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かむづまり2──白露の里で君と
プロローグ
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俺の幼い頃からの大親友『月見里陽斗』は、黒髪に空みたいな青い目を持っている。
「まるで晴れた日の空みてぇ。良いな、お前の目!」
「……え…っ?」
その目を見た瞬間、気が付くと話し掛けていた。
俺を見上げてきた目に、心を囚われていた。
そうしてその日から、俺と陽斗は、なんでも話せる大親友になった。
俺は陽斗といつも一緒だった。いつでも一緒に居た。
いろんな体験を経て、互いのことを知り合った。
喧嘩したり、仲直りしたり、好きなものを共有し合ったり。
共に過ごした日々を、笑ったり、泣いたり、怒ったりして。
そうやって知れば知るほどに、俺は陽斗のことが大好きになっていった。
「雄二君、陽斗、おやつよ」
陽斗の父母もいつしか俺のことを、陽斗の兄弟みたいに扱ってくれるようになった。俺は陽斗も、彼の両親も、本当に大好きだった。
彼らの住む家は、自分の家以上に居心地良かったし、ガキの頃はマジで、『この家の子供になりたい』などと、馬鹿なこと考えてたくらいだ。
陽斗と親友になってから、俺には大切な宝物が出来た。
本人には自覚が無いだろうけど、陽斗を良く知らない周囲の奴らから彼は、表情の乏しい愛想のない奴だと思われていた。
きっと幼い頃、散々、目のことで嫌な想いをしてきたせいだろう。陽斗はあまり親しくない奴に対して、無表情を見せることが多かったのだ。
だけど一旦、親しくなれば、その印象が一変する。
元々、可愛らしい顔をした陽斗だが、笑うと本当に可愛いのだ。まあ、男に『可愛い』なんて単語使うのもなんだけど、俺には他に思い付く言葉も表現のしようも解んねえから仕方がない。
そして、ガキの頃はそれが特に顕著に出ていて、彼の両親以外では、俺しか陽斗の笑顔を見た奴はいなかったほどなのだ。
「雄ちゃん、友達になってくれてありがと」
「……………ッ」
俺の前でだけ笑う陽斗。
ガキの頃の俺には、それが何よりのご褒美で。
彼の見せてくれる笑顔は、なんだか物凄く特別なものに思えた。
「ハル、苛められたら言えよな。俺が守ってやっから!!」
「大丈夫だよ。ありがと、雄ちゃん!」
幼い頃に交わしたその約束は、今も俺にとって護るべき大切なものだ。
何かあったらきっと駆け付ける。そして何があっても、陽斗のことを守ってやる。
まるで兄貴にでもなった気分で、俺はそんな誓いを胸に秘め続けた。
「大好きだよ、雄ちゃん!」
「俺もハルのこと、大好きだ!」
陽斗が笑って、俺も笑った。
そして彼の見せてくれるその笑顔が、俺にとって何より大切な宝物になったのである。
出会いから10年が経ち、高校生になった初めての夏休み。
本当は色々な計画を立てて、俺は、陽斗と遊びに行くつもりだったのだけれど。
「親戚の家へ遊びに行くことになって…」
「……そっか。楽しんで来いよ、陽斗!」
突然、遠い親戚から誘われたとかで、あまり乗り気でなさそうな様子のまま、陽斗はどこだか知らない田舎へ遊びに行ってしまった。
陽斗は俺に着いて来て欲しそうだったのに、俺は遠慮して彼を1人で行かせてしまったのだ。
本音を言うと俺だって、ホントは彼に着いて行きたかった。でも、さすがに図々しいかな?と考えて、一緒に行くとは言い出せなかったのだ。
「陽斗………ッ!?」
強引にでも着いて行くべきだったと、後悔した。
もしくは『行くな』と、陽斗を引き止めていれば。
今更、どれほど悔やんでも、後の祭りだ。
もう、どうやったって、取り返せないし、時も戻せはしない。
楽しいはずの夏休み。
そして再び始まる新学期を迎えても、陽斗は俺の前に帰っては来なかった。
「行ってくるね、雄二」
あの日交わした会話を最後に、俺が陽斗の声を聴くことはなくなった。
遠い親戚の家へ遊びに行ったきり、陽斗の行方は杳として知れなくなったのである。
「まるで晴れた日の空みてぇ。良いな、お前の目!」
「……え…っ?」
その目を見た瞬間、気が付くと話し掛けていた。
俺を見上げてきた目に、心を囚われていた。
そうしてその日から、俺と陽斗は、なんでも話せる大親友になった。
俺は陽斗といつも一緒だった。いつでも一緒に居た。
いろんな体験を経て、互いのことを知り合った。
喧嘩したり、仲直りしたり、好きなものを共有し合ったり。
共に過ごした日々を、笑ったり、泣いたり、怒ったりして。
そうやって知れば知るほどに、俺は陽斗のことが大好きになっていった。
「雄二君、陽斗、おやつよ」
陽斗の父母もいつしか俺のことを、陽斗の兄弟みたいに扱ってくれるようになった。俺は陽斗も、彼の両親も、本当に大好きだった。
彼らの住む家は、自分の家以上に居心地良かったし、ガキの頃はマジで、『この家の子供になりたい』などと、馬鹿なこと考えてたくらいだ。
陽斗と親友になってから、俺には大切な宝物が出来た。
本人には自覚が無いだろうけど、陽斗を良く知らない周囲の奴らから彼は、表情の乏しい愛想のない奴だと思われていた。
きっと幼い頃、散々、目のことで嫌な想いをしてきたせいだろう。陽斗はあまり親しくない奴に対して、無表情を見せることが多かったのだ。
だけど一旦、親しくなれば、その印象が一変する。
元々、可愛らしい顔をした陽斗だが、笑うと本当に可愛いのだ。まあ、男に『可愛い』なんて単語使うのもなんだけど、俺には他に思い付く言葉も表現のしようも解んねえから仕方がない。
そして、ガキの頃はそれが特に顕著に出ていて、彼の両親以外では、俺しか陽斗の笑顔を見た奴はいなかったほどなのだ。
「雄ちゃん、友達になってくれてありがと」
「……………ッ」
俺の前でだけ笑う陽斗。
ガキの頃の俺には、それが何よりのご褒美で。
彼の見せてくれる笑顔は、なんだか物凄く特別なものに思えた。
「ハル、苛められたら言えよな。俺が守ってやっから!!」
「大丈夫だよ。ありがと、雄ちゃん!」
幼い頃に交わしたその約束は、今も俺にとって護るべき大切なものだ。
何かあったらきっと駆け付ける。そして何があっても、陽斗のことを守ってやる。
まるで兄貴にでもなった気分で、俺はそんな誓いを胸に秘め続けた。
「大好きだよ、雄ちゃん!」
「俺もハルのこと、大好きだ!」
陽斗が笑って、俺も笑った。
そして彼の見せてくれるその笑顔が、俺にとって何より大切な宝物になったのである。
出会いから10年が経ち、高校生になった初めての夏休み。
本当は色々な計画を立てて、俺は、陽斗と遊びに行くつもりだったのだけれど。
「親戚の家へ遊びに行くことになって…」
「……そっか。楽しんで来いよ、陽斗!」
突然、遠い親戚から誘われたとかで、あまり乗り気でなさそうな様子のまま、陽斗はどこだか知らない田舎へ遊びに行ってしまった。
陽斗は俺に着いて来て欲しそうだったのに、俺は遠慮して彼を1人で行かせてしまったのだ。
本音を言うと俺だって、ホントは彼に着いて行きたかった。でも、さすがに図々しいかな?と考えて、一緒に行くとは言い出せなかったのだ。
「陽斗………ッ!?」
強引にでも着いて行くべきだったと、後悔した。
もしくは『行くな』と、陽斗を引き止めていれば。
今更、どれほど悔やんでも、後の祭りだ。
もう、どうやったって、取り返せないし、時も戻せはしない。
楽しいはずの夏休み。
そして再び始まる新学期を迎えても、陽斗は俺の前に帰っては来なかった。
「行ってくるね、雄二」
あの日交わした会話を最後に、俺が陽斗の声を聴くことはなくなった。
遠い親戚の家へ遊びに行ったきり、陽斗の行方は杳として知れなくなったのである。
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