霊感令嬢の視る仕事。〜視るだけの楽なお仕事?視るだけです厄介事はお断りします!〜

たちばな樹

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プロローグ

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「うぇぇーーん」
「どうしたんじゃい?」
「ヒック!  う、ウソ言っちゃダメっ、て」


幼い私が泣き喚く傍らに、跪いて目線の高さまで身を屈めてくれた初老の紳士。

家の壁に飾られた姿絵と同じ姿のその紳士はこの男爵家の先代の領主であり、私の祖父でもある。

「アイツは頑固だからな。娘の言葉に耳を傾けないなんて、育て方をまちがえたわい。まったく誰に似たんだか」
「父様のこと悪く言わないで!わっ、私がわるいの!また困らせること言ったから!」
「じゃがなぁ。娘が泣いとるのに理解せんとは」


父様を悪く言われたくなくて、涙をグッと堪えた。口元をギュッと引き締めたが、堪え切れずプルプルしてしまう。
目元が真っ赤になり涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を手拭きで拭きながら祖父を見つめた。

父様と同じ髪色と瞳。
だいぶ白髪で色が白くなっているが優しい色合いで大好きな色だ。

泣いている私をいつも慰めてくれる祖父様。
大きく見開いた瞳は祖父様を見つめるが、その瞳に映るのは、裏庭の木々が映り込んでいるだけ。


「どうして私だけなのかなぁ」


私が生まれる前に亡くなった祖父は、今私の目の前で困惑しながら顎髭を撫でている。

そう、祖父様はーー



ーー私が生まれる前に亡くなっているのだ。


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