ヒトする

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昔、牛人という種族に、ケルトというそれはそれはかわいらしい女の子がいました。

ケルトはスマイリーとスケルトンのあいのこで、麗しい糸を紡いでは美しいドレスを仕立てて暮らしていました。

ケルトはたった1人の犀人族のロニアに恋をしていました。ロニアはブリーズとパラノイアのあいのこで、たくましい火使いの男でした。

牛人族の火はすべてロニアによってまかなわれていました。

牛人族と犀人族はだれもがまったく別の生物でしたが、お互いとても仲良く暮らしていました。

それは、その別々さがお互いの命のつなだったからです。



ケルトとロニアは結婚し、かわいらしい男の子をもうけ、クラウドと名付けました。

クラウドは成長すると、りっぱな男になるために旅に出ました。

旅先でクラウドは麒人族に出会いました。

麒人族はだれもが同じ形をした種族で、自分と違う形をした者を見ると
ことごとくと食べてしまういけない習慣をもっていました。

そんなものですからクラウドはたちまち食べられてしまいました。

クラウドを食べた麒人族は口ぐちに「この者はなんておいしい者だろう。もっと食べたい。たんと食べたい。」と言いました。


そしてみんなで牛人族を食べに行こうという事になりました。


さあ、このうわさを聞いた牛人族はたいへん。

みんなが集まって、どうしたら麒人族に食べられずにすむかと話し合いましたところ、長老がよい事をおもいつきました。

長老は七節男ですから擬態が上手です。

そこでみんなに擬態を覚えさせ、麒人族の形になってしまえば食べられずにすむと言うのです。

みんなはさっそく長老から擬態をおそわり、その日から麒人族の形をする事にしました。

しばらくして麒人族がやって来ましたが思ったとおり、麒人族はだれも食べずに、がっかりして帰って行きました。

さあ、牛人族は、してやったりと大よろこびです。でも、またいつ麒人族がやって来るかも知れないので、このまま麒人族の擬態を続ける事にしました。

それにみんなが同じ形をしていると、とても便利だという事がわかりました。

道具や家の形がひとつですむものですから。

いつからか牛人族の間では麒人族に擬態する事を、最初にクラウドを食べた男の名前にちなんで、「ヒトする」と言うようになりました。

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