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「この距離感は幼馴染ですか?」
雪合戦は暖かい
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◆雪合戦は温かい
ザクッ。ザクッ。
雪を踏む音が鳴り響く。雲ひとつない青空の元、学校のグラウンドは白一色で包まれている。子供の元気な声は、肌を震わす風に運ばれ耳に届き、太陽の光と共に暖かさを感じさせる。
もう、こんな時期か。
昨日までは、白い息が溢れる程度で、黒い地面が顔を出していたというのに。
とっくに見慣れている通学路も、まるで別世界だ。毎年、この時期にはまだ高揚感を覚える。
高校2年冬。そろそろ進路について考えたり、悩み始める時期だ。そんな悩みを知らぬような小学生の笑い声を聞きながら、俺は白い息をこぼす。
あの頃は良かった。将来への希望も、夢も確かにあって、社会の嫌な所を見ないで済んだ。
高校生になれば、子供とも、大人とも取れず、なんとも不安定で、不確定。都合のいい時に子供にも、大人にも捉えられてしまう時期。
小学生を見ながら、思い出に浸かっている時点で、年齢を重ねたことを少し実感してしまう。あんな風に、無邪気に雪玉を投げたり、カマクラを作ったりして遊んでいた時に戻ってしまいたいと思う。
バシュッ!
俺の背中に何かの当たる音がする。
「なーに黄昏てるのよ」
後ろを振り向くと、少し冷たく、何か懐かしい気持ちになりながら、後ろを向くと、一人の少女が雪に手を突っ込み、雪玉を作ろうとしていた。
肩の少し上くらいの長さの髪。子供のように輝いている瞳。冬だというのに、手袋をせずに雪を触っていて、白い手や鼻が赤くなっている。
彼女は、雪に反射する光によって妖精かなと思うほど輝いていた。
俺の視線に気が付き、ヤバイ!という表情をする。
「あ……あたし、雪玉投げてないわよ?」
「その状態で、説得力がないにも程がある……」
「バレたら仕方ないわね! 懐かしいでしょ」
彼女は、「えいっ!」と、作りたての雪玉を俺を目掛けて投げる。雪玉は、綺麗な放物線を描き、俺の頭に直撃する。
しっかり固めていなかったのか、当たった瞬間に崩れ、俺の頭が雪まみれになる。さらには、そのカケラが服の中に侵入する。
「冷たっ!?」
彼女は俺の反応を見て、ケラケラと笑う。
「よくも、やりやがったな!」
俺はすぐさま歩道脇に積もっている雪を握り、雪玉を作って全速力で投げる。
「きゃっ! 痛い! 冷たい! 大人げない!」
「まだ未成年ですー!」
「うっざ!」
「お前が先にやってきたからだろ!」
「ん~! 覚悟しなさいね!」
お互い、雪玉を作り、投げ、周りの目も気にせず雪合戦をやった。
この時だけは、小学生の頃のように、二人で笑い、寒い思いをしながら遊ぶ。
きっと、終わった後は二人してベチャベチャになりながら、笑い合うだろう。
昔のように。
雪合戦の季節になった。動物や植物は眠り、静かで、冷たく、悲しい季節になった。
それでも、彼女といる時は温かい。
◇
「はぁ……やっぱり、外で遊んだ後はこれに限るわ」
「あぁ……気持ちいい」
二人でコタツで温まる。そしてアイスを食べる。
「また、来年もこうやって遊べたらいいね」
「そろそろ恥ずかしくないか? 子供っぱいし」
「そこは、『ああ、そうだね』って返すところよ」
「それはすまん」
言葉にしなくても分かるだろ?
きっと、来年もこうしてるさ。
ザクッ。ザクッ。
雪を踏む音が鳴り響く。雲ひとつない青空の元、学校のグラウンドは白一色で包まれている。子供の元気な声は、肌を震わす風に運ばれ耳に届き、太陽の光と共に暖かさを感じさせる。
もう、こんな時期か。
昨日までは、白い息が溢れる程度で、黒い地面が顔を出していたというのに。
とっくに見慣れている通学路も、まるで別世界だ。毎年、この時期にはまだ高揚感を覚える。
高校2年冬。そろそろ進路について考えたり、悩み始める時期だ。そんな悩みを知らぬような小学生の笑い声を聞きながら、俺は白い息をこぼす。
あの頃は良かった。将来への希望も、夢も確かにあって、社会の嫌な所を見ないで済んだ。
高校生になれば、子供とも、大人とも取れず、なんとも不安定で、不確定。都合のいい時に子供にも、大人にも捉えられてしまう時期。
小学生を見ながら、思い出に浸かっている時点で、年齢を重ねたことを少し実感してしまう。あんな風に、無邪気に雪玉を投げたり、カマクラを作ったりして遊んでいた時に戻ってしまいたいと思う。
バシュッ!
俺の背中に何かの当たる音がする。
「なーに黄昏てるのよ」
後ろを振り向くと、少し冷たく、何か懐かしい気持ちになりながら、後ろを向くと、一人の少女が雪に手を突っ込み、雪玉を作ろうとしていた。
肩の少し上くらいの長さの髪。子供のように輝いている瞳。冬だというのに、手袋をせずに雪を触っていて、白い手や鼻が赤くなっている。
彼女は、雪に反射する光によって妖精かなと思うほど輝いていた。
俺の視線に気が付き、ヤバイ!という表情をする。
「あ……あたし、雪玉投げてないわよ?」
「その状態で、説得力がないにも程がある……」
「バレたら仕方ないわね! 懐かしいでしょ」
彼女は、「えいっ!」と、作りたての雪玉を俺を目掛けて投げる。雪玉は、綺麗な放物線を描き、俺の頭に直撃する。
しっかり固めていなかったのか、当たった瞬間に崩れ、俺の頭が雪まみれになる。さらには、そのカケラが服の中に侵入する。
「冷たっ!?」
彼女は俺の反応を見て、ケラケラと笑う。
「よくも、やりやがったな!」
俺はすぐさま歩道脇に積もっている雪を握り、雪玉を作って全速力で投げる。
「きゃっ! 痛い! 冷たい! 大人げない!」
「まだ未成年ですー!」
「うっざ!」
「お前が先にやってきたからだろ!」
「ん~! 覚悟しなさいね!」
お互い、雪玉を作り、投げ、周りの目も気にせず雪合戦をやった。
この時だけは、小学生の頃のように、二人で笑い、寒い思いをしながら遊ぶ。
きっと、終わった後は二人してベチャベチャになりながら、笑い合うだろう。
昔のように。
雪合戦の季節になった。動物や植物は眠り、静かで、冷たく、悲しい季節になった。
それでも、彼女といる時は温かい。
◇
「はぁ……やっぱり、外で遊んだ後はこれに限るわ」
「あぁ……気持ちいい」
二人でコタツで温まる。そしてアイスを食べる。
「また、来年もこうやって遊べたらいいね」
「そろそろ恥ずかしくないか? 子供っぱいし」
「そこは、『ああ、そうだね』って返すところよ」
「それはすまん」
言葉にしなくても分かるだろ?
きっと、来年もこうしてるさ。
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