【R18】4番目の彼女

井笠令子

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7.会いたくない

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 あぁ、泣き疲れてふて寝した翌朝の顔というのは、どうしてこんなにブサイクなんだろう。
 私の仕事場が倉庫の隅にある筆耕室でよかった。誰にも会わずに黙々と作業ができる。冷たいおしぼりが気持ちいい。
 現在行っているのは年賀状の宛名書き。一枚書いては乾かすため、年賀状を『かるた』のようにずらっと並べて置いていく。私が一日に書ける宛名は約80件、がんばったら100件はいける。

 宛名書きが忙しい時期でよかった。何も考えずにただひたすら文字を書いていれば時間が過ぎる。

 ”きぃちゃん、今夜は?”

 お昼に来たメッセージの返信をしないまま終業時刻になってしまった。
 けど、今夜は会うのが怖い。昨日の女ことを問い詰めてしまいそうだから。そんなの『4番目の女』失格すぎる。
 私は決心が鈍らないように返信した。

 ”ごめん。しばらく仕事忙しいから、年末まで時間取れなさそう”

 すぐに、パンダがしょぼんとしたポーズのスタンプが来たけれど、そのまま返信はしないでおいた。
 うん。これでいい。しばらく会わなければ、落ち着いた気持ちで会えると思うんだ。


 ◇◇◇◇

 徹志くんには、もう二週間会っていない。私が断った日から連絡はパタリと止まってしまったからだ。
 連絡来ても毅然としてはねつけてやる! と鼻息を荒くしていた私は、肩透かしを食らってしまった。
 冷静に考えてみれば、遊び人にちょっとツマミ食いされただけじゃないか。4番目には順番なんてもう回ってこないかもしれない。いや、順位はどんどん落ちている可能性もある。このまま自然消滅に持ち込む気か。それは卑怯じゃないか、せめてもう一回会って話をするべきなのでは? 言い訳くらい聞いてやってもいい。ドラマの続きだって観てないし、あのカップだってまだ使ってない。いや、持って行ってないんだから使う機会はもう訪れないかもしれない。

 かるたのように並んだ年賀状を丁寧に重ねながら、私は大きなため息をついた。

 ──私から連絡しないルールを破ってしまおうか。

 そんな私の気持ちを見透かすように、スマホがメッセージを受信して震えた。

 ”きぃちゃん、今夜会える?”

 彼からの久しぶりのメッセージを見た瞬間に心が跳ねた。
 返信に”喜んで!”と書きそうになって、慌てて止めた。居酒屋の店員か。
 こんなに尻尾ブンブン振って喜んでるような返信じゃだめだ。だって別れ話かもしれないし、いや、そもそも別れ話じゃないか、関係解消のお知らせ? それとも、単純にに会いたい? あれか、性欲処理か。あぁ、考えてもわかんない。


 考えに考え抜いた挙句、別日に会う提案をしよう。
 別日でも会いたいなら、本当に会いたいんだろう。そうだろう。

 ”土曜の夜なら大丈夫”

 私の迷いに迷った返事は送信された。

 ”やった。早く会いたい”

 約束を喜んでくれる返信に思わず顔がほころんだ。
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