五つの星々、転生管理ー星巡りの護りビトー

神谷凪紗

文字の大きさ
20 / 47
第一章 【第一星巡り部隊】

第十七節 慣れない相手

しおりを挟む
「貴方の故郷ではそれでもいいのでしょう。しかし、この場所ではこの場所のやり方があるのです」
「ユーベルク様の仰られたいことは、このワタクシでも十分に理解できます。それ故にワタクシは親しい間柄…―今後親しくしたいと願う御相手だけに留めております」
「……貴方はこの教会に来るすべての相手と親しくなるおつもりですか?」
「ここに来てくださる方々はワタクシ達が救うべく御相手でございましょう?救うべく御相手と、親しくしたい御相手は、ワタクシにとって同列に等しいもので御座います」

じっと二人の会話を聞いていたが、ユーベルク司祭とパイオン助祭の主張はお互い会話は平行線で埒が明かない。

普段見ないような表情をしていた司祭は、額に手を当てて首を振る。
的確な助言を示し、非の打ち所がない泰然自若な司祭にも苦手に思う対話相手がいたのだ。特に助祭のように己の芯を強く持ち、その芯に伴って行動を起こす相手には司祭の言葉も強く響かない。

司祭の言う言葉は最もである。
しかし、助祭の言う言葉も別の場所では当たり前な発言なのだろう。

長く続きそうな雰囲気を感じ取り、仕方なく俺が二人の間に入り会話の流れを断ち切った。

「司祭様、お話中失礼いたします。この後何処へ行かれるおつもりだったのですか?」
「…あぁ、そうでしたね。パイオン、私とリーディルク様は奥の礼拝室をお借りします。後のことは頼みましたよ」
「お任せくださいませ」
「それと一つだけ言っておきますが…―リーディルク様は本来であれば貴方よりも目上の相手です。無礼な行動は控えていただきたい」
「勿論で御座います。ワタクシはレナトゥス様を敬愛しており、御慕い申し上げておりますよ」

そう言ってパイオン助祭は、俺たちに向けて慇懃に礼をした後、綺麗な弧を描きながら後ろへ振り返り持ち場へと戻っていった。

「…―俺、あの人にあんなに言われるほど何かやったっけ…?」

思い浮かべた言葉は声に出していたようで、俺に視線を向ける司祭の表情がいつになく厳しい。

「リーディルク様」
「い、いえ。申し訳ございません、ただの独り言です」
「…おそらくは、物珍しさによる戯れでしょう。気にせず、普段通りにしていてください」
「戯れ、ですか?」
「教会内で働く者には一定数いるのです。星巡り部隊に所属する貴方達を特異な者として見て、時に戯れに行動を起こす者が。―パイオンも、それと似たような者でしょう」

二人になった俺と司祭は小さく言葉を交わしながら歩んでいく。
深紅の絨毯の敷かれた身廊の真ん中をゆったりと歩む司祭の後ろを、俺は斜め後ろ数歩分離れた位置を保ったまま後についていった。

それが、教会内での俺と司祭の立ち位置だ。
教会所属とあって一般聖職者より縛りは少ないが、目に見えぬ線引きは存在している。

魂を此方の世界まで導く役目の星巡り部隊と、魂を送り出す役目を持つ聖職者との線引きの優劣は、常なれば星巡り部隊が上だ。―教会内でなければ、の話だが。

いかに相手が身分の高い者であろうとも、教会内に足を踏み入れた時点で優劣は逆転する。

司教が一番上とするならば、司祭はその次だ。
星巡り部隊の立ち位置を言葉に表すならば、司祭の次である助祭と同じ立場になるだろう。

―教会内では己の立ち位置を誇示するような行動は恥とされているうえに、明確に決まりがあるわけでもないため、いわば暗黙の常識といったところだが。

「私たちを、特異な者として見ているとは?」
「羨望…いえ、崇拝とでもいうのでしょうか。他世界へ渡ってまで魂を救う貴方達星巡り部隊こそ、敬い尊ぶべき存在だと言う者がいるということです。考えは自由ですが、それを表立って行動に起こすような行いは禁じています」
「パイオン助祭様も、その考えで私に話しかけてこられたのでしょうか」
「……あの方の考えは私には全く理解できません。―理解したくもありませんが」

助祭の話題を出した途端、不貞腐れた子供のように声音を固くする司祭に、俺は笑ってしまいそうになるのを寸前でこらえた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...