【完結】生贄にされた私が竜王陛下に溺愛されて、陥れた妹たちにざまぁしたら、幸せすぎて困ってます

夢喰るか

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第六章 新しい幸福

過去と未来の交差点で

 夏が終わり、秋が訪れた。
 アリアーナのお腹は、さらに大きくなった。
 妊娠九か月。
 もう、長く歩くこともできない。すぐに息が切れる。
 けれど、不思議と幸福だった。

「もうすぐ、会えるね」

 アリアーナは、毎日自分のお腹に向かって語りかけた。

「あなたのパパは、世界で一番強くて優しい竜よ。そして、あなたを誰よりも愛してくれる」



 竜王は、アリアーナに付きっきりだった。

「お仕事はいいんですか? 私は大丈夫ですよ、クロエもいてくれるし」

 アリアーナがそう言っても、竜王はかたくなに首を横に振った。

「お前と子供の方が大切だ。他のことは、後回しでいい」

 そして、毎日アリアーナの世話を焼いた。
 食事を運び、本を読み聞かせ、背中をさすり、足をマッサージした。

「やりすぎです」

 アリアーナが笑うと、竜王は真面目な顔で言った。

「これでも足りないくらいだ」

 その姿は、千年を生きる竜王には似つかわしくない。
 けれど、アリアーナには愛おしかった。



 ある夜、アリアーナは夢を見た。

 母の夢だ。
 うっすらとしか記憶のない、肖像画でしか見たことのない母が、アリアーナを抱きしめてくれている。

「アリアーナ、今までよく頑張ったわね」

 心にしみ入るような優しい声が、アリアーナに呼びかける。

「あなたは、幸せをつかんだのね」
「お母様……。ごめんなさい、私、お母様の形見を捨ててしまった」
「いいのよ、そんなことは。物は、物でしかない。心は――愛は、永遠に残る」

 母の手がアリアーナの髪を何度も撫でる。まるで幼子おさなごに対するかのように。

「あなたは、立派な女性になった。そして、もうすぐ母親になる。私はあなたを誇りに思うわ」

 母は、微笑んだ。

「あなたと、あなたの子供に……私の孫に、心からの愛を送るわ」
「ありがとう、お母様……」

 目が覚めた時、アリアーナの頬は涙で濡れていた。

 けれど、それは悲しい涙ではなかった。
 本当の母と交流できたような気がした。認めてもらえた、と感じた。
 アリアーナの母の思い出はおぼろげで――今まで一度も、夢に見たことさえなかったのだ。

「どうした」

 竜王が、心配そうに声をかけてきた。

「何でもありません。ただ……母の夢を見ました」
「そうか」

 竜王は、彼女を抱きしめた。

「きっと、お前の母も喜んでいるだろう。娘が幸せになったことを」
「はい」

 アリアーナは、竜王の胸に顔を埋めた。

「私、幸せです」



 そして、ついにその日が訪れた。
 妊娠十二か月目に入ってまもない、満月の夜。

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