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ドラゴンと独立宣言の章
国境紛争
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警察隊の半数はすぐさま国境付近へと進撃するザンナルの騎士達に合流した。獣人の身体能力と装備の身軽さが活きた形だろうか。
「警察隊です、現地からの情報はありますか?」
「ああ、君たちか・・・東の国境は前回の戦いを逃れた砦も多く、騎士達が頑張って支えてくれているらしい」
相手方はどうやら砦を落とす事に躍起になっているらしく、村落や畑などには目もくれていないのだという。
それを逆手に取って彼らは籠城戦を敢行し、敵の足止めを買って出たそうだ。
「しかし物資に関してはこちらの台所事情も良くない、できるかぎり早い終結を望んでいる」
「それはむこう次第でしょうな、それに砦や騎士ばかり襲って・・・そこも気になる」
戦争や紛争には少なからず目的がある。領土にしろ、食料にしろ利益を求めるなら抵抗する力のある騎士をわざわざ狙うというのはどうにも解せない。楽ちんなターゲットのはずの村落を見ても彼らは素通りだったという。そのため領土目的で彼らが国境を越えて来たのか?ということには疑問が残り、さらにはその当時の村落はアルトリアが村民の不安解消の為に許可した祭りの最中で彼らにとっては豪華な催しの最中だったという。
「収穫物など積み上げて自らの労働の成果を称えあうといった催しだったので食料も山積みだったのですが・・・」
「それも素通り・・・そして騎士の詰め所に襲撃を?」
その当時奇襲同然の攻撃だったが彼らに騎士と一般人を見分ける術がなかったのか非番の騎士には目もくれず、鎧姿の騎士に襲い掛かっては叩きのめし、本格的な戦闘はなぜかこちらの体勢が整ってからだったという。
「そのためにこうして助力を願うだけの時間が稼げたのですが・・・」
「訳がわからん、なんの目的があって・・・」
そう言いかけたところで警察隊のメンバーの一人が意見を述べた。
「確証ではありませんが・・・」
「どうした?」
「彼らは武功をあげたがっているのでは?」
「武功だと?」
警察隊にも様々な出身者が増えて来た。ほとんどがザンナルからの逃亡奴隷であったり、狼人族の出身者であたったりとさまざまであったがその中の一人はその大勢の中の一人ではなく地方部族の出身であった。故に種族も犬型や狼型の多い警察隊では異色のクマ型であり、その大柄な体格と大らかな人柄で慕われていた。
「少なくとも、私の故郷の話ですが・・・」
「かまいません、同じ獣人族の言葉です。無知な我らよりも正しいかもしれない」
恐縮する彼に続きを促すと彼はサーベルと共に持ってきていた山刀に触れる。
「我々の中には狩猟や戦闘を普段の利益などとは違う理由で行う事があります」
「ふむ、それで・・・?」
「その場合には大抵が神事であったり、祝い事の為だったりします」
「神事・・・?それに祝い事だと?生贄などとは違うのか?」
「大まかに言えば似ているかもしれません、狩猟で得られる獲物は神からの賜り物でありますが彼らはそれを此度の戦で得られる武功に準えているのではないでしょうか?」
「吉兆をそれで占っているのか?」
問いかけに彼は黙ってうなずいた。そうなると今回の不可解な行動にも納得がいく。彼らはより強い獲物を討ち取る事で此度の何らかの神事を行おうというのだろう。
「ザンナルが狙われたのは?」
「明確な獣人の敵と見做しているのかも・・・それでいて騎士はどの国でも屈強な者ばかりですから」
敵将の首を取って、それの多寡でなにかしらの吉兆を占うつもりらしい。そうなると平民には良いが騎士達にとっては冗談じゃない出来事である。
「身から出た錆とはいえ・・・傍迷惑な話だ」
ザンナルは長く獣人を虐げて来た。今までは軍事力と国力でそれを打ち払ってきたがとうとうそれが逆転した形になったのだ。因果応報とはこういう事だろうか。
「もはやザンナルの問題は一国だけの問題ではありません、早急に解決策を見出す為にもまずは彼らと軍事的に拮抗しなければなりません」
「というと?」
「彼らに弱者の意見を、それも他種族の意見を聞き入れる文化はありませんよ、交流目的じゃないんですから」
獣人族が他者の領地に訪れる目的ははっきりしている。狩猟か戦か交流かの三択だ。群れで生きる彼らにとって単独行動する文化はあまりない。時折変わり者もいるが大抵はこのどれかになり、集団となると実質戦か狩猟のどちらかに限られる。そんな彼らを交渉のテーブルにつけるにはまず渾身の一撃を彼らの顔面に叩き込むしかない。
「かなり楽観的ですが・・・砦の人たちが撃退に成功していたなら交渉の余地があります」
「交渉とは?」
「そうですね、しいて言うなら一対一の殴り合いでしょうか」
それのどこが交渉なのだろうか、しかしながらその際に勝者に全てを委ねるのが彼らの流儀。そこで勝利以上の物を要求した場合はまたそこで殴り合いが再開され、再度のその勝敗で譲歩するか否かが決定されるという。
「獣人の文化は複雑だな・・・」
これには騎士達も苦笑するしかなかった。
「警察隊です、現地からの情報はありますか?」
「ああ、君たちか・・・東の国境は前回の戦いを逃れた砦も多く、騎士達が頑張って支えてくれているらしい」
相手方はどうやら砦を落とす事に躍起になっているらしく、村落や畑などには目もくれていないのだという。
それを逆手に取って彼らは籠城戦を敢行し、敵の足止めを買って出たそうだ。
「しかし物資に関してはこちらの台所事情も良くない、できるかぎり早い終結を望んでいる」
「それはむこう次第でしょうな、それに砦や騎士ばかり襲って・・・そこも気になる」
戦争や紛争には少なからず目的がある。領土にしろ、食料にしろ利益を求めるなら抵抗する力のある騎士をわざわざ狙うというのはどうにも解せない。楽ちんなターゲットのはずの村落を見ても彼らは素通りだったという。そのため領土目的で彼らが国境を越えて来たのか?ということには疑問が残り、さらにはその当時の村落はアルトリアが村民の不安解消の為に許可した祭りの最中で彼らにとっては豪華な催しの最中だったという。
「収穫物など積み上げて自らの労働の成果を称えあうといった催しだったので食料も山積みだったのですが・・・」
「それも素通り・・・そして騎士の詰め所に襲撃を?」
その当時奇襲同然の攻撃だったが彼らに騎士と一般人を見分ける術がなかったのか非番の騎士には目もくれず、鎧姿の騎士に襲い掛かっては叩きのめし、本格的な戦闘はなぜかこちらの体勢が整ってからだったという。
「そのためにこうして助力を願うだけの時間が稼げたのですが・・・」
「訳がわからん、なんの目的があって・・・」
そう言いかけたところで警察隊のメンバーの一人が意見を述べた。
「確証ではありませんが・・・」
「どうした?」
「彼らは武功をあげたがっているのでは?」
「武功だと?」
警察隊にも様々な出身者が増えて来た。ほとんどがザンナルからの逃亡奴隷であったり、狼人族の出身者であたったりとさまざまであったがその中の一人はその大勢の中の一人ではなく地方部族の出身であった。故に種族も犬型や狼型の多い警察隊では異色のクマ型であり、その大柄な体格と大らかな人柄で慕われていた。
「少なくとも、私の故郷の話ですが・・・」
「かまいません、同じ獣人族の言葉です。無知な我らよりも正しいかもしれない」
恐縮する彼に続きを促すと彼はサーベルと共に持ってきていた山刀に触れる。
「我々の中には狩猟や戦闘を普段の利益などとは違う理由で行う事があります」
「ふむ、それで・・・?」
「その場合には大抵が神事であったり、祝い事の為だったりします」
「神事・・・?それに祝い事だと?生贄などとは違うのか?」
「大まかに言えば似ているかもしれません、狩猟で得られる獲物は神からの賜り物でありますが彼らはそれを此度の戦で得られる武功に準えているのではないでしょうか?」
「吉兆をそれで占っているのか?」
問いかけに彼は黙ってうなずいた。そうなると今回の不可解な行動にも納得がいく。彼らはより強い獲物を討ち取る事で此度の何らかの神事を行おうというのだろう。
「ザンナルが狙われたのは?」
「明確な獣人の敵と見做しているのかも・・・それでいて騎士はどの国でも屈強な者ばかりですから」
敵将の首を取って、それの多寡でなにかしらの吉兆を占うつもりらしい。そうなると平民には良いが騎士達にとっては冗談じゃない出来事である。
「身から出た錆とはいえ・・・傍迷惑な話だ」
ザンナルは長く獣人を虐げて来た。今までは軍事力と国力でそれを打ち払ってきたがとうとうそれが逆転した形になったのだ。因果応報とはこういう事だろうか。
「もはやザンナルの問題は一国だけの問題ではありません、早急に解決策を見出す為にもまずは彼らと軍事的に拮抗しなければなりません」
「というと?」
「彼らに弱者の意見を、それも他種族の意見を聞き入れる文化はありませんよ、交流目的じゃないんですから」
獣人族が他者の領地に訪れる目的ははっきりしている。狩猟か戦か交流かの三択だ。群れで生きる彼らにとって単独行動する文化はあまりない。時折変わり者もいるが大抵はこのどれかになり、集団となると実質戦か狩猟のどちらかに限られる。そんな彼らを交渉のテーブルにつけるにはまず渾身の一撃を彼らの顔面に叩き込むしかない。
「かなり楽観的ですが・・・砦の人たちが撃退に成功していたなら交渉の余地があります」
「交渉とは?」
「そうですね、しいて言うなら一対一の殴り合いでしょうか」
それのどこが交渉なのだろうか、しかしながらその際に勝者に全てを委ねるのが彼らの流儀。そこで勝利以上の物を要求した場合はまたそこで殴り合いが再開され、再度のその勝敗で譲歩するか否かが決定されるという。
「獣人の文化は複雑だな・・・」
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