ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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楽の戦士トーチの章

236.詐欺ならもっと楽な方法を選ぶ

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「はい」
 声は入り口側、俺の斜め後方から聞こえてきた。
 てっきり奥に控えているものと思っていたので、少し驚きつつ振り返る。
 彼は一部吊るして展示してある盾と盾をのれんのようによけながら、軽く身を屈めて姿を現す。
「ああ、貴方は」
「どうも。約束の報告をしに来ました」
 というと、彼は少し安らいだ表情を浮かべた。
「そうですか、いやそれはよかったです」
「まだ何も言ってませんけど」
 彼の奇妙な反応に戸惑っていると、彼は軽く手を横に振って訂正した。
「いえね、あの後知り合いに騙されてるんじゃないかとか、いろいろ言われたもので。日が経つに連れて、もしかしたらそういう事もあるのかもなあとか、思い始めていたものですから」
「ははは」
 世間的に冒険者というのは、それ自身も名乗る奴も今一歩信用度にかけるという評価が普通だ。
 体よく買い叩かれて持ち逃げされたのではないか、と言う人がいてもおかしくはない。
「もし騙したりするつもりなら、もっと大胆に買い付けますし、半金ですら置いていかないですよ。『実質的には儲けになります』みたいな事を言って煙に巻いたりして、持ち逃げすると思います」
「……お詳しいんですか?」
 そういう現場を見たことは多少あるが、
「全然、詳しくはないです。ただ適当に思いついただけで。ただ、詐欺って巧妙にするほどの労力をかけると、詐欺の意味がなくなるから。俺ならなるべく、安直で適当な方法を取るかなと」
 その瞬間は楽そうだが、継続的な利益ということになると難しそうなので、もちろんやる気はない。 
「そう言う考えもありますか。勉強になりますね」
 妙に感心したように店主は頷いてくれるが、今日はそういう話をしにきたわけではない。
「ええっと、それで前買った盾のことなんですけど……」
 話題を切り替えると、店主はすぐに反応した。
「ああ、それなんですけどね。冒険者が使うような物になっていないと、指摘を受けた後自分なりに、いろいろと考えて改良したものがあるんですよ」
「え」
 早口にまくしたてながら、俺を置いてきぼりにして、その改良した盾を持ち出そうとしてくる。
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