時計仕掛けの遺言

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第3章 時計仕掛けの謎

第3部 過去の影

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装置の針が止まり、また新たなシンボルが浮かび上がると、広間に一層の静けさが訪れた。ジュリアンはそのシンボルをじっと見つめ、頭の中で何度もその形を繰り返しながら、何かが引っかかる感覚に襲われた。

「これは……」
ジュリアンはつぶやき、指先でそのシンボルをなぞった。
「見覚えがある。」

「何かの記号?」
エレノアが近づき、ジュリアンの肩越しに覗き込んだ。

「いや、もっと深い意味がある。」
ジュリアンはそのシンボルを指で押さえながら、額に手をあてて考え込む。だが、しばらくして、彼はゆっくりと振り返り、エレノアに向き直った。
「エレノアさん、あなたの家族に、もしかしたらこの記号に関係のある出来事があるんじゃないか?」

「私の家族……?」
エレノアは驚きの表情を浮かべた。
「それはどういう意味?」

ジュリアンは一歩後退し、再び装置の全体を見渡す。
「クラレンスが遺したこの装置、最初のメッセージも言っていた『最初の罪』。それがもし、あなたの家族に関係しているとすれば……」

「ちょっと待って!」
アリスが急に声を上げた。
「あの記号、もしかしたらあの人に関係があるんじゃない?」

「誰?」
ジュリアンが振り向くと、アリスは躊躇いながらも言った。
「クラレンスの最初の妻――あなたの母親。」

その言葉に、エレノアは目を見開いた。
「母の……?」

ジュリアンは静かに頷き、
「あなたが言っていた『血の契約』が、この記号と関係している可能性がある。だから、過去の出来事を掘り下げていく必要がある。特に、あなたの母親に関することだ。」

エレノアは数秒間言葉を失い、壁に掛けられた家族写真をじっと見つめた。そこに写っているのは、若い頃の母親、クラレンスとともに微笑む姿。だが、その写真の隣には、あまり触れたくない記憶があった。

「母は……私が幼い頃に亡くなったわ。」
エレノアはようやく口を開いた。
「父がよく話していたけど、あまり詳しくは聞いていない。ただ、母の死は事故だって言っていた。」

「事故?」
ジュリアンが反応した。
「どんな事故だった?」

エレノアはしばらく黙った後、深いため息をつきながら言った。
「父は言いたがらなかったけれど、どうやら母の死はただの事故じゃなかったらしい。クラレンスが言っていたのは、母が何かに巻き込まれていたということ。『家族を守るためにあれを隠した』って。」

「それは一体……?」
ジュリアンはその言葉にさらに食いついた。
「隠された何かがあったと?」

エレノアは目を伏せ、声を潜めて続けた。
「母は、父が知らないところで何かを追いかけていた。私が子供だったから、詳しいことは分からなかったけど、母が亡くなった後、父はしばらくの間、何かを探している様子だった。まるで母の死を引き起こした何かを追っているかのように。」

ジュリアンはその話を静かに聞きながら、次第に心の中で繋がりが見えてきた。クラレンスが言う「最初の罪」、そして母親の死に関わる何か。それが一族の秘密に繋がっているということだ。

「エレノアさん、あなたが言うように、父親が隠したものがあるとすれば、それが『血の契約』の一部かもしれない。」
ジュリアンはゆっくりと語りかけた。
「そして、その『契約』が今、あなたの前に現れている。」

その時、装置が再び微かに音を立て、針が動き始めた。新たなシンボルが現れ、今度は明らかに「母親」の象徴を含んでいるように見えた。

「この記号……!」
エレノアは震える声で言った。
「これ、母が追い求めていたものに関係している!クラレンスが言っていた通り、母は何かを見つけていたんだ。」

ジュリアンはその言葉を繰り返すように噛みしめた。
「だからこそ、装置が示す『最初の罪』は、母親の死と何か関係があるはずだ。」

アリスはその場の空気を切り裂くように口を開いた。
「でも、どうしてそれが今、私たちに影響を与えているの?どうしてクラレンスが死んだ後になって、こんな装置が動き出したの?」

ジュリアンは少し間を置いてから言った。
「それは、クラレンスが最終的に家族に真実を伝えようとしたからだろう。自分が隠していたもの、家族の過去に関わる罪を。」

その瞬間、広間の空気が張り詰め、まるで何かを予感させるような気配が漂った。
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