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236話 幕間 スラムの娘 2
しおりを挟むコボルドの剥ぎ取りは軽く体験してすぐに終わった。
(…良かった)
次は商品を作る。
作る、とは言っても実際の作っているのはリルト様の魔道具で、皆はその補助だ。
飴を作る魔道具もコボルドを使う魔道具も3台づつ。
商品の供給はギリギリだけど、原材料の砂糖とコボルドが足りないらしい。
冒険者ギルドでは大小のマジックバッグの貸出も始めて買い取り強化をしているらしく、審査を通って借りる許可の貰える冒険者達はかなり儲かっているとギルド職員の人が言っていた。
砂糖と果物を投入して飴を作り、冷蔵倉庫に入れる。
塩と薬草、いくつかの香草などを入れコボルドの干し肉を作る。
最初は予定に無かったらしいけど、ここで私達が普段食堂で食べているお肉も"作っている"。
適度な脂が乗っていて、丁度いい噛みごたえの美味しいお肉だけど、元冒険者のスラム住人は、
"これはコボルドの肉だけどコボルドの肉じゃねぇから、外でコボルドの肉を食べようなんて思うなよ!"
と、よく分からない事を言っていた。
まぁ要するに、この魔道具で加工していない素のままのコボルド肉は食べれたもんじゃない、と言う事らしい。
そして一番大事なのが"コボルドの毛皮"。
見ても触ってもかなり上等なものなのは、ものを知らない私にも分かるほどの商品で、実際かなりの高額で取引されているらしい。
しっかりした木箱に一枚一枚の間に薄紙を引き丁寧にしまわれている。
次から次へと商品が作られて行き、すぐに倉庫がいっぱいになってしまうのでは?と思うが、倉庫の棚が埋まったのは工場稼働から最初の3日ほどで、その後は作るそばから売れてしまい売り切り御免状態だそうだ。
今度は工場の敷地端に作られた直売商店へ行く。
スラムと一般区域の境目になるこの場所は、以前は危険な事もあり一般の人が近づかない場所だったが、今では一般の人も商人もひっきりなしに訪れる場所になっている。
店に入ると一般の人がお肉や飴を、冒険者が飴や干し肉を、商人が飴と干し肉と毛皮をそれぞれ次から次へと購入して大盛況だ。
ここでは比較的若い者達が店員をしていて、乱暴な冒険者や小狡い商人に足元を掬われないのかと思うが、店の見張りには教会から神殿騎士の方が来て下さるので、トラブルは起きた事が無いらしい。
衣食住を整えて、働く場所も提供して、敷地内に学び舎があったり、神殿騎士の方が護衛にいてくれたり…
リルト様の作ってくださったこの場所は、今までのスラムから考えたら天国のような場所で、全ての住人が夕食を食べ終わると、その時間だけ食堂に置かれているリルト様の木像に感謝の祈りを捧げてから自宅へ帰るのが習慣になっている。
その木像は"中央教会"という、偉い神官の方が集まる場所から来た立派な神殿騎士の方がくださった物らしく、その街ではリルト様の木像や絵姿を皆持っていて、隠れてそっと祈りを捧げるのが流行しているそうだ。
(リルト様の絵姿…私も欲しいなぁ)
ーーーーーーーーーー
夕食後、食堂と同じように住人皆で使うように作られた大きな湯浴み場で身を清め、母と妹は自宅へ帰って行った。
私はまだやる事がある、というかこれからが本番だ。
食堂の2階にある集会所へ入ると、朝会った若い娘達が10数人ほど集まっていた。
そこへ"リルト様の娘"という精霊様が入って来る。
日によって来る精霊様は違ったりするが、今日はよく来られる赤い髪のヘスティア様と、黄緑色の髪のアウラ様だ。
精霊様が入って来ると、皆思い思いの席へつく。
「では今日も始めて行きましょうか」
ここにいる娘達は自分も含めてリルト様に多大な恩義(…と好意)を感じて何かさせて欲しいと集まった者達だ。
精霊様達はその気持ちに応えて下さり、私達はここでメイドの修行をつけてもらっている。
精霊様達も、ラスカリアの拠点、飛空艇内、これから増えていく他の拠点等、様々な場所で精霊では無い使用人が必要な場合もある、と考えていたらしく、私達の願いと精霊様達の希望が噛み合った形だ。
ここでの勉強は昼間の学び舎や工場等は比べ物にならないくらい高度で厳しい。
教養、所作、言葉遣いなどあらゆる事を学ばなければならない。
しかしこれをクリアすれば、リルト様にお茶を淹れて差し上げたり、…お召変えを手伝ったり、…覚えて頂いて、し、親しくなれたりするかもしれない…
「…ひょっとしたら、お嫁さんの一人になれるかも知れませんね?」
精霊様の呟きに娘達の目の輝きが変わる、私もたぶん変わっているだろう。
「ふ、ふふふ」
「「「ふふふ…」」」
リルト様の側に侍る者として、醜く争ったりはしない、私達は笑顔で牽制し合う。
「「ふふふ…」」
精霊様二人も微笑んでいる。
(あれぇ?"娘"じゃないの?精霊様達も参戦なの?)
周りは強敵揃いだけど…負けない!
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