朝チュン転生 ~地味に異世界を楽しみたいのに女神サマが邪魔をします~

なる

文字の大きさ
236 / 244

236話 幕間 スラムの娘 2

しおりを挟む

 コボルドの剥ぎ取りは軽く体験してすぐに終わった。

(…良かった)


 次は商品を作る。
 作る、とは言っても実際の作っているのはリルト様の魔道具で、皆はその補助だ。

 飴を作る魔道具もコボルドを使う魔道具も3台づつ。
 商品の供給はギリギリだけど、原材料の砂糖とコボルドが足りないらしい。
 冒険者ギルドでは大小のマジックバッグの貸出も始めて買い取り強化をしているらしく、審査を通って借りる許可の貰える冒険者達はかなり儲かっているとギルド職員の人が言っていた。


 砂糖と果物を投入して飴を作り、冷蔵倉庫に入れる。
 塩と薬草、いくつかの香草などを入れコボルドの干し肉を作る。

 最初は予定に無かったらしいけど、ここで私達が普段食堂で食べているお肉も"作っている"。
 適度な脂が乗っていて、丁度いい噛みごたえの美味しいお肉だけど、元冒険者のスラム住人は、
"これはコボルドの肉だけどコボルドの肉じゃねぇから、外でコボルドの肉を食べようなんて思うなよ!"
と、よく分からない事を言っていた。

 まぁ要するに、この魔道具で加工していない素のままのコボルド肉は食べれたもんじゃない、と言う事らしい。


 そして一番大事なのが"コボルドの毛皮"。
 見ても触ってもかなり上等なものなのは、ものを知らない私にも分かるほどの商品で、実際かなりの高額で取引されているらしい。
 しっかりした木箱に一枚一枚の間に薄紙を引き丁寧にしまわれている。

 次から次へと商品が作られて行き、すぐに倉庫がいっぱいになってしまうのでは?と思うが、倉庫の棚が埋まったのは工場稼働から最初の3日ほどで、その後は作るそばから売れてしまい売り切り御免状態だそうだ。


 今度は工場の敷地端に作られた直売商店へ行く。

 スラムと一般区域の境目になるこの場所は、以前は危険な事もあり一般の人が近づかない場所だったが、今では一般の人も商人もひっきりなしに訪れる場所になっている。


 店に入ると一般の人がお肉や飴を、冒険者が飴や干し肉を、商人が飴と干し肉と毛皮をそれぞれ次から次へと購入して大盛況だ。

 ここでは比較的若い者達が店員をしていて、乱暴な冒険者や小狡い商人に足元をすくわれないのかと思うが、店の見張りには教会から神殿騎士の方が来て下さるので、トラブルは起きた事が無いらしい。


 衣食住を整えて、働く場所も提供して、敷地内に学び舎があったり、神殿騎士の方が護衛にいてくれたり…
 リルト様の作ってくださったこの場所は、今までのスラムから考えたら天国のような場所で、全ての住人が夕食を食べ終わると、その時間だけ食堂に置かれているリルト様の木像に感謝の祈りを捧げてから自宅へ帰るのが習慣になっている。

 その木像は"中央教会"という、偉い神官の方が集まる場所から来た立派な神殿騎士の方がくださった物らしく、その街ではリルト様の木像や絵姿を皆持っていて、隠れてそっと祈りを捧げるのが流行しているそうだ。

(リルト様の絵姿…私も欲しいなぁ)



ーーーーーーーーーー

 夕食後、食堂と同じように住人皆で使うように作られた大きな湯浴み場で身を清め、母と妹は自宅へ帰って行った。


 私はまだやる事がある、というかこれからが本番だ。


 食堂の2階にある集会所へ入ると、朝会った若い娘達が10数人ほど集まっていた。
 そこへ"リルト様の娘"という精霊様が入って来る。
 日によって来る精霊様は違ったりするが、今日はよく来られる赤い髪のヘスティア様と、黄緑色の髪のアウラ様だ。

 精霊様が入って来ると、皆思い思いの席へつく。


「では今日も始めて行きましょうか」


 ここにいる娘達は自分も含めてリルト様に多大な恩義(…と好意)を感じて何かさせて欲しいと集まった者達だ。

 精霊様達はその気持ちに応えて下さり、私達はここでメイドの修行をつけてもらっている。
 精霊様達も、ラスカリアの拠点、飛空艇内、これから増えていく他の拠点等、様々な場所で精霊では無い使用人が必要な場合もある、と考えていたらしく、私達の願いと精霊様達の希望が噛み合った形だ。


 ここでの勉強は昼間の学び舎や工場等は比べ物にならないくらい高度で厳しい。
 教養、所作、言葉遣いなどあらゆる事を学ばなければならない。
 しかしこれをクリアすれば、リルト様にお茶を淹れて差し上げたり、…お召変めしかえを手伝ったり、…覚えて頂いて、し、親しくなれたりするかもしれない…


「…ひょっとしたら、お嫁さんの一人になれるかも知れませんね?」


 精霊様の呟きに娘達の目の輝きが変わる、私もたぶん変わっているだろう。

「ふ、ふふふ」
「「「ふふふ…」」」

 リルト様の側にはべる者として、醜く争ったりはしない、私達は笑顔で牽制けんせいし合う。


「「ふふふ…」」
 精霊様二人も微笑んでいる。


(あれぇ?"娘"じゃないの?精霊様達も参戦なの?)



 周りは強敵揃いだけど…負けない!




しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

処理中です...