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「この距離感は友達ですか?」
バレンタイン、甘さ控えめでお願いします
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学校に向かうため家から出る。変哲もない住宅街。雪も積もっていて、遠くでは除雪車の音、雪かきする人の声。冷たく、白い日常。
近くを歩く、小学生や中学生。主に男の子は何やらキョロキョロしたり、浮き足立っていて、なんとも甘い空気が漂う。空気もいつもツンツンしてて、体温を奪うのに、今日はなんともデレデレしてる気がする。
まあ、俺が朝からチョコを食べたからかもしれない。紬《つむぎ》の母親、美雪さんから貰った、余り物の板チョコは、朝から食べるには甘すぎた。元々、甘ったるい感じや、口に延々と残る甘さが苦手な俺にとって、重すぎた。
今日は、バレンタインだ。言わずもしれたバレンタイン。あの、チョコ会社の陰謀に、日本中の人々が踊らされる悪魔の日。
みんな浮き足立っちゃって。そんな早く学校に行っても変わらないぞ♪
俺は、周りの空気に流されないように、考え事をしながら学校へと向かうのであった。
◆
さて。俺は玄関へと既に到着した。別に、チョコを気にしてるわけではないが、何故か下駄箱を開けるのに億劫になってしまっていた。別に、チョコが欲しいわけではない。チョコよりクッキーがいい。
俺は下駄箱に手をかけ、ゆっくり扉を開ける。昔、中にゴミを入れられた事があるから、それを警戒してるだけだ。それ以外に理由はない。俺は、ゆっくり開ける。そして、その中には……
「まあ、そうだよな」
中には、いつの通り使い込まれた上靴が入っているのみだ。当たり前だ。うん。というか、下駄箱なんて臭う場所だし、そこにチョコ入れるのはあまりに前時代的だ。
衛生管理の問題で謝罪会見になるぞ。
「あ。結人君」
俺は入口の方から声をかけられる。そこには、秋元さんがニコニコして立っていた。いつもより外見を整えてるのか、眩しい太陽に照らされた雪の影響か普段の二割増しの魅力を感じる。艶やかな長い髪は風に揺られ、一層甘い雰囲気を醸し出していた。
「秋元さん。おはよう」
「はい。おはようございます。……あの、何故そんなに下駄箱を恐る恐る開けてたんですか?」
「え……」
やばい。普通に見られていた。いや、別にやましいことはない。まさか、知り合いがいるとは思わなかった。
秋元さんは、ハッと何かを感じ取った無邪気な子供のように笑い、
「もしかして、下駄箱にチョコないかなって考えてたんですか? 確かに物語とかだと定番ですもんね!」
「うぐっ」
変な声が出た。
「結人君も、チョコを気にするんですね」
「それはまあ。男ですし。少しくらいは欲しいかなって思ったりしなくもない、かも」
俺はテンパりながら、ぎこちなく言った。なんだろう、今まで見せてた一面とは違う部分を見せてしまって恥ずかしい。
「結人君が、普通の男の子で安心しました」
「普通じゃないと思ってたの?」
「紬ちゃんみたいな、可愛い子とあんなに一緒にいて、下心を出そうとしない所が普通じゃないなと思ってました。ラブコメ主人公ですら、サービスシーンでは心が揺れますよ」
「主人公じゃないのでね」
「可愛い幼馴染いるっていうの、めちゃめちゃ主人公属性ありますよ?」
「女性問題抱えたくないので、主人公はごめんです」
「結人君にそんな女性が寄ってくる魅力があると?」
「いや全く」
男として魅力なしと言われてしまった。あれ、秋元さんってこんなに言う人だったっけ?イメージと違う。
「ふふふ。まあ、紬ちゃんが気にいるくらいの魅力はあると思いますよ?」
秋元さんは上靴に履き替えながら笑う。
「腐れ縁だからな」
「それが良いんですよ。……腐れ縁っていう関係。素敵じゃないですか」
「そうかな?」
「そうですよ。そうやって、簡単に切れない糸で繋がってるじゃないですか。羨ましいですよ」
秋元さんはぼーっと遠くの方を向く。その目は何か失ったものを願うような、そんな求める目だった。いや、ただ単に過去の思い出か何かに浸っていたのかもしれない。
秋元さんはこちらに向き直し、問いかけてくる。
「結人君。甘いのって好きですか?」
「甘ったるいのは苦手です」
「……じゃあ、これあげます」
秋元さんはカバンから何かを取り出し、俺に向けて放物線上にモノを投げてくる。俺はそれを両手でしっかりキャッチする。
可愛らしい包装された箱だった。
「チョコです。とても甘ったるく作ってありますよ」
「ありがとうございます! 一生飾っておきます!」
「食べて欲しいんですけど」
「甘ったるいの苦手なんですが」
「じゃあ、要らないですか?」
「いえ貰います。自慢します」
「義理チョコですからね???」
「え、本命じゃないんですか!?」
「……本命が良かったですか?」
「女の子から本命チョコ貰ったら誰でも嬉しいじゃないですか……」
「多分、それ言ったら多くの人から嫌われるのでやめといた方が良いですよ」
秋元さんは苦笑する。
「結人君に本命をあげる人は、しっかり居るじゃないですか」
「……はて、誰か教えてください」
「もう。怒られますよ」
「俺とあいつはそんな関係じゃないので」
「鈍感主人公は今どき流行りませんよ」
「流行は繰り返します」
それじゃあ、また教室でと、秋元さんは先に教室へ歩いて行った。最近、なんか秋元さんとは少しずつ打ち解けてきた気がする。あんなに弱々しくしてた秋元さんが、今では軽口を叩けるほどまでになっていた。
俺は、手に大事に抱えた箱の包装を綺麗に剥がし、箱を開ける。中には、可愛くデコレーションされた一口サイズのチョコが6個ほど入っている。その中から俺は一つ取り出して、口に放り込む。
「……甘ったるいのはやっぱり苦手だなぁ」
でも、今日くらいは甘ったるくて悪い気はしなかった。
近くを歩く、小学生や中学生。主に男の子は何やらキョロキョロしたり、浮き足立っていて、なんとも甘い空気が漂う。空気もいつもツンツンしてて、体温を奪うのに、今日はなんともデレデレしてる気がする。
まあ、俺が朝からチョコを食べたからかもしれない。紬《つむぎ》の母親、美雪さんから貰った、余り物の板チョコは、朝から食べるには甘すぎた。元々、甘ったるい感じや、口に延々と残る甘さが苦手な俺にとって、重すぎた。
今日は、バレンタインだ。言わずもしれたバレンタイン。あの、チョコ会社の陰謀に、日本中の人々が踊らされる悪魔の日。
みんな浮き足立っちゃって。そんな早く学校に行っても変わらないぞ♪
俺は、周りの空気に流されないように、考え事をしながら学校へと向かうのであった。
◆
さて。俺は玄関へと既に到着した。別に、チョコを気にしてるわけではないが、何故か下駄箱を開けるのに億劫になってしまっていた。別に、チョコが欲しいわけではない。チョコよりクッキーがいい。
俺は下駄箱に手をかけ、ゆっくり扉を開ける。昔、中にゴミを入れられた事があるから、それを警戒してるだけだ。それ以外に理由はない。俺は、ゆっくり開ける。そして、その中には……
「まあ、そうだよな」
中には、いつの通り使い込まれた上靴が入っているのみだ。当たり前だ。うん。というか、下駄箱なんて臭う場所だし、そこにチョコ入れるのはあまりに前時代的だ。
衛生管理の問題で謝罪会見になるぞ。
「あ。結人君」
俺は入口の方から声をかけられる。そこには、秋元さんがニコニコして立っていた。いつもより外見を整えてるのか、眩しい太陽に照らされた雪の影響か普段の二割増しの魅力を感じる。艶やかな長い髪は風に揺られ、一層甘い雰囲気を醸し出していた。
「秋元さん。おはよう」
「はい。おはようございます。……あの、何故そんなに下駄箱を恐る恐る開けてたんですか?」
「え……」
やばい。普通に見られていた。いや、別にやましいことはない。まさか、知り合いがいるとは思わなかった。
秋元さんは、ハッと何かを感じ取った無邪気な子供のように笑い、
「もしかして、下駄箱にチョコないかなって考えてたんですか? 確かに物語とかだと定番ですもんね!」
「うぐっ」
変な声が出た。
「結人君も、チョコを気にするんですね」
「それはまあ。男ですし。少しくらいは欲しいかなって思ったりしなくもない、かも」
俺はテンパりながら、ぎこちなく言った。なんだろう、今まで見せてた一面とは違う部分を見せてしまって恥ずかしい。
「結人君が、普通の男の子で安心しました」
「普通じゃないと思ってたの?」
「紬ちゃんみたいな、可愛い子とあんなに一緒にいて、下心を出そうとしない所が普通じゃないなと思ってました。ラブコメ主人公ですら、サービスシーンでは心が揺れますよ」
「主人公じゃないのでね」
「可愛い幼馴染いるっていうの、めちゃめちゃ主人公属性ありますよ?」
「女性問題抱えたくないので、主人公はごめんです」
「結人君にそんな女性が寄ってくる魅力があると?」
「いや全く」
男として魅力なしと言われてしまった。あれ、秋元さんってこんなに言う人だったっけ?イメージと違う。
「ふふふ。まあ、紬ちゃんが気にいるくらいの魅力はあると思いますよ?」
秋元さんは上靴に履き替えながら笑う。
「腐れ縁だからな」
「それが良いんですよ。……腐れ縁っていう関係。素敵じゃないですか」
「そうかな?」
「そうですよ。そうやって、簡単に切れない糸で繋がってるじゃないですか。羨ましいですよ」
秋元さんはぼーっと遠くの方を向く。その目は何か失ったものを願うような、そんな求める目だった。いや、ただ単に過去の思い出か何かに浸っていたのかもしれない。
秋元さんはこちらに向き直し、問いかけてくる。
「結人君。甘いのって好きですか?」
「甘ったるいのは苦手です」
「……じゃあ、これあげます」
秋元さんはカバンから何かを取り出し、俺に向けて放物線上にモノを投げてくる。俺はそれを両手でしっかりキャッチする。
可愛らしい包装された箱だった。
「チョコです。とても甘ったるく作ってありますよ」
「ありがとうございます! 一生飾っておきます!」
「食べて欲しいんですけど」
「甘ったるいの苦手なんですが」
「じゃあ、要らないですか?」
「いえ貰います。自慢します」
「義理チョコですからね???」
「え、本命じゃないんですか!?」
「……本命が良かったですか?」
「女の子から本命チョコ貰ったら誰でも嬉しいじゃないですか……」
「多分、それ言ったら多くの人から嫌われるのでやめといた方が良いですよ」
秋元さんは苦笑する。
「結人君に本命をあげる人は、しっかり居るじゃないですか」
「……はて、誰か教えてください」
「もう。怒られますよ」
「俺とあいつはそんな関係じゃないので」
「鈍感主人公は今どき流行りませんよ」
「流行は繰り返します」
それじゃあ、また教室でと、秋元さんは先に教室へ歩いて行った。最近、なんか秋元さんとは少しずつ打ち解けてきた気がする。あんなに弱々しくしてた秋元さんが、今では軽口を叩けるほどまでになっていた。
俺は、手に大事に抱えた箱の包装を綺麗に剥がし、箱を開ける。中には、可愛くデコレーションされた一口サイズのチョコが6個ほど入っている。その中から俺は一つ取り出して、口に放り込む。
「……甘ったるいのはやっぱり苦手だなぁ」
でも、今日くらいは甘ったるくて悪い気はしなかった。
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