ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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楽の戦士トーチの章

210.本来楽に座れない場所

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 狩りまでには、いつもより少し時間に余裕があるので、今日はギルド――いや斡旋所近くの酒場で食事を取ることにした。
 夜は一番混み合っているし、酒が入った客も多くて、とても食事を取るどころではないのだが、もしかしたら知りたい情報が、周囲の冒険者から零れてくるかもしれないと思ったからだ。
 不審な冒険者による組織的な動きが、もし最近起こったものなら、それによって何かしらの変化があるはず。
 広いようで狭い業界なので、一部の微細な変化が全体に影響を与えやすい。
 狩りの相場やトレンドなんかもその一つ。 高い精度の情報は期待していないが、雰囲気だけでも知れたらよさそうだ。
 冒険者をやるならこういう情報収集は常にしていた方がいいのだが、流行り廃りにまったく縁のない隙間産業的な事ばかりやっていると、怠りがちになる。厳密にはそっちに時間を取られるロスの方が大きくなりがち、と言った方が正しいか。
 斡旋所近辺の酒場は、行儀の悪い場所だし、飯も自分で作るほどには美味しくも安くもないので、用がな無ければ積極的には行かなくなる。
 いつぶりになるかわからない酒場の中に入った。
「……?」
 その瞬間えもいわれぬ違和感を覚えた。
 入り口のスイングドアを抜けた瞬間、がやがやとした人の声に食器を打ち合う音が響き渡るという、大体イメージ通りの手狭な空間が広がっている。
 以前来た時から、特に内装が変わったとかそういうことはない。
 ただ、少し物足りないというか。
 なんだろうと思いながら店内を進んで、スムーズにカウンター席に座ったところで、その違和感の正体に気付く。
 一番混み合う時間帯なのに、席が空いている。大体待たされるか、立って食わされるとか、何もしていないのに関係もないところから急に殴られたりとか、そういうのが普通の場所だったはず。
 それでも見た目に人は十分入っているとはいえ。
 一番混み合うはずの時間帯でも、人と体が擦れ合ったりしないし、罵声もないというのは、快適ではあっても物足りない気がする。
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