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87話 出会いの旅路 13
しおりを挟む護衛依頼14日目。
小高い丘から王都を眺めつつ、敷物上に車座になり昼食後の休憩中。
この辺りには建物はないが、王都に近づくにつれ増えていき、密集度が高くなった所に城壁がある。
エリザベットさんの話を聞く限り、貧民街、城門を跨ぎ平民街、高級平民街、第二城門を跨ぎ貴族街、王城と分布しているようだ。
「出発前にも一度しましたが、王都に入る前にもう一度確認しておきましょう」
「ギュー…」
マーガレットさんはご満悦で話を聞いているか分からない顔で、ラテルはマーガレットさんの膝の上で不満げな顔で鳴いている。
マーガレットさんが半泣きで抱かせて欲しいと頼み込み、ラテルがしぶしぶ了承したのだ。
エリザベットさんは苦笑しながら話し始める。
「王都に入り、平民街の冒険者ギルドに到着時点で、一旦護衛依頼は終了となります。
今回は往復の契約ですので、一時的に自由行動とはなりますが、"長期の依頼"や"遠方への移動"はお控え下さい」
「あぁ、分かっている」
「了解です」
ガルフとオレが答える。
「こちらの予定は、謁見の希望がいつ叶うかによって変わってしまうのですが、通常長くても3~4日以内には叶いますので、打ち合わせで1~2日、謁見で3~4日という事で、帰りの準備等を含めて1週間前後で再出発となる予定です」
ラテルがもぞもぞとオレの膝の上に戻って来た。
マーガレットさんは残念そうな顔、ラテルは定位置に座ってご機嫌な顔だ。
「連絡を取る必要がありますので、宿が決まった後は、マーカス商会にご連絡下さい。
宿泊費は平民街の宿であれば、帰還後こちらで全額負担しますので、領収書をもらうのをお忘れなく」
この世界には"名印"があるので、領収書で精算という文化がある。
「リルトさんは…父が会いたいと言い出す気がしていますので、申し訳ありませんがその時はご同行をお願いします」
「分かりました、大丈夫ですよ」
(販売委託先の社長、みたいなもんだからしょうがない)
打ち合わせを終え出発する。
貧民街の辺りでは、屋台などで細々と商売が行われており、城門に近づくにつれしっかりした店などが現れ始める。
城門では身分証だけでなく、簡単な車内のチェックが兵士により行われた。
今回は荷物を積んでいる訳ではないのですぐ終わったが、そうではない場合は"抜き取り検査"のような事を行うらしい。
身分証チェックの時は馬車を降りたので、兵士に驚かれたが、ラテルが自分の首に掛かったドッグタグを自慢げに見せると、微笑ましい顔で見ていた。
移動の暇つぶしにと、銀のプレートに軽く装飾を彫り中央に「ラテル」と彫っただけのシンプルなものだが、"自分の名前が書いてある"というのが気に入ったらしく、寄り紐に通して首に掛けても、嫌がらないどころか喜んでいた。
門を抜け王都内へ。
王城へ続く大通りは人や馬車が行き交って、今まで見た町の中でもっとも活気がある。
町並みも整えられ、馬車用の"車道"と歩道にしっかり区分けされている町は初めて見た。
そして馬車は、
【冒険者ギルド オルガスティア王都支部】
と書かれた、見慣れたマークの付いた大きな建物の前に着く。
初めての護衛依頼、その半分が今終了した。
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