名探偵エリカの不完全事件簿

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第一話 ミケ

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ある日の午後、エリカの事務所にいつものように勇気がやってきた。

「エリカ、今日も事件の進展は…」

だが、彼がドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、エリカが膝の上で一匹の猫を抱えている光景だった。

「え…ええっ!?」
勇気は驚きのあまり、足を一歩踏み外してドアの前で立ち止まった。

エリカは無邪気に猫の毛を撫でながら、顔を上げてにっこり笑った。
「ああ、勇気!おかえり。今日は新しい助手を迎えたんだよ。」

「新しい助手?」勇気は目を瞬かせて言った。
「でも、それは…猫じゃないか!」

「うん、ミケ。」
エリカは猫を抱きかかえながら、自信満々に答えた。

「ミケ?君が猫を…飼ってるのか?」
勇気は信じられないというように言った。

「いや、飼ってるわけじゃないけど。」
エリカは猫を少し持ち上げて、
「この子、なんだか気に入っちゃったんだ。」と笑顔を見せた。

「それって…野良猫じゃないのか?」
勇気はさらに驚いて言った。

「野良猫?違うよ。ちゃんと首輪つけてるじゃない。」
エリカは猫の首輪を見せた。
「ほら、名前と電話番号も書いてある。」

「え!それって…だれかの飼い猫じゃないですか?」
勇気は不安そうに言った。

「うーん、どうかな。でも、私に懐いてるしいんじゃないかな。あ、でも君にこの猫を渡そうかな。」
エリカはにっこりと微笑んだ。

「え?」
勇気は驚きながら尋ねた。
「猫を…僕に?」

「もちろん!」
エリカは真顔で言った。
「かわいいけど少々匂うからねこいつ」

「えっ、ちょっとひどくないですか!ミケちゃんがかわいそうですよ」

「ふふ、冗談だよ。」
エリカは猫を抱きしめるように言った。
「いい匂いだ。それにこの子、意外と賢いんだ。君をクビにしてこの子を助手にする日も遠くはない」

「すぐクビをちらつかすな、この人…」
勇気はため息をつきながら言った。
「はやく交番とかに届けましょ?」

「いやだ!だれにも譲らないよ。」
エリカは猫を撫でながら笑顔を見せた。
「ミケは、私にぴったりの助手だもん。」

その時、事務所のドアが勢いよく開き、依頼者が顔を出した。
「す、すみません!私の猫が…」

「また猫か!」
エリカはすぐに立ち上がり、ミケを大切に抱きかかえた。
「どうしたんですか?」

「実は、私の猫が行方不明で…」
依頼者は涙ぐみながら話し始めた。

「猫の行方不明?それは大問題ですね!」
エリカは真剣な顔をしてうなずいた。
「君の猫、どんな猫なんですか?」

「ええと…白くてふわふわして、丸くて…首輪に名前ついているんですけど」
依頼者は少し困ったように言った。

「それって…ミケじゃないか!」
エリカはミケを見て、目を輝かせながら言った。

「え、でも…私の猫をどうしてあなたたちが。」
依頼者は驚いたように言った。

「ふむ…そうだね。でも、ミケは私の猫だから渡さないぞ!」
エリカは強く言い切った。

「それ…依頼者の猫ですけど…」
勇気が心配そうに言った。

「うーん…」
エリカは少し考えてから、
「では、この猫が君のじゃないことを証明して見せる!」
と得意げに言った。

依頼者は困惑した表情を浮かべた。
「証明って…?」

「そう!ミケには、君の飼い猫にはできないすごい特技があるんだ!」
エリカは目を輝かせて言った。

「え?特技?」
依頼者はびっくりして聞いた。

「もちろん!ミケには、例えば…猫のくせに、ピアノが弾けるんだ!」
エリカは胸を張って言った。

「ピアノ…?」
依頼者は驚きながら言った。

「うん!ほら、見てて!」
エリカはピアノの前にミケを座らせ、猫にピアノの鍵盤を触らせようとした。

だが、ミケは鍵盤の前で寝転んで、まったく動こうとしない。

「ミケ…!」
エリカは何度も呼びかけたが、ミケはまったく反応しなかった。

「な、なんで動かないんですか?」
依頼者が困った顔で言った。

「おお、失礼!ミケは気分屋だからね。」
エリカは照れ笑いを浮かべながら言った。

その時、依頼者が言った。
「実は、うちの猫にはもっとすごい特技があるんです。」

「お、何だ!教えてくれ!」
エリカは興奮した。

「うちの猫、鍵を開けるんです。」
依頼者は笑いながら言った。

「鍵を開ける!?それはすごい!」
エリカは驚きの声をあげた。
「じゃあ、ミケもそれを試してみよう!」

「なんで…」と勇気は思ったが、子供のようにはしゃぐエリカを見ていると口には出せなかった。

エリカは鍵を持ってきて、ミケに見せる。が、ミケはそのまま眠っているだけだった。

「うーん、どうやらミケも鍵を開けるにはちょっとしたコツがいるらしいな。」
エリカの真剣な口調に依頼者は微笑を浮かべた。

「それじゃあ、次の特技!」
エリカはまた別のものを取り出した。
「ミケ、君は食いしん坊だよね!」

ミケはやっと目を覚まし、食べ物を目の前に差し出されると、興味津々でそれにかぶりついた。

「おお!さすがだな!」
エリカは満足げに言った。

「特技ではないですよね」と依頼者が微笑を浮かべながら勇気にささやく。

「じゃあ、最後に…ミケの一番の特技を見せてあげます!」
エリカは自信満々に言った。

「一番の特技?」
依頼者と勇気は興味津々で見守った。

「ミケ、君の一番の特技は…人を癒すことだ!」
エリカは深刻な顔で言った。

ミケはそれを聞いて、エリカの膝におとなしく座り、まるで人間のようにエリカを見上げて「ニャー」と鳴いた。

「うーん…」
エリカはちょっとしょんぼりした表情で言った。
「やっぱり、君は最高の助手だね。」

しかし、依頼者はしっかりとその場にいた猫を見て、やっと決心がついたように言った。
「やっぱり、この猫は私の猫です。返してください。」

エリカは一瞬、しょんぼりした顔をして、ミケを抱きしめながら言った。
「分かったよ…でも、君にはすごい特技がたくさんあるから、どこに行っても大丈夫だよね?」

「ミケは私の猫です…」
依頼者は微笑んだ。

エリカはしばらく黙っていたが、ミケを優しく女性に渡した。
「じゃあね、ミケ。君がどこに行っても、私は君を忘れないよ…!」

ミケは女性の腕の中で満足げに丸くなり、エリカの膝を離れていった。

エリカは静かにため息をつき、勇気に向かって言った。「ペットショップ行かない?」
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