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第一章 【第一星巡り部隊】
第十七節 慣れない相手
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「貴方の故郷ではそれでもいいのでしょう。しかし、この場所ではこの場所のやり方があるのです」
「ユーベルク様の仰られたいことは、このワタクシでも十分に理解できます。それ故にワタクシは親しい間柄…―今後親しくしたいと願う御相手だけに留めております」
「……貴方はこの教会に来るすべての相手と親しくなるおつもりですか?」
「ここに来てくださる方々はワタクシ達が救うべく御相手でございましょう?救うべく御相手と、親しくしたい御相手は、ワタクシにとって同列に等しいもので御座います」
じっと二人の会話を聞いていたが、ユーベルク司祭とパイオン助祭の主張はお互い会話は平行線で埒が明かない。
普段見ないような表情をしていた司祭は、額に手を当てて首を振る。
的確な助言を示し、非の打ち所がない泰然自若な司祭にも苦手に思う対話相手がいたのだ。特に助祭のように己の芯を強く持ち、その芯に伴って行動を起こす相手には司祭の言葉も強く響かない。
司祭の言う言葉は最もである。
しかし、助祭の言う言葉も別の場所では当たり前な発言なのだろう。
長く続きそうな雰囲気を感じ取り、仕方なく俺が二人の間に入り会話の流れを断ち切った。
「司祭様、お話中失礼いたします。この後何処へ行かれるおつもりだったのですか?」
「…あぁ、そうでしたね。パイオン、私とリーディルク様は奥の礼拝室をお借りします。後のことは頼みましたよ」
「お任せくださいませ」
「それと一つだけ言っておきますが…―リーディルク様は本来であれば貴方よりも目上の相手です。無礼な行動は控えていただきたい」
「勿論で御座います。ワタクシはレナトゥス様を敬愛しており、御慕い申し上げておりますよ」
そう言ってパイオン助祭は、俺たちに向けて慇懃に礼をした後、綺麗な弧を描きながら後ろへ振り返り持ち場へと戻っていった。
「…―俺、あの人にあんなに言われるほど何かやったっけ…?」
思い浮かべた言葉は声に出していたようで、俺に視線を向ける司祭の表情がいつになく厳しい。
「リーディルク様」
「い、いえ。申し訳ございません、ただの独り言です」
「…おそらくは、物珍しさによる戯れでしょう。気にせず、普段通りにしていてください」
「戯れ、ですか?」
「教会内で働く者には一定数いるのです。星巡り部隊に所属する貴方達を特異な者として見て、時に戯れに行動を起こす者が。―パイオンも、それと似たような者でしょう」
二人になった俺と司祭は小さく言葉を交わしながら歩んでいく。
深紅の絨毯の敷かれた身廊の真ん中をゆったりと歩む司祭の後ろを、俺は斜め後ろ数歩分離れた位置を保ったまま後についていった。
それが、教会内での俺と司祭の立ち位置だ。
教会所属とあって一般聖職者より縛りは少ないが、目に見えぬ線引きは存在している。
魂を此方の世界まで導く役目の星巡り部隊と、魂を送り出す役目を持つ聖職者との線引きの優劣は、常なれば星巡り部隊が上だ。―教会内でなければ、の話だが。
いかに相手が身分の高い者であろうとも、教会内に足を踏み入れた時点で優劣は逆転する。
司教が一番上とするならば、司祭はその次だ。
星巡り部隊の立ち位置を言葉に表すならば、司祭の次である助祭と同じ立場になるだろう。
―教会内では己の立ち位置を誇示するような行動は恥とされているうえに、明確に決まりがあるわけでもないため、いわば暗黙の常識といったところだが。
「私たちを、特異な者として見ているとは?」
「羨望…いえ、崇拝とでもいうのでしょうか。他世界へ渡ってまで魂を救う貴方達星巡り部隊こそ、敬い尊ぶべき存在だと言う者がいるということです。考えは自由ですが、それを表立って行動に起こすような行いは禁じています」
「パイオン助祭様も、その考えで私に話しかけてこられたのでしょうか」
「……あの方の考えは私には全く理解できません。―理解したくもありませんが」
助祭の話題を出した途端、不貞腐れた子供のように声音を固くする司祭に、俺は笑ってしまいそうになるのを寸前でこらえた。
「ユーベルク様の仰られたいことは、このワタクシでも十分に理解できます。それ故にワタクシは親しい間柄…―今後親しくしたいと願う御相手だけに留めております」
「……貴方はこの教会に来るすべての相手と親しくなるおつもりですか?」
「ここに来てくださる方々はワタクシ達が救うべく御相手でございましょう?救うべく御相手と、親しくしたい御相手は、ワタクシにとって同列に等しいもので御座います」
じっと二人の会話を聞いていたが、ユーベルク司祭とパイオン助祭の主張はお互い会話は平行線で埒が明かない。
普段見ないような表情をしていた司祭は、額に手を当てて首を振る。
的確な助言を示し、非の打ち所がない泰然自若な司祭にも苦手に思う対話相手がいたのだ。特に助祭のように己の芯を強く持ち、その芯に伴って行動を起こす相手には司祭の言葉も強く響かない。
司祭の言う言葉は最もである。
しかし、助祭の言う言葉も別の場所では当たり前な発言なのだろう。
長く続きそうな雰囲気を感じ取り、仕方なく俺が二人の間に入り会話の流れを断ち切った。
「司祭様、お話中失礼いたします。この後何処へ行かれるおつもりだったのですか?」
「…あぁ、そうでしたね。パイオン、私とリーディルク様は奥の礼拝室をお借りします。後のことは頼みましたよ」
「お任せくださいませ」
「それと一つだけ言っておきますが…―リーディルク様は本来であれば貴方よりも目上の相手です。無礼な行動は控えていただきたい」
「勿論で御座います。ワタクシはレナトゥス様を敬愛しており、御慕い申し上げておりますよ」
そう言ってパイオン助祭は、俺たちに向けて慇懃に礼をした後、綺麗な弧を描きながら後ろへ振り返り持ち場へと戻っていった。
「…―俺、あの人にあんなに言われるほど何かやったっけ…?」
思い浮かべた言葉は声に出していたようで、俺に視線を向ける司祭の表情がいつになく厳しい。
「リーディルク様」
「い、いえ。申し訳ございません、ただの独り言です」
「…おそらくは、物珍しさによる戯れでしょう。気にせず、普段通りにしていてください」
「戯れ、ですか?」
「教会内で働く者には一定数いるのです。星巡り部隊に所属する貴方達を特異な者として見て、時に戯れに行動を起こす者が。―パイオンも、それと似たような者でしょう」
二人になった俺と司祭は小さく言葉を交わしながら歩んでいく。
深紅の絨毯の敷かれた身廊の真ん中をゆったりと歩む司祭の後ろを、俺は斜め後ろ数歩分離れた位置を保ったまま後についていった。
それが、教会内での俺と司祭の立ち位置だ。
教会所属とあって一般聖職者より縛りは少ないが、目に見えぬ線引きは存在している。
魂を此方の世界まで導く役目の星巡り部隊と、魂を送り出す役目を持つ聖職者との線引きの優劣は、常なれば星巡り部隊が上だ。―教会内でなければ、の話だが。
いかに相手が身分の高い者であろうとも、教会内に足を踏み入れた時点で優劣は逆転する。
司教が一番上とするならば、司祭はその次だ。
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―教会内では己の立ち位置を誇示するような行動は恥とされているうえに、明確に決まりがあるわけでもないため、いわば暗黙の常識といったところだが。
「私たちを、特異な者として見ているとは?」
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「パイオン助祭様も、その考えで私に話しかけてこられたのでしょうか」
「……あの方の考えは私には全く理解できません。―理解したくもありませんが」
助祭の話題を出した途端、不貞腐れた子供のように声音を固くする司祭に、俺は笑ってしまいそうになるのを寸前でこらえた。
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