれほどとは・・・」
通りを歩く中でアンジェリーノ侯爵は一人呟いた。遠巻きに彼を護衛する子飼の兵士達もかいた冷や汗を拭いつつ自身の任務を続けていた。
長く宮中で貴族達と渡り合い、領地で辣腕を振るっていた彼ではあったが今回の相手はそのどれにも当てはまらないタイプだっただけにヴォルカンの真意や人となりを見抜ききれずにいたのだ。
「旦那様、今回・・・どうみますか?」
「少なくとも自力でどうにかできるとは思えんな」
傍らに合流した護衛の筆頭と世間話に混ぜて今回の会合についての感想を交わす。初老の護衛は何気ない会話で状況を察して話を合わせてくれるのでアンジェリーノも誰に聞かれたとしても分かりにくい暗号めいた会話にすることができた。
「それでは?」
「幸い向こうは酒宴を望んでいるらしい、もてなすさ」
本来ならばこちらの立場こそ格上、しかしながら実際の実力は相手が上である。へりくだっては身内がうるさいが、歯向かえば間違いなく大惨事になる。
そんな中で相手からの酒宴の提案は真意はどうあれ、融和ムードを作りたいアンジェリーノにとってありがたい話だった。
「聞けば兄貴も世話になったと聞いたし、膿を出す手伝いもしてくれた・・・恩人だろう」
「リットリオでもお忍びでいろいろとなさったそうで」
「規模からすれば忍んではいまいがな」
苦笑するアンジェリーノに初老の護衛は確かにとうなずいた。近隣から消えたドワーフの職人、そして古い技術の持ち主であったブンロクの最後の弟子であるターニャ。彼らを如何様にしてか彼は手に入れ、そして高い技術と先見の明で莫大な財力とコネを現在進行形で作り続けている。
「はみ出し捨てられたものを全て拾い上げ、そして他がしまったと思わせるほど見事な運用をする・・・彼の見えているものというのは一体なんなのだろうな?」
「地方に散った貴族達の養子、ほとんどが彼の経営する孤児院から・・・意図がどうであれ看過はできませんな」
「とはいえ彼に立ち向かう術は我らにはない、なにせザンナルを潰せる男だ」
「旦那様はその情報の真偽を?」
公にはザンナル帝国は新興国の扶桑国に敗北し、その支援をしたサマル王国によって分割された後に三分の一以下となった国土を有してなんとか国体を保っている状態だ。その扶桑国の国王の名は謎に包まれているが・・・。
「確かめるまでもない、いや、正確には確かめないといけない事なのだろうが・・・彼はやる気がしてな。それにサマル王国も戦争に参加できるほどの余裕はなかったはずだ」
「それ故にあの戦役は彼の仕業だと?」
「考えすぎかもな、しかしやろうと思えば崩せるだろうよ。我らの国を建て直したくらいだ、逆など造作もない」
初老の護衛は穿ち過ぎな考えの主人を諫めようと思ったが、どうしても彼を納得させるだけの理由を用意できず押し黙るしかなかった。彼にはそれができそうな気がする。根拠は確かにないが・・・作るより崩す、治すより壊す方が簡単なのは明白で、ザンナルにはリットリオ同様に疲弊していた。言われてみれば亡国の兆しはあったのだろう。
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