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2章
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しおりを挟むメルは顔が広いらしく、すぐに宿が決まった。
今日泊まる宿は案外広く綺麗なところだ。
温泉もあるらしく宿は人で賑わっている。
メルは昔、イリスと宿泊したことがあるらしい。
惚気を延々と聞かされ辟易した頃ようやく解放され広い温泉に浸かって疲れをとり今日は眠りについた。
その日、俺は夢を見た。
あの双頭の狼が殺される夢を…
商人から引き渡された屋敷で顔は見えないが何か不思議な力を宿した首輪を無理矢理着けあの狼を銃を持って追い掛ける人…
あの狼は逃げるが何か様子がおかしい。
やはりあの首輪のせいだろうか?
逃げて逃げてそれでも逃げ切れず追い詰められ銃殺される。
「やめろーー!!
っ…はぁ、はぁ…」
俺は思わず叫び目を覚ます。
「ん…ギル…?
どうした?
嫌な夢でも見たか…?」
俺の声で目を覚ましたのか心配そうに俺のベットに移り汗を拭いながら聞いてくれるメルに俺は俯き首を振る。
これは夢だ…夢であってほしい…。
これから起こる未来だなんて思いたくない…
「ギル、大丈夫だ。
ギルが寝付くまでここにいる。
さ、もう一度おやすみ。」
俺を胸にもたれ掛からせ背中を撫でて眠るように促してくれる。
俺は少し落ち着きうとうとし始める。
もうすぐ6歳だというのにちょっと恥ずかしい光景だ。
でもこれもこの旅で最後だ。
今日くらいはいいだろう。
俺は自分にそう言い聞かせ眠りについた。
翌朝起きるとそこにはもうメルの姿はなく、窓から外を覗くとメルが軽い運動をしていた。
「ぉ、ギル起きたか。
おはよう」
「お父様、おはよう…
僕も一緒にやる!」
少し気まずかったがすぐに動きやすい服に着替え下に降り、日課の稽古をする。
メルとこうやって手合わせするのもこの旅で暫くはお預けだな。
俺は気合いを入れてメルと対峙し、稽古を終えた後、温泉に入って汗を流し朝食をとるため食堂へ向かう。
朝食をとりながら俺はメルに質問する。
「お父様…
あの狼…売られるんだよね…?」
「そうなるだろうね。
密猟ならば止められるが、今回はその証拠がない。
ギル、助けられない生命だってある。
今回は部が悪い。
諦めなさい。」
「お父様は聞き分けがいいんだね。
僕は…僕は知ってしまった以上助けたい…
それが例え違法な行為だとしても…」
「ギル!
そんなこと軽々しく言うんじゃない!
ギルにはまだわからないかもしれない。
でもあの人達もお仕事でやってることだ。
子供のギルが手出ししていい領分じゃない。」
「わかってるよっ!
わかってるけど、でもっ…」
メルが言ってることは正しいと思う…
でもそれじゃ納得いくわけなんかない。
メルがダメと言っても俺は引けない…引きたくない。
でも今の俺に何が出来る…?
何も…何も出来ないんじゃないか…?
俺はあの夢が頭から離れなかった。
メルとの口論後俺は黙り込み、宿を出てウェトリスを目指す馬車の中でも一言も発しなかった。
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