ドラゴンになったので世界を救う為に国と跡継ぎつくります!

ファウスト

文字の大きさ
271 / 282
ドラゴンと独立宣言の章

王族の運輸 その3

しおりを挟む
とりあえず浴衣の着付けは夕食が済んでからと言うことでアレクシアと共に厨房を覗く事に。

「ここだな」
「いい匂いがします!」

付近に来ると既に準備が始まっているのかいい匂いが立ち込めている。魔獣の肉が大量にあり、それでいて野菜や麦もたくさんある・・・そうなると何が料理の候補にあがるだろうか。

「すき焼き・・・いや、鍋ってことも・・・」
「?」

漂う香りは懐かしき醤油の香り、それが香ばしく薫るのだから思わず想像してしまっても仕方ない。
ほのかに出汁の香りもするぞ、うーん・・・悩ましい。

「俺も辛抱ならなくなってきた、早いとこ確認しちまおう」
「はい!」

二人でそそくさと厨房を覗く。すると全員の視線がこちらに向いた。こっそりのつもりでも獣人達の嗅覚を誤魔化すことはできないようだ。

「大将、どうかなさったんで?」

厨房に詰める料理人の一人が手を止める。それを制して俺は用件を手短に言う。

「いや、少し腹が減っただけだ。そのついでにお姫様に厨房を見せようと思ってな」
「なるほど、それでしたらまずこちらの賄いをどうぞ」

そう言うと彼が出してくれたのはスジ肉を煮込んだ佃煮と、懐かしの握り飯だった。二個ほどを取り、それに佃煮を添えて出してくれる。

「これは・・・?」
「佃煮だな、旨そうだ」

試しにひときれ摘まんで見ると、やはりと言うかとても懐かしい味がした。砂糖と醤油、そして手間を掛けて煮込んだものが贅沢にも賄いとして提供される。口の中に甘辛さの残る内に握り飯にかぶりつくと思わず涙が出そうになる。

「・・・」
「た、大将?」
「ん?ああ、大丈夫だ、旨いぞ」

郷愁の念を感じている俺をどうみたのか心配そうな彼に俺は笑顔で返事をすると彼らもようやくホッとした表情になる。

「それはよかった・・・んですが」
「?」
「あのお姫様をどうにかしてくださると嬉しいです」

そう言う彼の指差す方向を見るとお皿を空にしたアレクシアが従業員用の大皿に手を伸ばしている所だった。よくみると何個か減ってるな。

「コラっ!そこにあるのは全員ぶんだぞ!」
「ひゃいっ!」

ひとの分まで握り飯を食っちまったのか、呆れた奴だ。

「まったく、王族の自覚があるのか!」
「ふいまへん・・・ごくん」

結局何個食ったんだ・・・。ひーふー・・・、五個か。大の男が二個食う間に全部で七個も食っちまったなんて・・・もっと少食だったとおもったが。

「すまんな・・・」
「美味しそうに食べてくれましたし、これくらいなら全然大丈夫です。ただ・・・」
「ただ?」
「大皿全部食べちゃいそうだったんでね」

そう言うとアレクシアは流石に恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にして俯いた。

「夕食が入らなくなっても知らんぞ」
「今日はすき焼きですんでそうなるとちょっと残念ですね」

二人してそう言うとアレクシアは今日がごちそうらしき事を悟って涙目になっていた。


翌朝。俺たちは朝食を終えてトラックの見聞に訪れていた。

「これが・・・トラックという乗り物なんですね」

鎧姿に着替えて参上したアレクシアに整備班の皆は緊張気味だが、旅館の従業員はそんな彼女を見て逆に微笑ましく見守っている。

「はい、倒木を五本から最大十本は運べます」
「首都まではどれくらいかかりますか?」
「道が良ければ馬車の半分以下のスピードで向かえます」

説明を受けつつもアレクシアはトラックの周囲を歩き回っては念入りに足回りを確認する。こう言うところは流石に軍関係者らしい着眼点だ。

「部品の交換ペースはどれほどで?」
「早くて三ヶ月でしょうか」
「そうなると重量物の運搬が重なると一ヶ月ペースと考えても良いわけですね」

隣で聞いていたが楽観していたらしい整備班はアレクシアの指摘に目を白黒させている。どうやらアレクシアを見くびっていたようだな。

「トラックが四十・・・そうなると常時動かせるのは半分ほどで、他は修理や修繕の為に待機させて交代で稼働する・・・中継基地の建設もするべきでしょう、それについての予算ですが・・・」
「予算についてはこちらで負担する、人員はできるだけ現地徴発だな」

補給線を徐々に伸ばしていき、最後にザンナルの旧首都に連結させる。そうすればトラックが不調を起こしても中継基地から修繕や業務の引き継ぎを行える。

「使い潰すつもりでつかってくれて構わない、数は時間があれば逐次補填できるからな」
「わかりました、ですが刻印があるものはどうするのですか?」
「外側を乗せ代えすれば問題ない、もしくはちゃんと刻印部分だけでも細かく管理してくれれば順番に始末すればいい」

外装は撤去して再利用できるように加工しやすくし、規格を設けてある。特にトラック等の業務に携わるものにはそれを徹底してあるのだ。

「運用も大事だが、まずは乗って見ようか」
「はい、それではお願いします」

説明もそこそこに試乗してもらうことにした。乗り心地はそこまで良くないが気に入ってもらえるだろうか。

しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

処理中です...