ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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楽の戦士トーチの章

196.変化と楽

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「なんだか懐かしいですね」 
 地面に浅く穴を掘りながら、メリルがポツリとつぶやく。
「うん」
 俺は頷きながら、黙々と同じように穴を掘っていた。
 狩りが始まるとお互い必要以上に話したりはしなくなるものだが、この作業はいつにもまして無言になる。
 この辺りの夜甲虫は、隙間や狭い場所に群生していて、戦闘に適した所にはあまり出て来ない。
 レベルに関係なく、以前と同じように掘った穴に集めて落して、まとめて焼くのが効率的になる。
「じゃあちょっと行ってくるよ」
 穴を作ってから、俺はメリルに断って夜甲虫を誘い出すためにその場を離れようとする。
「あ、私も行きます」
 すると、メリルが手を挙げてそれについてきた。
 何をしに来るんだろう、と一瞬思って、今はメリルのレベルもかなり高いのをすぐに思い出す。
 以前は夜甲虫の一撃に耐えられるだけの体力がなかったから、基本待機で魔法を使うのに専念してもらい、誘い出すのは俺の役目だったわけだけど。今はメリルのステータスも十分なので、そんな役割分担も必要ない。
 なら二人でやった方が効率的である。
 ダンジョンの壁に張り付いているやつや、壁と壁の間に挟まっている群れを突っついて、穴の方へと誘導する。
 ある程度数が集まったら、後はメリルが一気に倒すいつもの流れ。
 魔法の範囲が広がっているので、以前のように焼け残らないように頑張って密集させる必要がないし、一度の集める数もかなり増やせるので、作業の難易度は大幅に下がった。
 しばらくこの辺を放置していたせいか、夜甲虫の数自体もかなり多くなっていて、見つけるのにも苦労しない。
「あ、」
 かなり気を抜いていても平気だが、一応気をつけないといけない事として、
「これは連れていっちゃダメですね、多分」
 体の大きさや色味が違う、以前メリルが発見した女王と思われる個体に関してだけは、誤って倒してしまわないよう、遠ざける必要がある。
 一度はこれ以上の進歩はなさそうと思った狩りだったけど、やり続けているとやっぱり何かしらの変化はあるんだなと、なんとなく感慨深い気持ちになる。
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