94 / 244
94話 幕間 顛末 2
しおりを挟む「なんですか!この状況は?! ガルフ!説明なさい!」
そろそろリルトを止めようかな、と思っていたところでお袋が訓練場に現れた。
「説明って言われてもなぁ、バカな親父が調子に乗って返り討ちにあったというか…」
子供の頃はデカくて強い親父に憧れていたが、大人になれば見えてくるものもある。
親父は恵まれた体格と獣人の能力に頼りきった何のひねりも無い戦い方しか出来ず、それなのに戦術やフォーメーションをバカにしていて、
「そんなモンに頼るのは弱い証拠だ」
などと言っていた。
冒険者見習いになって、同じ見習い達に「親に贔屓されてる」なんて陰口叩かれる事もあったが、大人の冒険者達はなぜか苦笑いだった。
大人になって分かったがあれは、贔屓どころか冒険者達に煙たがられている職員が親である俺を憐れんでいる態度だった。
それに気づいてからは、ギルドで親父と顔を合わせるのが嫌になり、やがてルティスタに護衛で行った時に仲良くなった今のメンバーと一緒に拠点をルティスタに移した。
気がつくとリルトは少し離れた場所でラテルを抱いて座っていて、ラテルは一生懸命リルトの顔を舐めている。
親父が入っていた穴はいつの間にか土が緩められ崩れていて、しこたま蹴られた親父はグッタリしているが、意識はあるようだ。
仕方なく俺は説明する。
・親父がリルトを無理矢理訓練場に誘った事。
・その際に教官権限を使うと脅迫した事。
・親父が"模擬戦は通常のルールだ"と宣言した事。
・反撃出来ないタイミングで模擬剣を首筋に当てられたのに、終了をわざと宣言せず無防備な リルトを攻撃した事。
その後、なぜかラテルと戦う事に執着した親父がリルトに反撃され今に至る…と。
「ち、違うんだセリアナ。
あのガキが汚い手を使って…俺は、精霊獣にも勝てるんだ…パルディオなんかより俺の方が…」
(パルディオ? 誰だ?)
子供の頃から変わらない若々しいお袋のこめかみに青筋が…
お袋が背後を振り返ると、そこには様子を見に来た職員が訓練場を覗き込んでいた。
「衛兵を呼びなさい、職権乱用による暴行犯罪が発生しました」
「おい、お袋さすがに…」
お袋は何も反応せず俺の前を通りすぎ、親父の前に立つと後ろ襟を持つ。
「セリアナ…」
…バサァー!
100㎏は超えていそうな親父の身体が、片手で穴から引き抜かれ土とともに宙に浮き、そのまま地面に叩きつけられる。
ドガァッ!
「グハッ!」
背中から叩きつけらた親父は気絶したようだ。
お袋も昔は冒険者だったとは聞いていたが…
今でも俺より強いんじゃねぇか?
「…こんなバカでも、昔は可愛いと思えたんですけどね…」
その後、俺や受付で見ていた職員などの証言で、親父は本当に衛兵に連れていかれてしまった。
その間にリルトはギルドの専属治療師から治療を受けた。
親父の暴走を最初に止めなかった事を少し後悔したが、お袋は。
「昔から多少は言われてましたが、最近 勤務態度や若い冒険者に対する暴言など目に余るところがあり、どうしようかと思っていたところでこの実害です。
身内だからなどと甘い対応は出来ません」
と、擁護するつもりは無いようだ。
リルトは腹部に打撲、転がされた時に擦り傷や口を切ったようだが重症では無い。
国としての対応はおそらく罰金刑程度だが、ギルドは犯罪者を雇うほど甘くない、たぶん親父は解雇されるだろう。
しかし、一番重い罰は…
「…"あの男"に冒険者ギルドは向いてなかった、と言う事ですね。
傭兵ギルドでも獣人国でも、力だけでのしあがれる所へ行って好きに生きる方が向いているでしょう」
お袋は完全に親父を見放した口調だ…
この国では、
"配偶者が犯罪を犯した場合、罪を犯していない側の申し立てがあれば、強制的に離婚が成立する"
という法律がある。
"鉱山送り"なんかになったら、帰ってくるのか来ないのかずっと分からないような状態になっちまうからだろう。
…ハッキリは言わないが、離婚するつもりだな。
本人は隠していたつもりだが、親父はお袋にベタ惚れだからこれが最大の罰だろうな。
なんだか力の抜けた俺はリルトを連れて宿へ帰る。
10
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました
たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。
「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」
どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。
彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。
幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。
記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。
新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。
この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。
主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。
※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる