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1巻
1-3
「そっか。僕もイリスを抱きしめていると嬉しくて止まらなくなるんだ。ねぇ、イリス。僕のこと……好きだよね?」
フェルナンドに見つめられ、イリスの心臓がさらにドキドキと騒いだ。
まとまらない思考で必死に考える。
確かに、いつでも蛇さんに会いたいと思うし、もっとたくさんお話ししたい。フェルナンドが蛇だというのなら、彼のことを知りたい。
人間の姿にはまだ慣れないけれど、そこに間違いはない。
この気持ちはフェルナンドが説明してくれた通りだ。
「……は、はい」
頷くと、彼の唇が自分のそれに触れた。
イリスは自然と目を閉じて、初めての口付けを受け入れる。
温かいと感じた後、じんわりとした熱が身体中を回って、宙に浮かんでいるみたいな夢見心地になった。
「ふふ。ぼんやりして……無防備だな」
とろんとした瞳で見つめるイリスに、フェルナンドが囁く。
唇を合わせるとこんなに気持ちいいなんて、イリスは知らなかった。
フェルナンドに優しく握られている手のぬくもりも安心する。
「可愛いよ。でも、言質はとったからね? イリスが僕をもっと好きになってくれるのは、これからゆっくりでいい。僕のものになってから……ね。今日は、たくさん愛してあげる。いいよね?」
髪の毛を解きながらフェルナンドが言った言葉を、初めての熱に浮かされたイリスは半分も聞いていなかった。
髪に触れる手が心地好くて、こくりと頷く。
すると、フェルナンドは再び彼女の唇を塞いだ。今度は後頭部を手で支えながら強めに唇を押しつけて、舌で彼女のそれを舐める。
驚いたイリスが口を開くと、ぬるりと舌が差し込まれた。
「んっ、ふ……んぁ……」
くちゅっと唾液が絡まっていやらしい音を立てる。
逃げようとするイリスの舌を、フェルナンドのそれが追いかけた。奥のほうまで侵入してくる。
彼の舌はずいぶん長いように感じた。
ちろちろと歯列や頬の内側、触れないところがないくらい隅々まで舌先で舐められる……いろいろな場所がくすぐったい。
初めての深いキスに呼吸をするのもままならないイリスは、頭が働かず、彼の動きを追うことができなかった。
「んっ、は……」
フェルナンドがようやく唇を離したときには、息も絶え絶えで、頬を上気させている。
「イリスの唇、柔らかくて気持ちいい……中も熱くて……」
王子は吐息たっぷりに呟きつつ、イリスの唇を指でふにふにと突く。それから再び唇を重ね、上唇と下唇を交互に食んだ。
「ン……」
唇の柔らかさを堪能した後は、舌が口内にもぐり込み、中の熱を確かめるようにねっとりと舐められる。
逃げる舌を追いかけられて息もできず、イリスは溢れてくる唾液を飲み込むこともできない。その唾液をちゅるっと吸われ、唇が離れたとき、二人の唇は銀糸で繋がっていた。
それがプツリと切れるのをぼんやり見つめていると、彼の喉がこくりと上下したのがわかる。
「甘い……」
ぺろりと唇を舐めたフェルナンドが呟く。彼が嚥下したもの――今しがたイリスの口から漏れたものに、イリスの身体がカッと熱くなる。
「っ、フェルナンド様、あの……きゃっ」
慌てふためくイリスは、ベッドに優しく押し倒された。すぐにフェルナンドが覆いかぶさってくる。
「あっ、フェル……ナンド、様」
抗議の声を上げる間もなく、首筋に強く吸い付かれ、イリスの腰がビクッと跳ねた。胸元や肩、喉元にもたくさんキスをされ、その官能に悶える。
「ん……」
身体が言うことを聞かない。手に力が入らないし、先ほどから自分の意思とは関係なく全身が震えてしまう。
キスの嵐が過ぎ去ると、今度はフェルナンドの舌がねっとりと身体中を這い回って、イリスの肌を火照らせた。
「んっ、ああ……」
ぞくぞくと背を這う痺れに似た感覚。
逃れたいような、逆にもっとほしいような、変な気持ちだ。
無意識に仰け反ったイリスの背とベッドに隙間ができる。その空間にフェルナンドの手がさっと滑り込み、ドレスの紐を捕らえた。
イリスが身悶えている間に、手際よくコルセットまで緩めていく。
気づいたときには、彼の手が膨らみに直接触れていた。
「あっ? や、ど、どうして?」
「ふふ。愛を語らうのにドレスは邪魔なんだ」
そう教えてくれるフェルナンドの瞳の奥に、何かが揺れる。
ドキンと彼女の心臓が弾んだ途端に彼がドレスを身体から抜き取った。
「や……恥ずかし、あ!」
イリスの両手が胸の膨らみを隠すよりも早く、フェルナンドの両手が豊満なそれを包み込む。
「柔らかくて、気持ちいいね。蛇のときは触れなくて焦れったかったけど……綺麗だ」
フェルナンドがゆっくりとその弾力を確かめるみたいに揉み込み、形を変える乳房を熱い視線で観察する。
「可愛いな。ここ、僕が触ると赤くなっていくね」
彼は熱い吐息を漏らし、少しずつ硬くなってきた頂をぺろりと舐めた。
「あっ、ああ……」
途端にそれは、ツンと存在を主張するかのごとく勃ち上がる。まるで、もっと触れてほしいと言っているみたいだ。
フェルナンドがそれに応えるように、唾液で濡れた蕾を人差し指で何度も引っ掻き、弄った。
もう片方は口に含み、舌で突いたり、強めに擦ったり、歯を立てたりする。
強弱を使い分ける巧みな彼の愛撫に、イリスの息は乱れていった。
「は、あ……っ! フェルナンド、様……」
赤子のように乳房を吸うフェルナンドの口元に、イリスの視線がつい吸い寄せられる。
見てはいけないと思うのに、自分がどんなふうに触れられているのか知りたくて止められない。
その淫靡な光景を目にした瞬間、腹の奥が熱くなり足の間がきゅっと疼いた。
続いて肌を舐められ、胸の蕾を吸われて甘噛みされる……フェルナンドはまるで彼女を味わっているみたいだ。
ふっと、兄の言葉が蘇り、イリスは不安になった。
「……っ、た、食べて、しまうのですか?」
震えながら問うと、フェルナンドが顔を上げて彼女を見つめる。
「うん……でも、乱暴はしない。僕は蛇さんだからね」
イリスの質問に答えた彼は、身体を起こして自分の服を脱ぎ捨て、上半身裸になった。それから彼女の頬にキスを落とし、「大丈夫」と微笑む。
乱暴にせずに食べる、とはどういうことだろうか?
「ど、どうやって、食べるのですか?」
「いっぱいキスをして、気持ちいいところに触れて、舐めて……かな。ふふ。『食べる』の本当の意味は、僕が教えてあげる。大丈夫だから、心配しないで」
「ん……っ」
戸惑う彼女だが、もう一度優しくキスをされると、安心して身体の力を抜いた。
どうやらイリスが思っている「食べる」とフェルナンドが言う「食べる」は違うようだ。
キスをするのは大丈夫。触れられたり、舐められたりするのも、恥ずかしいけれど嫌ではない。
しかし、ホッとしたのも束の間、フェルナンドは彼女の足から下着を抜き取って、膝を押し開こうと手に力を入れた。
「えっ? あ、い、いやぁ……!」
自分でも見たことのない場所を暴かれそうになり、イリスは狼狽を隠せない。
足を閉じるため、膝に思いきり力を入れた。
「イリス、大丈夫だから」
「いや! ダメです! そんなところ……っ、汚い」
足の間は本来秘めるべき場所。他人に見せるようなものではない。
「汚くないよ。ねぇ、イリス。君を気持ちよくしたいんだ。優しくするから……触れていい?」
「ダ、ダメです。見ないで。触るのもダメ……」
涙を流して懇願すると、フェルナンドは困った様子で膝に添えた手の力を緩めた。
「イリス。怖がらないで……大丈夫だから」
そう言って、彼が再び手に力を加える。
イリスはビクッとして首を横に振った。
「や……痛いことをしたら嫌です……フェルナンド様、乱暴はしないって言いましたよね。蛇さんだからって……」
「困ったな……」
フェルナンドが一旦止まる。
彼は「乱暴はしない」という約束を違えるつもりはないらしい。彼の力なら強引にそこに触れることなど容易いはずだからだ。
「じゃあ、蛇さんなら怖くない?」
「え?」
イリスが答えるよりも早く、膝の温もりが消えた。
視線を落とすと、そこにはフェルナンドの手の代わりに、蛇がちょこんと乗っている。
「あ、蛇さん?」
蛇はちろりと舌を出し、彼女の膝から太腿へ向かってくるくると回りつつ這い上がってきた。そうして、警戒心が薄れたイリスの足の付け根へ簡単に滑り込む。
「ひゃっ、へ、蛇さんっ! ダ、ダメ……んんっ」
イリスは抵抗の言葉を発しながらも、足を固く閉じられず、おろおろした。
蛇だって触れたらいけない場所だが、今足をぴたりと閉じると、彼を潰してしまう。
「あ、あ……やぁ……」
蛇は困惑するイリスの足の間を自由に動き回っている。
太腿や足の付け根を這い回りつつ閉じた花園の入り口を行き来して、その外側の柔肌を舌でちろちろと掠めていった。
それを何度も繰り返すと、やがてイリスの足が小刻みに震え始める。彼女の割れ目の上に花芯が顔を出した。
蛇は彼女の足の付け根に尻尾側半分を巻きつけて身体を固定すると、その花芯を口で突く。
「あぁっ、蛇さ……ッ」
イリスはその刺激に戸惑い、身を捩った。
それでも蛇の愛撫は止まらず、細い舌で何度も花芯を舐める。
「ああ、あ……ッ、んっ、は……」
感じたことのない疼痛は、イリスの下腹部に熱を溜め、泉の奥からとろりとした蜜を溢れさせる。
愛液が零れて光るその入り口を蛇は舐めた。その細い舌で秘所を丹念に愛撫し続ける。
イリスは未知の感覚に涙し、喘ぎ声を上げた。
足の間が熱くて、身体全体が痺れているみたいだ。頭も熱に浮かされてぼんやりしてきて、何も考えられなくなる。
イリスの足に力が入らなくなった、そのとき――
「ああぁっ! や、あっ、蛇さっ……あ、あ、フェルナンド様っ」
突然膝の裏に力を感じて驚いたイリスの目に、人間に戻ったフェルナンドの柔らかそうな茶髪が飛び込んでくる。
大きく開いた足の間に顔を埋めていた彼は、先ほど蛇の姿でしていたのと同じように彼女の泉から零れる蜜を夢中で舐めていた。
違うのは、その舌の大きさと温度だ。
小刻みに刺激されていた先ほどまでの快感も、イリスには強いくらいだったのに、大きくてざらついた舌にねっとりと這われ、腰が跳ねるのが止まらない。
蛇のときは舐めるだけだったのに、フェルナンドは花芯を唇で挟んで刺激したり吸ったり、舌を泉の中へ入れたりと様々な愛撫でイリスを翻弄する。
「やっ、あ……んぅ、あぁ、あ……ダメ……」
イリスはせめてもの抵抗に彼の髪を掴む。
けれど、その手にはほとんど力を入れられなかった。
くちゅくちゅといやらしい音が響く寝室で、イリスは頭をベッドに擦りつけて悶える。
そこで突然、フェルナンドが真っ赤に腫れ上がった花芯に歯を立てた。イリスの意識は一瞬真っ白になる。
「ひ、ああ――っ」
ガクガクと大きな震えに襲われた後、呼吸が止まった。全身から汗が噴き出る。
しばらくしてようやく空気を取り込めるようになると、イリスは肩を上下させてぐったりとベッドに沈み込んだ。
「……怖かった?」
あまりの衝撃にイリスの頬を涙が伝う。それを舐めとり、フェルナンドが彼女を抱き寄せる。
イリスは息も絶え絶えに「少し」と答えた。
初めは恥ずかしさや困惑が大きく、それしか考えられなかった。でもその後は、むず痒さをどうにかしたいという気持ちが膨らみ、最後に大きな波に攫われた。その感覚を怖いと感じたのだ。
だが今は、疼く秘所が気になって仕方ない。
「イリス、たくさん濡れてる。中も確かめさせて」
フェルナンドの手が潤った泉へ伸びて、指先で入り口を弄られる。
触れられたところで、ぬぷっといやらしい音がした。
「あ……」
ゆっくりと冷たい指が侵入してくる。
イリスの表情を窺いながら、フェルナンドが彼女の中で丁寧に指を動かした。
「痛くない?」
「ん……」
イリスが頷くと、彼は一度指を抜き、今度は二本同時に沈める。
圧迫感はあるが、しとどに濡れた彼女の中は、フェルナンドの指をスムーズに受け入れた。
「あ、ン……んっ、ふ……んあぁ」
フェルナンドはしばらく緩やかな動きで中を擦り続けていたが、彼女の腰が揺らめき始めたのを見ると、フッと笑って指を引き抜く。
「あ……」
きゅんとイリスの中が収縮して、入り口がヒクついた。
「ふふ。もっとあげるから、そんな顔をしたらダメだよ」
今、どんな表情をしているのだろうか?
自分では確かめられなくてイリスにはよくわからない。
一方のフェルナンドは、目元が赤く染まり、色っぽい雰囲気を醸し出している。
熱く濡れたその瞳に見つめられるだけで、イリスの身体は疼いた。
彼はそっと覆いかぶさってきて、彼女の頬を撫でる。
「イリス、ごめんね。少し痛いかもしれないけど、優しくする」
フェルナンドが申し訳なさそうに言う。
その意味がよくわからなかったイリスは首を傾げたが、蜜口に何か大きなものが宛がわれたのを感じると、反射的に身体を硬くした。
「力を抜いて、イリス。最初だけ、だ、から」
「あっ!」
ぐっと押し込まれた昂りは、先ほど指を受け入れたときとは比べものにならないほどの圧迫感をイリスに与える。
「や……いたっ」
イリスの目尻に涙が溜まった。
「ごめん、少しだけ、我慢して。僕に掴まってごらん」
フェルナンドは破瓜の痛みに泣くイリスを抱きしめつつ、ゆっくり腰を進める。
「ふっ、ああ、あ……」
イリスは涙を流しながら、フェルナンドの言う通り彼に抱きついて鈍痛を耐えた。頬を流れる雫は、彼が舐め取ってくれる。
そんな彼の気遣いが、イリスの心を温かくした。
「ん……全部、入った」
「あ、フェルナンド様……」
「ありがとう、イリス」
なぜかお礼を言い、フェルナンドは優しいキスをしてくれた。
唇を重ねたり離したりを繰り返し、ゆっくりと舌を入れられる。イリスの下腹部はずくずくと疼いたままだが、キスには慣れてきた。
彼の真似をして舌を差し出してみると、彼は小さく笑って舌を擦り合わせてくる。
「ん……あ、蛇、さん?」
最初のキスのときもぼんやりしながら思ったが、彼の舌が触れると不思議な感覚がする。
「うん。僕の舌、蛇さんなんだよね」
フェルナンドはぺろりと舌を出してみせた。
その長さは人間のものより長く、舌先は二つに割れかすかに窪みができている。
「あ……蛇さんの舌! 気持ちいいです」
イリスは自分の言葉が持つ破壊力には気づかず、うっとりと呟いた。
それを聞いたフェルナンドは眉根を寄せてぐっと息を詰める。
「イリス……あんまり可愛いことを言うと、どうなっても知らないよ?」
「えっ? あっ……ン」
急に腰を引かれ、イリスは背を反らす。
フェルナンドは一度引いた腰を再びじわじわと押し進め、最奥を突いた。奥まで達すると、再びゆっくり腰を引き、また奥へ戻る。
最初は大きな質量に違和感しかなかったが、次第にイリスは、じんわりとした快感を覚え始めた。
「あっ、ああ……」
彼女の声色の変化に合わせ、フェルナンドが腰の動きをだんだん速めていく。
「は……っ、んあぁ、や、あっ」
隘路を押し広げられるたび、イリスの口から意味をなさない音が漏れた。腰を引かれると、彼女の中は彼を逃がさんといわんばかりに蠢く。
「いやらしい、ね……イリス。可愛いな」
呼吸を乱したフェルナンドが、昂りを抜き差しして中を探る。律動をやめないまま上半身を倒し、揺れる乳房の先端に吸い付いた。
「ああっ、あ、やぁっ」
硬くなった蕾から伝わる刺激は、すぐに下腹部へ辿り着く。
くにくにと舌の窪みにはめ込むように尖った胸の頂を愛撫されると、昂りを咥え込んだ膣内がうねるのがイリスにもわかった。
その快感はフェルナンドにも伝わり、二人は一緒に高みへ昇っていく。
「これ、好きなんだ?」
イリスの反応に嬉しそうに笑うフェルナンドが、激しく彼女を揺さぶり始めた。
「あぁん、あッ……んあっ」
先端が奥を突くと、ぞわぞわと背を駆け上がる快感。
擦られる膣壁がじわじわと熱くなって、イリスは自分の身体が動くのを我慢できそうにない。
溢れ続ける蜜は二人の結合部をしとどに濡らし、肌を打つ音が水気の混じったものになる。
「んっ、イリス……」
「フェルナンド、様?」
名前を呼ばれ、イリスは顔を上げた。じっとフェルナンドを見る。
初めて見る、彼の苦しそうな表情。
イリスは快楽の波に揺さぶられながら、彼の首に手を回した。
「イリス……愛している。僕を、僕自身を、見て……」
「あっ……あぁっ、はぅ、んっ」
フェルナンドはその手に応えるように掠れた声で呟き、一層律動を速めた。
奥を穿たれるあまりにも強い刺激に襲われながら、イリスは自分を映す金色の瞳を見つめ返す。
縋るような彼の視線に、胸が締めつけられそうになった。
「――フェルナンド様」
「イリス。好きだよ……愛している」
フェルナンドの告白に、きゅんと疼くイリスの心と身体。彼女の中が彼の熱塊を締めつける。
それにクッと息を詰めた彼は、しかし、とても幸せそうに笑った。
その顔を見たイリスも満たされる。
「ああ、もう……イリスッ」
「ひゃあ、あ――! あ、あぁっ、ああん」
膝を強く掴まれ、激しく腰を打ちつけられる。
イリスはその刺激に耐えられず、シーツをきつく掴んで迫りくる快感を享受した。
フェルナンドが荒い呼吸を繰り返す。
彼は数回腰を揺すり、震えたまま彼女に覆いかぶさった。
イリスはその大きな身体を抱きしめて目を瞑る。
「フェルナンド様……」
「イリス」
フェルナンドは甘えるみたいに彼女の首筋に顔を埋めた。
「誰よりも大切にする。だから、僕を好きになって。王子でも、好きに……」
「フェルナンド様?」
なぜだろう。
こんな状況で、イリスは唐突に蛇さんと初めて会った日のことを思い出していた。
イリスに向かって口を大きく開けて威嚇し、人間をとても怖がっているようだった彼――
だからイリスは、自然とあの日と同じ言葉をかける。
「怖くないですよ」
「……ああ」
彼の声が震えているみたいに聞こえたのは、情事に乱れた呼吸のせいだろうか。
「イリス、大好きだよ」
その告白は、パーティでの求婚より、情事の中で囁かれた甘い言葉より、彼女の胸に真っ直ぐ響いた。
彼を守りたいと強く思う。
世間知らずな伯爵令嬢が王子を守るなんて、他の人が聞いたら笑ってしまうことだろうけれど……
それが、イリスの心にはっきりと火が灯った瞬間だったのかもしれない。
イリスはフェルナンドを抱きしめる腕に力を込める。
彼も同じようにイリスを抱き返し、二人は一晩中抱き合って眠った。
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