【R18】男装がバレていると私だけが知らない

黒うさぎ

文字の大きさ
2 / 7

2.ピオニエ騎士学校

 ピオニエ騎士学校。
 アルバ王国にある名門校であり、将来の王国騎士達が切磋琢磨しながら己を鍛える場所である。
 名門クラージュ家の子供として期待されている私も当然ながらこの学校へと入学した。
 女であるということを偽って。

 女が家督を継げないのと同じように、女が騎士になることもない。
 家督と違い、法律上は女であろうとも騎士になること自体は可能だ。
 しかし、人間という生物の性質上、同じように鍛えれば強いのはやはり体格に優れた男である。
 女が武で男に勝つには、並みならぬ努力と才能が必要となる。
 この国の気風は男が働き、女は家を守るというのが一般的である。
 その流れに逆らってまで騎士になろうという女は、アルバ王国建国から今に至るまでついぞ一人も現れなかった。
 それが女は騎士になれないという話の正体だ。

 いくら男装をしようとも、それで強くなることはない。
 私が弱ければ、男だと偽ってまでクラージュ家を継ぐ意味がなくなってしまう。

 だが、私には名門クラージュの血が流れていた。
 それだけではない。
 幼少の頃から王国騎士団長直々に血の滲むような特訓を受けてきたのだ。
 体格こそ他の男たちに劣るが、それを補ってあまりあるほどの技術を私は体得した。

「はああああっ!」

 一人の男が木剣を両手で上段に掲げたまま突っ込んでくる。
 そのあまりにも緩慢で無防備な姿に思わず溜め息が出そうになる。
 隙だらけの胴に一発叩き込んでやってもいいがそれでは私の練習にならない。

 私は右手で持った木剣を男の振り下ろす木剣の軌道上に置いた。
 木剣同士が衝突すると思ったのだろう。
 衝撃を堪えるために男の身体に力が入るのがわかった。

 互いの木剣が接触し甲高い音を――立てることはなかった。
 私は流れるように木剣を傾け、男の木剣の軌道を逸らしたのだ。
 突然標的を失った男はその姿勢を崩した。
 時間にすれば瞬きほどの隙だが、それだけあれば十分だ。
 崩れた男の体勢に合わせるように足を出してやると、男は受け身をとる余裕もなく地面にキスをした。

 無様に転がろうとも、それでも騎士を志す者だ。
 すぐさま起き上がろうとするが、そんなことを私が許すはずがない。
 男の手に持つ木剣を弾くと男の背に乗り手を捻りあげ、その首元に己の木剣を添えた。

「そこまで! 勝者、フラウ!」

 訓練場に響いた教官の声に、私は男の上から下りた。

「いや~、やっぱりフラウは強いな。さすがは将来の王国騎士団長様だぜ」

 倒れていた男、カプノスが埃を払いながら立ち上がる。

「カプノス、お前はまだまだ鍛練が足りないな」

「相変わらず厳しいね~、フラウは」

「っ!」

 まるで今の模擬戦の勝者を労うかのように、カプノスが私の肩に腕を回してきた。

「おい! 離れろ!」

 こうして肩を組まれると良くわかる。
 いくら強くなろうとも、私の身体は女なのだと。
 私より一回りは大きい体格に、鎧のようにがっしりとした筋肉。
 そんな肉体を持つカプノスもこの騎士学校では標準的な体格だ。
 私がどれだけ欲しようとも手に入れることのできない物を持っているカプノスに、どうしようもない苛立ちが沸き上がる。

「こんなに小さいのにあんなに強いなんて不思議だよな」

 私の身体の大きさを確かめるように抱き寄せるカプノス。
 ふわりとカプノスの男臭い汗の匂いが鼻腔をついた。

「いい加減に、しろっ!」

「がぼっ!」

 私の肘鉄を鳩尾に受けたカプノスはその場に崩れ落ちた。

「ふざけている時間があったら走り込みでもしていろ」

 私はうずくまるカプノスをその場に残して、その場を離れた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

禁断

wawabubu
恋愛
妹ののり子が悪いのだ。ああ、ぼくはなんてことを。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?