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180話 ラスカリア 14
しおりを挟む最初オレは商品価値の低さから放置されてきたコボルドから何か作れればそれを商売にして、救済対策としてスラムの人を雇って販売しようくらいにふわっと考えていた。
そしてこのコボルドの干し肉を作ったんだけど。
臭みを消すために香辛料を…とか色々試行錯誤していくうちに、"創造錬金"であればそんな必要もなく臭みを"旨味"に、固い肉や筋を柔らかく、と自分の知る美味しいお肉のイメージを付与するだけで変換出来て、後はほんの少し調味料を足すだけでかなり美味しい干し肉が完成し、改めて創造錬金のぶっ壊れっぷりを思い知った。
であればついでに取れるだけの毛皮も…とやってみたら、こちらの方がメインになるような物が出来上がってしまった、という訳だ。
3人はそれぞれ毛皮を手に取り、撫でたり、広げてみたり、ひっぱったりしている。
「革部分は柔らかくしなやか、毛は均一に密集していて細く触りごごちも極上…そしてなんといっても」
ヘムスさんは毛皮を広げる。
「この均一に大きい面積。
どんな物に加工する際も充分使える面積がある」
「ちなみに、毛皮の作成段階で染料を混ぜれば色を付ける事も可能です」
「色んな色に出来るなら、オシャレなコートが出来そうですねぇ」
スザンナさんはのほほんとしているが、ヘムスさんは目を見開いている。
「これは…素晴らしい商材です。
かなりの価値があります、いや、これを高値で捌けないなら商人失格でしょう」
と、無言で毛皮を撫でていたロレンツさんがこちらを向き、
「でもこれも君の錬金術ありきなのでしょう?」
オレは静かに立ち上がり、ストレージを扉状に開く。
「じゃあそろそろこの事業の根幹となる部分を見せましょう。
みなさんこちらへ」
オレは順番に入室許可を出しながら3人をストレージ内に誘う。
レシアナさんは既に出入り自由なのでオレの横で見ている。
「これが伝説のアイテムストレージですか!」
「オシャレな部屋ですねぇ」
「こちらへどうぞ」
オレは最近の連日の酷使でさらに増えた扉の一つを開く。
扉の先は細長い通路になっていて、その先にはまた扉がある。
「こちらに試験の為、出来上がる工場を想定して設備を置いています。
まずは扉を入ってすぐのこの金属プレート、この足のマークの上で立ち止まって下さい」
「こ、こうかな? うわっ!」
ヘムスさんが金属プレートの上で立ち止まると、金属プレートが淡く光り、その光がヘムスさんを包む。
「おおっ!汗をかいていたシャツがサラサラに?」
ヘムスさんは自分の身体を撫で回している。
「"浄化"の魔道具です。
食品を扱う工場ですから、衛生的でないと」
「なるほど。
働く人間は全員ここを通りキレイにしてから作業に入るという訳ですね」
「そういう事です。
見てもらう為にヘムスさんには踏んでもらいましたが、皆さんは素通りしていいですよ。
この先は実際の配置とは違っているんですが、工程を見てもらう為にあえてそうしてます、じゃあ次の部屋へ」
全員が先へ進む。
「うわ!寒い!」
そこは何も置かれていない棚がいくつか配置された部屋。
「ここは倉庫ですね、室温を下げる魔道具が設置してあります。
加工前の材料や、出来上がった商品を保管します。
干し肉は常温でも充分保存可能ですが、ここならさらに長持ちします。
それになんといってもここに飴を保管しておけば1年は軽く保存出来ますから」
「なるほど、飴に使われている果物は季節毎に入手出来るものが変わりますから、ここに備蓄しておけば安定して一年中販売出来る、という事ですな」
「さすが商業ギルド長、鋭いですね。
じゃあここは寒いでしょうから早く次の部屋へ行きましょう」
奥へ進み次の部屋へ。
そこには長机のような台と、それに連結された大小の箱が置かれている。
「これは…?」
「じゃあ実演していきましよう」
オレは一番端の長机の先に立ち、手袋をはめるとストレージから1体のコボルドを机の上に出す。
「ひっ!」
スザンナさんが小さく悲鳴をあげる。
机の天板部分には革を巻いた棒が一面並べられていて、オレが軽くコボルドを押すとゆっくりと机の上を進んでいく。
地球の工場にあるローラーコンベアだ。
「おお、簡単に動かせますね」
「従業員は女性も多いでしょうから」
押されて進んでいくコボルドは、奥行き2m、長さ3mほどの箱に入っていく。
「で、このボタンを押します」
箱の前面にあるボタンを押すと、箱の逆側からゆっくりとコボルドが流れ出てくる。
「お、キレイになってますね」
ヘムスさんがコボルドを軽く撫でる。
「ここでまずコボルドの胃腸内にある不要なものを排除し、身体の内外に浄化をかけます、そして次へ」
コボルドを押し、次の奥行き2m、長さ6mほどの箱の中へ進ませる。
「ここで他の材料を投入します」
箱の前面にいくつか空いた投入口に塩、薬草、香草をストレージから出して入れてゆく。
「ここの目盛りを見て下さい」
オレは投入口の上にある目盛りが皆に見えるよう体勢をずらして、ゆっくり塩を投入していく。
「あ、目盛りが2になった」
「これでコボルド2体を加工出来るだけの塩が投入されました」
「なるほど、解りやすいですね」
「で、材料の投入が終わったらこのボタンを押します」
並んだ投入口の最後にあるボタンを押す。
すると、ゆっくりと箱の端から肉のブロックが、ボタンの先にある前面の大きな穴からは毛皮が出てくる。
「おお!」
「早い!もう出来たんですか?」
皆は出てきた商品を囲んでワイワイと話している。
オレはやり遂げた達成感から一人脱力していた。
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