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204話 ラスカリア 29
しおりを挟む「ピギー!」
…ガッ、ゴッゴッ!
オレはストレージを開き、中から鉄製の檻に入れたホーンラビットを取り出す。
検証に使う為あらかじめここに来る時に捕まえておいたが、まだガンガンと角で檻に突撃しており元気なようだ。
「まずはコイツで試してみよう」
キュベレーはため息を一つ。
「はぁ…"安全だ"と言っているのにおとうさまときたら…」
「まぁ、ちょっと怖いのは確かだけどな。
でもこういった"使用者の不安を取り除くため安全性をきちんと明示する"っていうのも制作者の大切な義務だぞ?」
「…なるほど。自分で納得しているだけではダメ、という事ですね?」
「そういう事」
キュベレーは頷くと檻を受け取り自らのストレージに入れる。
「では、予定通りにまず宿のワーディル老の所へ」
と、言うとストレージの扉と同時にキュベレーの姿が消える。
「どうだろうね?」
「まぁ、一応安全なのはボクも信用してはるんだけど、実際に見て安心したいっていうのも大きいね」
そうこう話していると5分ほど経った頃、大きな精霊力を感じ、その瞬間キュベレーが元いた場所に現れる。
「ただいま戻りました」
キュベレーはおもむろにストレージから紙を一枚取り出してオレに渡す。
「ワーディル老からです」
キュベレーはオレにメモを渡すとまた消えてしまった。
たぶん違う検証に行ったんだろう。
ファル爺からのメモ書きには、無事に着いたこと、ホーンラビットを見る限り特に異常が無い事等が書かれていた。
また、キュベレーが出現する直前に強い精霊力を感じた事も書き添えられている。
と、また強い精霊力を感じたところでキュベレーが戻って来た。
「只今戻りました」
「おかえり、何か分かった事は?」
「ストレージの扉を開けたままで精霊界への侵入、また出発をしても内部には何も影響が無いようです」
「ふむ…ホーンラビットは?」
「さて、次はどういう検証をしましょうか?」
「……」
キュベレーは遮るように言いながら檻を自分の身体で遮るように取り出した。
先ほどと微妙に違うデザインの檻に、先ほどの薄茶色のホーンラビットとは違う白っぽいホーンラビットの入った檻を…
「…まぁいいや、次は連続で転移して問題無いか、かな? 色々な場所へ…5~6回転移してみて。
あ、後、転移してくる直前にけっこう精霊力の反応が強く出るから、放出を抑えられるかも試して?」
「分かりました。 では行ってきます」
キュベレーは檻を視線から遮りながら素早く消える。
「リルト…」
ポラリスにも檻がキチンと見えていたらしく不安げにオレの名前を呼ぶ。
「まぁ…何かやったんだろな。 後で問いたださないとね」
その後も水の中から、高い山の上から等色々なシチュエーションも試して一旦休憩とした。
三人の中央にはランチョンマットが置かれ、お菓子と果物が並んでいる。
「…で?」
オレはキュベレーを見る。
「…そんな怖い顔で見ないで下さい…」
キュベレーはやっぱり何かやらかしたようで、ちょっとシュンとしている。
「じゃあオレの用意したホーンラビットに何をして、どうなったのかちゃんと言いなさい」
「…おとうさまに精霊界をいっぱい見てもらいたくて…
ストレージが大丈夫なら、わたしの障壁でも平気だろうと、檻ごと障壁に包んだ状態でストレージから出してみました」
「結果は?」
「…水の中に角砂糖を入れたように、障壁ごと崩れて周囲の精霊力に溶け込んで消えてしまいました…」
ポラリスは今更危険性に気づいたようで青くなっている。
「はぁ… キュベレー。
失敗するのはいいんだよ。 ちゃんと"出来る事出来ない事"の線引きをするのに必要な事なんだから。
だけど隠すのはダメ。
精霊魔道具士になりたいんでしょ?
"不都合な事があると隠す"と思われたら、誰がそいつの魔道具を信用する?」
「はい…ごめんなさいおとうさま」
「とりあえずある程度の安全性は分かった。
でも危険性が存在する事も分かった。 やっぱり今のところ緊急時以外 人間は使わない方がいいね」
「残念…」
ポラリスは転移にちょっと未練があるようだ。
「まぁ、やる事が立て込んでるからダンジョン探索に使おうかと思っただけだから、それらの手が離れたらじっくり進めればいいよ」
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