時計仕掛けの遺言

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第5章 鏡の中の真実

第1部 映し出された罪

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エレノアが鏡の前に立つと、それが静かに光り始めた。周囲の暗闇が吸い寄せられるように収縮し、鏡の中に新たな世界が現れた。それは、クラヴェン家の過去を垣間見る窓のようだった。

「これは……一体……?」
エレノアの声はかすかに震えていた。

ジュリアンは彼女の隣で冷静に状況を見つめていた。
「どうやら、この鏡はクラレンス氏が仕掛けた最後の装置のようだ。過去を映し出し、隠された真実を暴くためのものだろう。」

鏡の中には、若き日のクラレンスとエレノアの母親が映し出されていた。二人は館の廊下に立ち、何かを激しく議論している。その表情は険しく、言葉を交わすたびに緊張が高まっているのが伝わってきた。


母親:「クラレンス、これ以上続けるのは間違っているわ。この契約は私たちを守るどころか、滅ぼしているのよ。」

クラレンス:「君にはわかっていない。クラヴェン家が生き残るためには、この契約を守るしかないんだ。」

母親:「守る?そんな言葉で命を犠牲にしていることを正当化できるとでも思っているの?」

クラレンス:「私はこの家族を守るために最善を尽くしている。それを理解してくれ。」


エレノアはその場面をじっと見つめながら、唇を噛み締めた。
「母は……契約に反対していたのね。」

「彼女は一族の中で異質な存在だったのかもしれない。」
ジュリアンは冷静に分析した。
「この契約の本質を知り、それに疑問を抱いた最初の人物だったのだろう。」

場面は変わり、母親が館の中を一人で歩いている光景に切り替わった。彼女の手には古びた鍵が握られており、慎重に廊下を進んでいく。その視線は周囲を警戒し、何かを探しているようだった。

「何を探しているの……?」
アリスが低い声で呟いた。

「おそらく、契約の証拠だろう。」
ジュリアンが答えた。

母親はやがて一つの部屋に辿り着き、鍵を使って扉を開けた。中には古びた木箱が置かれており、彼女はそれを慎重に開けた。その中には一枚の文書が収められていた。彼女はその文書を読み、目を見開いた。


母親:「これが……契約の証拠……」


しかし、その瞬間、背後に影が現れた。母親が振り返ったところで場面は途切れ、鏡は静かに闇に戻った。

「誰かが……母を止めた。」
エレノアは震える声で呟いた。
「それが……彼女の死に繋がったの?」

「可能性は高い。」
ジュリアンは低く答えた。
「彼女は契約を暴こうとした。そのために命を落としたのかもしれない。」

「そんな……」
アリスが泣きそうな声で言った。
「お母さんはただ、家族を守ろうとしただけなのに……」

エレノアは唇を引き結び、鏡の中の闇をじっと見つめた。
「これが、母の最期だったのね。父が守ろうとしたのは……家族じゃなくて、この契約だった。」

鏡の光は再び変わり、クラレンスと他の一族の人物が写し出された。それは古い書斎のような部屋で、重厚な机を囲んで話し合っている。


一族の男:「これが最後の契約だ。これを守れば、クラヴェン家は安泰だろう。」

クラレンス:「だが、その代償は……」

一族の男:「必要な犠牲だ。繁栄には血が必要だ。それを忘れるな。」


「必要な犠牲……?」
エレノアは目を見開いた。
「一族全体でこの契約を守るために犠牲を強いてきたの?」

「そうだ。」
ジュリアンは眉をひそめながら言った。
「クラヴェン家は繁栄を続けるために、家族の誰かを犠牲にしてきた。そして、その最後の犠牲者が……君の母親だった。」

鏡の光が再び収まり、エレノアたちの顔が映し出された。彼女は拳を固く握りしめながら、静かに呟いた。
「これが……クラヴェン家の本当の姿だったのね。」

ジュリアンは頷き、冷静な声で言った。
「これが『最初の罪』だ。そして、クラレンス氏は君たち一族にそれを直視させるためにこの装置を作った。」

「でも……その罪をどうすれば……?」
アリスが怯えた表情で尋ねた。

「その答えは、この鏡の先にあるかもしれない。」
ジュリアンは鏡を指差しながら言った。
「ここから先は君たち自身の決断だ。」

エレノアは一歩前に進み、鏡を見据えた。
「母の犠牲を無駄にしないために、私は進むわ。この真実を暴いて、この呪いを終わらせる。」

彼女の目には、過去に縛られない強い決意が宿っていた。
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