ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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楽の戦士トーチの章

184.楽し気な女-19

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「……なんというかその、最近の冒険者でどういう稼ぎが流行っているのかとか、君の言う斡旋所が今どういう風に冒険者を動かしているのかとか、そういう直接迷宮に潜らない人たちも含めた業界の流行りみたいなものが知りたいんだよ」
 質問の裏には、もちろん今朝見た冒険者たちの事がある。
 ミルノはすぐに返事をせずに黙ってじっと俺の方を見返して来た。
 何かまずいことでも言ったのだろうか。
 ただ、ギルド界隈の情報に詳しそうな人というのが現状彼女しかいないので、とにかく聞いてみるしかない。
「私自身が細かく業界事情を把握しているわけではありませんが」
 やがて口を開いたミルノはそう前置きしてから
「情報自体は取れると思います」
「そうなんだ」
 何の手掛かりにもならないわけではないようで、とりあえずはよかった。
「ただ、教えるかどうかは貴方の事情に寄りますね。何かあったのですか?」
「具体的に何かあったわけではないんだけど――」
 俺は今日迷宮で見た、不審な冒険者たちの事を掻い摘んで話した。
「……明らかにその場にそぐわない、レベルと装備をした冒険者ですか」
「うん」
 そいつらの態度がお世辞にもよくなかったことについては、少なくとも今は余計な事だと思ったので伝えなかった。
「俺の目から見て、あのぐらいの冒険者が、中途半端に危険な場所をうろつく理由がわからないんだ。ただ俺も業界の情報に詳しいわけじゃないから、その辺りのことを知りたいんだよ。どういう得があって動いているのかわからない奴の対応は、結構気を使うからさ」
 今後もまたすれ違う可能性もあるし、その時に困りたくない。
「なるほど。一応別部署の知り合いがいますので、聞いておきましょうか」
「助かる」
「まあ、気が向いたらですが」
「はは」
 まあ、実際今日がほぼほぼ初対面で、そこまでの信用もないので、それは仕方がない。
 期待しないで待つことにする。まったく何の手がかりもないよりは全然いい。
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