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第5話:ドール少女

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<前回までのあらすじ>
主人公白石敬太は、美人保険医赤崎沙由美が顧問の「服飾文化研究会」に強引に入れられて、
女装コスプレ姿で沙由美と部員である生徒会長、一条葵にオモチャにされコスプレHにふける毎日だったが、
先日、部活用の衣装制作を引き受けている部員、松山翠の家に衣装を取りに行くも、
そこでも例によってひどい目に合うのであった(あらすじここまで)

圭太が松山翠の家に行ってから2週間が過ぎた。
しかし何故か学校で翠を見つけることができない。
一応この学校に在籍している生徒なら一度ぐらい学校で姿を見ることがあってもいいはずだ。
(そういや部室にも姿を見せたことないしな)

まさか本当に幽霊部員になってしまったのか? でもあの真面目そうな子が部活をサボるとか考えにくい。
じゃあ何かあったんだろうか……。
そんな事を考えながら、今日も放課後、僕はいつものように部室に顔を出す。
するとそこには…………。
僕より先に部室で待っていた沙由美がいた。
しかも以前見た白衣&眼鏡姿ではなく、ピンクのナース服を着ての登場だ!
その格好を見た瞬間、圭太の股間はズクンッと反応してしまっていた。
「ふっふっふ~お加減はいかがですかぁ~」と沙由美は悪戯っぽく言う。
(これは・・・なんと刺激的な・・・)いつもの白衣とはまた違った魅力がある。
「とても素敵です・・・けど新しい衣装ですね。」「そうそ、今日届けてもらったの!」
嬉しそうに笑う沙由美を見て、「そうか、この前は俺の分だけでしたからね。・・・あれ、届けてもらったって・・・」
ここまで言いかけたときに背後で声がした。

「はい・・・私が届けに・・・来ました」

この独自のイントネーションは・・・圭太が振り返ると、そこにいたのは松山翠だった。
「ま・・・松山先輩?!」
何気に制服姿を見るのは初めてだった。

「ふふ・・・ちょっと・・・照れます。」と頬を赤らめていた。
「な・・・何でここにいるんですか?」圭太は混乱していた。
「今日は・・・皆さんの分の・・・衣装を・・・届けに来ました」相変わらず途切れがちな口調だ。
「あなたの分も・・・ありますよ・・・この前のやつ・・・クリーニング終わりました」
翠は少し笑って、圭太にも紙袋を渡す。
「この前のって・・・まさか?!」圭太の顔がちょっとひきつる。
「はい・・・この前・・・あなたが・・・うちで・・・おもらし・・・して汚した・・・」
「その表現は大いに誤解を招くのでやめてください!」
翠はこの前の圭太の射精をおもらしと思っていたようだった・・・。
確かにあんな風に脱力してしまったらそうとられても仕方ないかもしれない。
翠はそんな僕の様子を見てクスリと笑っていた。
「後・・・この前のそれで・・・ダメにしちゃった・・・パンツも・・・新しいのに・・・しました」
「・・・それも誤解を招く発言です・・・」圭太は青ざめて肩を震わせる。
それを後ろで聞いてた沙由美まで「あらあら高校生にもなって~可愛いんだから」
とからかうように言う。
「だから違います!本当は・・・」
と否定するも、沙由美は圭太に耳打ちするように囁く。
(圭ちゃん、それもう立派なセクハラよ)と小声で言われる。
確かにそうだ。まさかあの時暴走した翠が無理やり圭太のパンツを切り裂いた・・・
とはさすがにちょっと言いにくい。
圭太は何も言わず黙る。そしてちょっと考えて話題を変える。

「でも、このパンツよく見たら手作りしてくれたんですか?
俺のなんか安物だからここまでしなくてよかったのに・・・」
「私の場合・・・その方が・・・お手軽ですから」
露骨に褒められて翠も悪い気はしてないらしい。
「でも俺なんかのために・・・」と言いかけたところで翠が声をかける。
「あの・・・今日は・・・『おれ』・・・なんですね」
翠に指摘され、圭太は思わず口をつぐんだ。
普段から一人称なんてそこまで気にしていないが、改めて他人言われると気にかかる。
「この子はね、普通の格好の時はいつもこんな感じよ。」沙由美が言う。
「だけど女装してたり、変に興奮してるときは『僕』になるの。面白いでしょ」
「し・・・知らなかった」圭太本人が一番驚いている。
でも言われてみれば、これまでの自分の行動を考えると確かにそんな気がする。
「無意識のうちに何かがトリガーになっているのかもね」
と沙由美が言った。
翠もコクリとうなずく。
圭太には自分が男として普通に振舞っているつもりでも、
どこかおかしいという自覚があった。
でもそれが何故なのかは自分でもわからない。
「だから、この子に何かしたいときは~『僕』な時がいいってことよ」
またまた茶化すように沙由美は言った。「別に俺はそういうつもりじゃ・・・」
と圭太は困った顔をするが、
「そこまで深刻にならなくていいわよ、だって、人間だれしも二面性ってやつあるもの。」
と沙由美は言う。
圭太は、今度こそ本当に何も言えなくなった。
そうこうしているうちに、翠が持ってきた衣装を試着することになった。
圭太は先に着替えることにした。
沙由美が用意したナース服は白を基調とした清楚なデザインだった。
圭太のは以前のメイド服の色違いバージョンだった。
スカート丈も以前より短くなっていた。
圭太は着替え終わって鏡の前に立つ。
するとそこにはちょっと恥ずかしそうな顔の美少女がいた。
(これが僕??)と圭太は一瞬驚く。
しかしそれは自分だとわかっていても、まるで別人のように可愛かった。
(ちょっと待った!今頭の中でも明らかに「僕」になってた?!)
先ほどの指摘があったせいでちょっとうろたえる。
「あら、もしかしてさっきのことまだ気にしてる?」
沙由美から図星を突かれてつい「いや・・・僕は別に」と返してしまい、
「ほら!」と突っ込まれてしまう。
「でも大丈夫よ、今のあなたは女の子なんだから。」
「違うんですけど・・・」
「ふふっ。まあそこは今はどうでもいいじゃない」
沙由美は笑いながら言う。

そんな様子をまじまじと見つめる緑に沙由美は
「どう?さっきの時より今の圭ちゃんの方が全然かわいいでしょ!」
と圭太を前に引きずり出す。
翠はじっくりと眺めると、 沙由美の方を向いてうなずき、そして圭太の顔を見る。
さらに沙由美は「それにね」というと、いきなり圭太のスカートをばっとめくりあげる。
スカートの下の下着があらわになる。
「今回はちゃんと下着も女の子ものよ」と翠に見せびらかす。
圭太は真っ赤になってスカートを抑えると「だからあなたは僕にいったい何の恨みが・・・」
と言う。
すると沙由美は笑って返す。
翠はその様子を見ると、今度はゆっくりと圭太に近づく。
そして圭太の全身をくまなく観察し始める。
さすがの圭太もちょっとドキドキしてしまう。
翠はしばらく圭太の体をじろじろ見ていたが、
「すいません・・・私・・・もう・・・帰らないと。」
と言って席を外す。
結局翠は1時間ほどいて帰った。
帰り際に沙由美に耳打ちするように、 圭太に聞こえないように言う。
その言葉を聞いた沙由美はにやっと笑う。
沙由美はニヤッとしながら言う。
翠が帰ると、沙由美は圭太に言った。
「翠ちゃんね、実は学校に来たのものすごく久しぶりなの。」と言った。
圭太はその話に驚いた。
なんでも翠はずっと不登校で最近まで引きこもり状態だったらしい。
進級も出席日数ギリギリだったそうだ。
そんな彼女がどうして突然学校に来られるようになったのか、圭太は不思議に思った。
それについて沙由美は
「私たちに衣装を届けに来た・・・
ってのは建前で、本当の目的は君ね。」
圭太はドキッとした。
翠が自分に何か用があるなんて全く思っていなかったからだ。
「さっき私にも一度家に行くように頼んでくれってお願いされたわ」
「僕が?」
「この招待どうする?行く?」
「僕でお役に立てるなら・・・といいたいけど、どうせ僕に決定権はないんでしょ?」
と、圭太は笑って見せた。
「その状態の君はこういう時、変に優しいわよね。」
沙由美はまたも見透かしたように言う。
圭太が着替えている間、沙由美と翠は二人で話をしていたようだ。
翠が圭太の女装姿に衝撃を受けたことを沙由美は楽しそうに話す。

「・・・というわけで話はまとまったから」と沙由美は向き直り
「今日は君にいろんなこと教えちゃったから、
そのお礼は今きっちりしてもらうわよ」と圭太に覆いかぶさった。
「え?何を言ってるんですか!?僕疲れてるんですよ!!」
と言いながらも、結局圭太は押し切られてしまった。

結局その日は夜までみっちりねっちりと攻められた・・・。

そして次の日曜。
圭太は再び緑の家に向かう。
衣装の準備はいるかと聞いたら、もう顔見知りだから大丈夫と言われた。
服装指定は特にないとはいえ、ラフかつ失礼のない服装で向かう。

マンションの前まで来たら、翠の姿が見える。
翠は圭太を見ると ぺこっと会釈をする。
圭太もそれに答えると、翠の後に続いて部屋に向かう。
そこで前回行った部屋に向かおうとすると、
「今回は・・・こちらです」と、前回「作業部屋」として入れなかった方の部屋に案内される。
そこにあったものは・・・
ミシンに作業机、ハンガーに掛けられた着のドレス。
・・・そして、棚の上にひしめく無数の人形たちだった。
飾られているのは所謂ドールという奴だろうか?どれもきれいなドレスを着て表情も豊かだが、
見る人によっては不気味に感じるかもしれない。
「これが私の趣味の部屋です」と翠は言った。
そして圭太にこう続ける。
「私は・・・ここで服を作っています。」
「すごいですね!」と圭太は素直に感心して言う。
しかし、翠の顔は暗いままだ。
「そういえばこの前も一人でしたけどご両親は?」
「・・・・・。」翠はますますうつむいて黙ってしまった。
(しまった!藪蛇だったか?)

「あ、いや、別に言いたくなければいいですよ! ほら、前に学校で会った時は一人じゃなかったので」
翠は首を横に振る。
「両親は・・・中学の頃・・・離婚しています。」と消え入りそうな声で言った。
「えっ?」
「原因は・・・父の・・・浮気でした。」
「す、すいません!変なこと聞いて!」
「親権は・・・とりあえず母にわたりましたが・・・父の娘の・・・私とは
・・・暮らすの・・・が嫌で・・・慰謝料で・・・この部屋を買って・・・私に与えて・・・
母は・・・よそで暮らしています」
「ごめんなさい!もういいです!それ以上話さないで!」圭太が止めに入る
「いえ、いいんです・・・ただの事実なので・・・」
「でも、それならどうして学校に?」
「母の・・・再婚相手が・・・服飾系の会社を経営していて・・・
そこに就職したら学費を・・・出してくれるって言われて・・」
翠はぽつりぽつりと話していく。
圭太は言葉が出てこなかった。
ただひたすら翠に同情していたのだ。
そして、そんな時にこんなことしか言えない自分を不甲斐なく思っていた。
しばらく沈黙が続くと、翠が口を開いた。
その声は震えていた。
「でも、そんな私を支えてくれたのがこの人形たちでした。」
そう言って翠は棚の上を見渡す。
そこにはたくさんのかわいらしい人形たちが所狭しと並んでいた。
どの人形もきれいな服を着せられている。
一体ずつ違うデザインのようだが、皆とても似合っていた。
まるで着せ替え人形のように。
圭太は思った。それはまさに翠にとっての救いなのだと。
人形たちは着ているものを毎日変えながら、その美しさを保っていく。
そしてその人形たちに、自分を重ねていたのではないかと。
「それに・・・人形は・・・裏切りませんから。」
その言葉に圭太はドキッとした。
翠の言葉には妙な説得力があった。
翠は続けて言った。
圭太はその言葉でようやく理解した。
人形たちの目だ。
その目は無機質で、無感情なのに、どこか優しさを感じるような目をしている。
そして、その目には何か吸い込まれてしまいそうになる力がある。
「そこに・・・かかっている・・・2着の・・・ドレス・・・わかりますか?」
翠は部屋の奥にあるクローゼットを指さす。
圭太はそれを見てうなずいた。
赤と白の対照的なドレス。
「私が・・・最初に・・・作ったドール服と同じデザインです。」
圭太は何も言わずにじっとそのドレスを見る。
「まさか・・・これを?!・・・俺に?!」
翠はこくりとうなずく。
そして、こう続けた。
「そのドレスを・・・着た人形は・・・白薔薇・・・と・・・紅薔薇。
・・・私が好きな童話・・・です。」
その童話に関しては圭太も知っている。対照的な双子の姉妹が活躍する物語だ。
「私と・・・一緒に・・・そのドレスを・・・着てほしいんです!」
「え?!」と思わず聞き返す。
「あの時・・・私は・・・あなたのあの姿に・・・とても魅力を・・・感じました。
この・・・ドレスを・・・着こなせるのは・・・あなたしかいないと・・・確信したんです」

「いや、でもあれは女装であって……」
「お願いします!」と翠が深々と頭を下げる。
ここまでされて断れるほど、圭太は非情ではなかった。
「分かりました!やりましょう!約束はできませんけど……やるだけやってみます。」
「ありが・・とう・・・」

こうしてドレスを着る準備が始まった・・・

が、彼女はこだわりは作る衣装同様並々ならぬものがあった・・・。
まず、背中が開いたデザインだったため、襟足から背中の体毛をきっちり剃られた。
普段から全身の手入れを欠かしていない圭太であったが、見えない背中は見逃していたようだ。
「あらためて他人にされるとなんか恥ずかしいですね・・・」と言いつつもしっかりと処理する。
次に、髪だが、ウィッグをつけていたので問題なかったが、顔のメイク関しては
「眉を全剃りして最初から全部描きたい」と言い出したので、
「それは確実に生活に支障が出るので勘弁してください」と丁重にお断りした。
翠曰く、化粧をすることで女性ホルモンが分泌され、より美しくなるとのことだ。
(そんなわけない)と思った圭太だったが、その言葉を聞いてなぜか納得してしまった

その後、圭太の顔の毛を少し残しつつ、ファンデーションを塗りたくった後、チークを入れ、
下着に関しても、ガーターベルト、コルセットという、難易度が高いものもあったが、
悪戦苦闘しつつも頑張った。でも圭太は、 なんだかんだで楽しんでいる
自分がいることに気づいていなかった。

そして、翠の希望通り、白と赤のドレスを着せられ、メイクアップされた。
鏡を見ると、そこには確かに美しい女性が立っていた。
その姿はまさに絵本に出てくる少女そのものだった。しかし、
どこか悲しげな雰囲気も漂っているように感じる。
翠が部屋に入ってきた時は驚いたものの、今は落ち着いていて、とても冷静だった。
翠は完成された圭太を見て、感動のあまり涙ぐんでいた。
そんな姿を見て圭太はふっと笑みを浮かべた。
「どうせなら写真でも撮っておきましょうよ」そう言って
圭太は携帯を取り出してカメラモードにする。
すると、翠はいきなり抱きついてきた。
その行動にはさすがに動揺したが、圭太はされるがままになっていた。
「おねがいです・・・このまま・・・私を」
翠は泣きじゃくりながら、必死に訴えてくる。
こんなにも感情をあらわにした彼女を見たのは初めてかもしれない。
それほどまでに自分のことを想ってくれているのかと思うと圭太の心は揺らいだ。
しかし、今の状況で流されるのはよくないと理性が働いたため、翠を引き剥がす。
それでもなお、彼女は食い下がってくる。
圭太はその勢いに押される形で、キスをした。
一瞬の口づけの後、お互い顔を離す。
圭太はもう限界だった。これ以上は抑えられなかった。
翠を抱き寄せ、今度は強く唇を重ねる。舌を絡ませ、唾液を交換する。
互いの息遣いが荒くなる。そして、そのままベッドに押し倒した。
翠は抵抗しなかった。ただ、その目からは一筋の涙を流していた。
そして二人は初めて体を重ねた。
翠は自分の気持ちを全てぶつけたかったのだろう。
圭太にとっても、いきなり襲われる以外の経験がない(!)ので、
うまくいくか心配だったが、

「あなたとなら大丈夫です」と笑顔で言われたので信じることにした。
・・・でも思い出のドレスを行為で汚すわけにはいかない。
どうしようか・・・と悩んでいると、翠はどこからか取り出したゴムを見せた。
これで汚れてもOKということらしい。(これは後日沙由美先生に持たされていたと判明)
そして、ゴムはつけてるものの、翠の体が果てた後、圭太はドレスを汚さないよう
注意しながら再び交わり続けた。

翠は何度も絶頂を迎えていたが、圭太もすぐに果ててしまった。
圭太は、翠と肌を重ね合わせる度に、少しずつ彼女のことが分かってきた気がした。
(翠さん、ずいぶん小柄化と思ったけど、身長は僕と同じぐらいなんだよな)

「ん?どうかしましたか?」と翠が聞いてくる。
「いや、なんでもないです」とだけ答えた。

その後、翠は毎日とはいわないが、少しづつ学校に来る日を増やしていた。
しかしもっと驚いたのは、衣装の販売サイトを個人でオープンしたことだろう。
サイト名は、"Dressing Fantasy Online"(ドレスアップファンタジーオンライン)という。
このサイトでは、コスプレ用の衣装を販売をしているのだ。
しかもかなり完成度が高く、値段もお手頃で、評判もいいという。
また、会員登録をすると、イベントの情報などもメールで送ってきてくれるそうだ。

でもいまだに部室には顔を出し、衣装を提供してくれている。
彼女なりのお礼なのだろう。圭太への衣装に本格的なドレスが数点混じってしまっているが。

おわり
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