89 / 244
89話 出会いの旅路 15
しおりを挟む…コンコンコン、
「失礼します」
初めて来たのに知っている、ルティスタでレシアナさんと話した時にも使った会議室。
受付嬢が扉を開けると、そこには20代後半くらいの獣人女性が書類を手に座っていた。
「リルトさんですね、こちらのお席にどうぞ。
ユグラ、3人分お茶をお願い、勉強の為にもあなたも同席しなさい」
「キュキュギュ!」
ラテルが獣人女性に向かって、前足をバタバタさせながら抗議のような鳴き声をあげている。
「あらふふふ、ゴメンなさいね。
ユグラ"4人分"でお願いね」
獣人の女性はロングの白髪に、あまり尖っていない白い丸っこい耳で、ファンタジー慣れしていない転生者から見ると神秘的な見た目だ。
(犬、狼では無いな…雪ヒョウ? さすがに耳だけじゃ判別できないな)
座っているのでイマイチ分からないが、そこそこ長身でスラッとした体格に見える。
優しそうな顔立ちの中にも、キリッとしまった空気感があり、"レシアナさんのさらに上司"って感じか?
(あ、いや…レシアナさん王都勤務してたって言ってたから、本当に元上司なのかも)
獣人女性の前に座り、失礼にならない程度に見ていたつもりだったが、
「やっぱり獣人は珍しいかしら?」
「あ、失礼しました。
そうですね、友達…いや先輩に獣人男性はいるんですが、女性は初めて見たので」
「ガルフと仲良くしてくれてありがとうね」
「えっ?」
「お茶が来る前に自己紹介ね。
ガルフの母で、王都冒険者ギルド長のセリアナよ」
「!」
(は、母ぁ? おいおい、ガルフはどうみても20代後半…この人いくつなんだ?)
「その驚き方を見ると若く見られてたみたいね?
これでもそこそこのオバチャンなのよ」
ーーーーーーーーーー
お茶を用意してきたユグラさんもセリアナさんの横に座り、全員で紅茶を飲んでいる。
ラテルも、砂糖を入れて顔の前にオレが持ってやっているのをペロペロと舐めている、ラテルは熱いのも平気なんだよな。
「まぁガルフももう大人だから、親の仕事なんていちいち言わない…っと言いたい所だけど、本当のところは、
ここで"見習い"してた頃に"親がギルド長だから贔屓されてる"って言われてた事があって、それを気にしてギルド内では極力関わらないようにしてるのよ」
「なるほど、まぁ、子供の時はそういうイザコザもありますよね」
「そうね。
あ、ちょっと話がそれちゃたわね、ギルド長の私が同席しているのは、半分は確認の為、もう半分はユグラの教育の為ね」
「私のですか?」
「あなた魔物に詳しくないでしょ? だから使役登録が来たら主任に確認しなさい、って言ってたでしょ?」
「はい、だから主任に確認しました」
「それで、主任が、
"見たことの無い不思議な獣を使役登録しに来た冒険者がいる"
と、報告してきたので私が出てきたの。
まぁ、資料を確認して他にも理由が出来ちゃったけど、息子の友達に挨拶に出てきた訳じゃないのよ?」
「なるほど?」
「それでその子…やっぱり"精霊獣"よね?」
「はい、"地の精霊獣"でラテルといいます。
何で分かるんですか?」
「獣人なら普通の獣じゃない事はすぐ分かるわ、獣特有の気配や匂いが無いから違和感があるの。
まぁ、私の場合は"別の理由"だけど」
「別の理由?」
「私も使役しているのよ"精霊獣"を。
それで何となく雰囲気が、ね」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
535
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる