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33話 しがらみと戦いの中へ 3

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 レシアナさんが【夜の森】がダンジョンだと気付いたようだ。

「今まで私は【夜の森】という場所は、何らかの【魔力異常地帯】だと思っていました。
 たしか、本部でもそういった結論になっていたと思います。
 それは、Aランク探索者でも魔物を一匹も確認出来なかった事、それでも入ったものが帰って来ない事、などから、魔力異常により、奥に入れば入るほど【幻覚】【恐慌】【疲労】【魔力枯渇】等の状態異常になり、生還出来ないんだと推測したからです」

「ふむ」

「ですが、今回リルトきゅ…くんがもたらした情報、この魔物が存在する事が、推測を完全に覆しました。
 モンスター学では、モンスターの大きさは、必要維持魔力の多さに比例します。
 このルールに抵触しないのは、竜タイプ、不定形タイプ、植物タイプ、亀のようなほとんど動かないタイプ、大体がこの枠に入ります
 リルトくんが見せてくれた絵の魔物のように、動き回り、動物等の魔力補給にならないエサを取る、こんな生態が許される環境は、常に魔力が充溢しているダンジョンしか有り得ません」

「と、言う事は…」

「はい、【夜の森】は【フィールドダンジョン】である可能性がかなり高く…いえ、ほぼ間違い無いと思われます」

「わかった、報告書を頼む。
 しかしそうなると…」

「はい、調査隊が来て、その護衛冒険者が来て、…また不用意に森に入ろうとする者が現れそうです」

「はぁ…代官との話し合いも必要だな」
「そうですね…」





 仕事が大変になりそうな大人二人は、どんよりとした空気を出して俯いていたが、レシアナさんはすぐにオレを思い出してくれたらしい。

「リルトくん、あなたのおかげで、この町が昔から抱えていた問題が、解決に向けて動き出します。
ありがとうございます」
「そうだな、俺からもお礼を言おう、ありがとう」

「いえ、特になにかした訳じゃありませんから」
「それでもいいんです。
 あ、当然この情報に関しては、ギルドから報酬が出ます。
 確認等も含むので、恐らく進捗に合わせて、分割になるとは思いますが」
「そうですか、冒険者としてはまだスタートも出来てませんから、資金が増えるのはありがたいです」




「あぁ、それから【D・S】に関してもですね」

「【D・S】?」
 ギルド長が訝しげに話に入ってくる。

「あぁ、まだ報告前でしたね、…これです」
と、タブレットを操作し、ギルド長に渡す。


「な、なんだこの職業は?」
「世界に1人だけです」
「は?」
「歴史上リルトくんだけです」

「…あっさり言ってるが、"これ"も【調査隊案件】じゃないのか?」
「あっ!」


(…なんか雲行きが怪しくなってきたな)


「あの…ひょっとして、私を調べに誰かが来る、とかそういった話ですか?」

オレの顔を見て、レシアナさんは何か感じてくれたらしい。

「あんまり乗り気じゃ…なさそうですね」
「はい、話した通り"人付き合い"に慣れてませんから」
「そうですよね、分かりました。
 この件は保留に出来るよう、私が働きかけます」
「いいんですか?」
「はい。
 その代わり情報提供は協力して下さい。
 私が担当しますから、冒険者の仕事も含めて、私と話し合っていく形で進めましょう」
「それなら少しは気が楽です。
 よろしくお願いします」
「はい、こちらこそお願いします」

「大丈夫なのか?君もそれなりに忙しいだろう。
 担当は、誰か一般の受付嬢を付ければいいだろう?」

「リルトくんは、冒険者どころか、一般常識さえ初心者なんですよ?
 変な依頼受けさせて、世界に1人だけの職業が失われたら、私達のクビが飛びますよ」
「う…そうか。
 すまん、レシアナくん頼む」
「大丈夫です、他の仕事は上手く調整しますから」



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