幸せの感じ方

じんじゅ

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木村と大前

何だか怪しい女【木村】

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 「皆さん初めまして。大阪から転勤した木村と申します。仙台支店では、新しい分野を中心に事業展開していると聞いております。一年目のようなまっさらな気持ちで、突っ走って行きたいと思いますので、ご指導ご鞭撻のほど、どうぞ宜しくお願いします。」

パチパチ。乾いた音が響く。決して私の挨拶が拙いわけではない。もちろん優れていたと自負するわけでもないが、、いかんせん、人数が少ない。
仙台支店の従業員は私を含めたったの8名。少数精鋭といえば聞こえはいいが、まあ閑職な支店である。そんな中、私が話す時に、そっぽを向いてるかと思えば、睨め付けるかのように熱い視線を向けてきたりする、一人の女性がいた。
彼女の名前は、若林。不思議な人だな。というのがその時印象であった。これは、その日のうちに、不思議から不気味に変わった。

「はい、木村くんありがとう。それでは皆さん、頑張っていきましょうね。今日の午前中は、会社のお知らせ(社内報)を読みますね。午後からは営業職で会議の予定です。」支店長が読み上げる。

そうして一日目は、支店のレクレーションで終わった。

定時後には、歓迎会を開いて貰った。
やはりお酒が入ると、会話も弾む。
「へー、そうなんだ。木村さんは、ゴルフするんだね。来たばっかりで土地勘ないだろうし、良ければ今度一緒に回ろうよ。安くて良いとこ案内するよ。」
大して上手くもないし、付き合い程度の範囲でしかやってきていない。しかし、こうやってコミュニケーションツールになるのはありがたいし、嬉しいものだ。
「はい!是非、ご一緒させて下さい。」

そんな時、変わった視線を向けていた若林が話しかけてきた。
「へ~。木村さんゴルフするんですね~。すご~い。」

先程申し上げた通り、私の腕前なんぞ本当に大したことない。

ゴルフの話題なると、お客さんには、いくつ位なの?と聞かれる事が多い。そんな時は、220がベストですね、と答える。
そうすると、結構飛ばすんだねーと驚いて頂ける。
そして、一言こう答える。いえ、スコアの方なんです。

これで大体クスッとしてくれる。又は、スコアかい!いや、そもそもよく220も数えたな!と、いった具合に、つっこまれて話のネタになる。
ネタにはなるが、それくらいにゴルフの腕前は乏しいのが事実である。
だから、先程の会話に対する私の答えはこうなる。

「いやいや、私なんて本当にたいした事ないんですよ。だいたい220くらいですし」
流れるように、いつもの流れを話す。
だが、彼女は違った。

「220ってすご~い。私全然分からないから、尊敬しますー。」

「??」どうしてそこから、尊敬にまでいったのか。思考のショートカットが凄くて、私の頭は、ショートした形である。

「えー、本当に尊敬してるんですよー。そんな顔するなんて、ひど~い~」
どうやら、不思議なものを見るような目になっていたようだ。

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