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130話 新たな道標 21

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 追加のオークを戦闘と言えない不意打ちで処理して焚き火の所へ帰ると、頭に瑠璃を乗せたポラリスとラテルを抱いたレシアナさんが並んで話していた。
 オレのカモフラージュはキチンと片付けてある。

「おかえりリルト」
「キュキュ!」

「ただいま、あいつらはまだ動き出してない?」

「うん。
 さっき少しコッチの様子伺ってたみたいだけど出て来ないよ」


 オレはレシアナさんに顔を向ける。
「よし、じゃあ先手打って黙らせますか」

「そうね、行きましょうリルトくん」

 ラテルをポラリスに預け立ち上がるレシアナさん。

「じゃあちょっと行ってくるよ」

「うん」


 あいつらがここに出てくればアホエルフが騒ぎだす可能性もある、そうなればダークエルフやポラリスへの暴言を吐くだろうからわざわざそれを聞きたくないし、ポラリスに聞かせる必要も無い。




 "隼"のテントからは当然灯りが漏れている。

「ちょっといいかしら?」

 レシアナさんが中へ声をかけると、イリサという女性が顔を出しオレ達を見る。
 その顔には少し不安げな色が伺える。

「どうしました?」

「ちょっとトラブルがあってね、明日以降の事を話し合いたくて」

「…どうぞ」


 テントは大人8人くらいは入れそうな大型だが、荷物などもあるのでそこまで空きスペースは無い。
 就寝前なのに全員が装備を整えている事を突っ込まずオレとレシアナさんは入口付近に立つ。


「何かあったのかしら?」
 アホエルフがとぼけた問いかけをしてくる。

「先ほど近くの森からオークが4体現れました。
 討伐は完了していますが異常事態です」

 アホエルフは一瞬苦い顔をしたがニヤニヤし始める
「やっぱりダークエルフなんか連れてるからこんな事になるのよ。
 私の言った通りじゃない」


 アホエルフはレシアナさんではなくオレに顔を向けて話す、オレは無言を貫きレシアナさんが淡々と話を続ける。

「その事は後で。
 とにかく異常を知らせる事と、事後の対処に動く必要性もあるので予定を変更して一度王都に引き返します」

「あのダークエルフを置いて進めばいいじゃない」

 イラッとしたが表情には出さない。

「この事象がまた起きないか調査をする必要があります。
 派遣する人員を選定するなら王都ギルドの方がいいですから。
 それにここは重点警戒区域です、国に報告する必要もありますから引き返すのは決定事項です」

「…依頼はどうなるのよ?」

「まだ確定ではありませんが王都に戻ってこの事を報告した時点で一旦終了となる予定です。
 当然、依頼完遂として処理しますから報酬料に変動はありません」


 "隼"達の雰囲気がそこはかとなく明るくなる。
 2週間前後かかる予定だった依頼の報酬が2日で終わって貰えるんだからそりゃそうなる。

(…まぁ、貰えたらの話だけどな)


「分かったわ」

「ではお願いします」

 オレとレシアナさんはアホエルフがごとを吐く暇も与えずさっさとテントを出て焚き火に戻っていく。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 その後は淡々と引き返す行程を進めた。

 学者組やダニアさんにはレシアナさんが朝一番に説明して了承を得た。
 ダニアさんは知っていたが、学者組は高ランク冒険者の暴挙に相当驚いていた。

 無用な暴言は聞きたくないので、朝も昼休憩もポラリスは"隼"の前に姿を見せないようにした。
 アホエルフは標的が現れないので多少オレに突っかかって来たが当然無視。




 そしてルティスタへ帰還するはずだった旅は、くだらない理由でたったの2日であっけなく幕を閉じた。



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