サルワライ

ten KAI

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サルワライ

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僕はいつも友達に、「のんきそうだね」とか、「何も考えてなさそうだね」とか冗談で言われる。

そんなことはない、いつも僕は考えているのだ。
宇宙の誕生から、終焉まで、ここを流れる川が2つ、3つ峠の先から流れてきてて、この先何十の町をこえて海に出ることを。
それなのにみんなして、僕のことを何も考えていないのんき者だと馬鹿にするのさ。
でもなぜそう言われるのか、僕は見当がついている。

それはこの猿みたいな顔だ。そして誰かと話すときに、自然と笑った顔になってしまうんだ。

困ったな、こればっかりはどうしようも無い、自分では意識せずに出ている天性とも呼べるこの猿顔の笑いは自分では止めようも無い。

そう結論が出たところで、僕は部屋の明かりを消して、ミシミシ音のなる階段を降り、リビングの部屋を通り過ぎ、玄関を出る。

「でかけるの?」とリビングにいた母がドアから顔を出して言った。

「でかけるんじゃない、冒険に行くんだ!」 ぼくは口調を強めて言った。

すると母は、あらそうっと言って、変に笑う。僕はそんな母に何か言ってやりたい。
まあいい、僕の冒険は母には到底理解なんてできやしないんだから。
僕は勢いよく家をあとにした。

僕の冒険に新たな1ページが今日刻まれるのだ。
僕の家を基準にして探検記録をつけている。
いままでの成果では西側の川の先には竹やぶがあり、いかにも何か現れそうな小屋を見つけたこと、
東の家々の犬たちが夕方になると吠え出してお互いに近況報告をし合っていることなどほかにもさまざまな、発見をしてきたのだ。

今日は何を探しに行こう、まだ未到達地の、北方面へ行ってみよう。
母には北にだけ入ってはダメよ、と言われていたが、偉大なる冒険のため、危険はつきものだ。

車庫のシャッターを押し上げ、自転車に乗り込む、ペダルに片足を置き、地面についた足を勢いよく蹴り、駆け出す。

家を出て右に行き、コンビニのある角を右に曲がり、真っ直ぐ突き進む。

次々と迫ってくる信号の数々を赤になる前に渡り切る、まってなんかいられない、黄色になったとしても必ず横断できるだけの足はあるのだ。

そうしてこえた先に、大きなビルの立ち並ぶ帝国へと僕は入り込んでいった。

そうして、自転車から降り、しばらく帝国内を見て回った。

なるほど、と僕は母がなぜ北へ行かせないのかわかったのだ。
この帝国では長い列車に乗せられどこかへ連れ去られていく、黒い服のひとたち、ティッシュをタダで配るいかにも怪しいひとたち、ほかにも金や茶色に染められた髪を持つ者たち、多種多彩な人間たちが生活しているのだ。

「よかったら、どうぞ」とタダで飴を配っている怪しげな人に、飴を差し出され、仕方なしにうけとってやった。
そうこうして歩いて、見て回っていた時、
ある男が僕に話しかけてきた。
「君大丈夫かい」「一人じゃ危ないよ」
その男はブラウンのコートを着て、中には青色の上着、ズボンは黒色、いや薄く青色が見えるズボンを履いていた。

僕は怪しいと思ったが、とりあえずこう聞かれた時の対処法である言葉を口にする。
「お母さんがあっちでまってるんだ」
といって、向かいの大きな店を指さした。
こう言えば大抵の人は去っていく。
連れ去ろうとしていたとしても、保護者とやらを出すと恐れて、にわかに微笑み逃げていくのだ。
「そっか、それじゃあ、あそこの歩道橋を渡っていくといいよ」
、と左の方にある高さのある大きな橋を指さし言った。
僕はわかったっと言い、すぐにおじさんを離れた。
しかし信じていいのだろうか、あの橋は確かに向こう側に通じている。
しかし、何か仕掛けがしてあるかもしれない。
考えても仕方ない罠であっても乗り越えてやるそういって橋を渡ろうと進んだ。
幸いにも自転車を押して歩ける段のない道が敷いてあり、これなら自転車を押して上がれる。
そうして周囲に目を見張りながら、罠がないか確認する。
ふぅー、なんとか渡りきった。
向かい側にはおじさんはいなかったが、どこかで見ているかもしれないと思い、その大きな店に入ることを決断した。

自転車が多く止められてあるとこに、自転車を止め、店の中に入った。
すると驚いたことに、店の中に無数の店が入っている。
これが帝国の店、多くの組織で作り上げられたのだろう。
これだけの店を同じ場所に集めるとは、なかなか見事だと感心した。
よし、偵察して回ろう、そう思い歩き始めた。
パン屋やコーヒー屋、食べ物だけではなく、宝石や、靴下しか売っていない店、大量の書物を置いている店、きっとここを仕切っているのはこの帝国の支配者だろうと思った。
そんな時ふと目にとまった店に入ることにした。
そこに入ると見たこともない、様々な色と形をした花が置いてあるのだ。これなら、僕の偉大な冒険を母に理解させることができると考えた。
そこで、一つ花を選んだ、それには「カスミソウ」と書かれており、小さくもきれいな白色の花を咲かせており、惹かれたのだ。
これを頼むと店の人に言った。
「三百円になります」と言った。
僕は冒険の時いつもポケットに入れている銀貨を2枚出してこれで頼むと言った。
「僕、あと百円あるかな」と問いできたので、今はこれしかないと言った。

あとこれで頼むと言って、怪しげに飴をタダで配っている人から押し付けられた飴を差し出した。
すると店の人はニヤニヤ笑い、
「はい、じゃあこれでね、今回は特別だからね」と言った。

銀貨と同等の飴をあげたのに、銀貨でないからと笑われたのだろう。
まあいい、これで母に冒険の話を証明できる。
「ありがとう」と一応礼を言い、店を出た。
そして数々の店を通り過ぎ出口を出て、自転に乗り込んだ。
そして帝国内を出て、数々の信号を駆け抜けた、そして最後の信号の時だった、
渡る前に黄色から赤に変わってしまったのだ、素早くブレーキを踏み、止まる。
あー、待つのが焦ったい、あと少しで家に着き母に証明できるのに。

待つしかないので、
周りを見渡していると、小さな小さな屋根のついた家があった。

近づいてそこを覗くと、お地蔵さんがいたのだ。
しかし供えられている花は枯れてしまっている。
気の毒に思った僕は、仕方ないと、
手に入れたカスミソウとやらを供えておいた。
これでお地蔵さんも満足だろう、どこにもない花を供えたのだから。

そうして僕は最後の信号が青になり渡って、家へと自慢げに帰っていった。

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