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2.ピオニエ騎士学校
ピオニエ騎士学校。
アルバ王国にある名門校であり、将来の王国騎士達が切磋琢磨しながら己を鍛える場所である。
名門クラージュ家の子供として期待されている私も当然ながらこの学校へと入学した。
女であるということを偽って。
女が家督を継げないのと同じように、女が騎士になることもない。
家督と違い、法律上は女であろうとも騎士になること自体は可能だ。
しかし、人間という生物の性質上、同じように鍛えれば強いのはやはり体格に優れた男である。
女が武で男に勝つには、並みならぬ努力と才能が必要となる。
この国の気風は男が働き、女は家を守るというのが一般的である。
その流れに逆らってまで騎士になろうという女は、アルバ王国建国から今に至るまでついぞ一人も現れなかった。
それが女は騎士になれないという話の正体だ。
いくら男装をしようとも、それで強くなることはない。
私が弱ければ、男だと偽ってまでクラージュ家を継ぐ意味がなくなってしまう。
だが、私には名門クラージュの血が流れていた。
それだけではない。
幼少の頃から王国騎士団長直々に血の滲むような特訓を受けてきたのだ。
体格こそ他の男たちに劣るが、それを補ってあまりあるほどの技術を私は体得した。
「はああああっ!」
一人の男が木剣を両手で上段に掲げたまま突っ込んでくる。
そのあまりにも緩慢で無防備な姿に思わず溜め息が出そうになる。
隙だらけの胴に一発叩き込んでやってもいいがそれでは私の練習にならない。
私は右手で持った木剣を男の振り下ろす木剣の軌道上に置いた。
木剣同士が衝突すると思ったのだろう。
衝撃を堪えるために男の身体に力が入るのがわかった。
互いの木剣が接触し甲高い音を――立てることはなかった。
私は流れるように木剣を傾け、男の木剣の軌道を逸らしたのだ。
突然標的を失った男はその姿勢を崩した。
時間にすれば瞬きほどの隙だが、それだけあれば十分だ。
崩れた男の体勢に合わせるように足を出してやると、男は受け身をとる余裕もなく地面にキスをした。
無様に転がろうとも、それでも騎士を志す者だ。
すぐさま起き上がろうとするが、そんなことを私が許すはずがない。
男の手に持つ木剣を弾くと男の背に乗り手を捻りあげ、その首元に己の木剣を添えた。
「そこまで! 勝者、フラウ!」
訓練場に響いた教官の声に、私は男の上から下りた。
「いや~、やっぱりフラウは強いな。さすがは将来の王国騎士団長様だぜ」
倒れていた男、カプノスが埃を払いながら立ち上がる。
「カプノス、お前はまだまだ鍛練が足りないな」
「相変わらず厳しいね~、フラウは」
「っ!」
まるで今の模擬戦の勝者を労うかのように、カプノスが私の肩に腕を回してきた。
「おい! 離れろ!」
こうして肩を組まれると良くわかる。
いくら強くなろうとも、私の身体は女なのだと。
私より一回りは大きい体格に、鎧のようにがっしりとした筋肉。
そんな肉体を持つカプノスもこの騎士学校では標準的な体格だ。
私がどれだけ欲しようとも手に入れることのできない物を持っているカプノスに、どうしようもない苛立ちが沸き上がる。
「こんなに小さいのにあんなに強いなんて不思議だよな」
私の身体の大きさを確かめるように抱き寄せるカプノス。
ふわりとカプノスの男臭い汗の匂いが鼻腔をついた。
「いい加減に、しろっ!」
「がぼっ!」
私の肘鉄を鳩尾に受けたカプノスはその場に崩れ落ちた。
「ふざけている時間があったら走り込みでもしていろ」
私はうずくまるカプノスをその場に残して、その場を離れた。
アルバ王国にある名門校であり、将来の王国騎士達が切磋琢磨しながら己を鍛える場所である。
名門クラージュ家の子供として期待されている私も当然ながらこの学校へと入学した。
女であるということを偽って。
女が家督を継げないのと同じように、女が騎士になることもない。
家督と違い、法律上は女であろうとも騎士になること自体は可能だ。
しかし、人間という生物の性質上、同じように鍛えれば強いのはやはり体格に優れた男である。
女が武で男に勝つには、並みならぬ努力と才能が必要となる。
この国の気風は男が働き、女は家を守るというのが一般的である。
その流れに逆らってまで騎士になろうという女は、アルバ王国建国から今に至るまでついぞ一人も現れなかった。
それが女は騎士になれないという話の正体だ。
いくら男装をしようとも、それで強くなることはない。
私が弱ければ、男だと偽ってまでクラージュ家を継ぐ意味がなくなってしまう。
だが、私には名門クラージュの血が流れていた。
それだけではない。
幼少の頃から王国騎士団長直々に血の滲むような特訓を受けてきたのだ。
体格こそ他の男たちに劣るが、それを補ってあまりあるほどの技術を私は体得した。
「はああああっ!」
一人の男が木剣を両手で上段に掲げたまま突っ込んでくる。
そのあまりにも緩慢で無防備な姿に思わず溜め息が出そうになる。
隙だらけの胴に一発叩き込んでやってもいいがそれでは私の練習にならない。
私は右手で持った木剣を男の振り下ろす木剣の軌道上に置いた。
木剣同士が衝突すると思ったのだろう。
衝撃を堪えるために男の身体に力が入るのがわかった。
互いの木剣が接触し甲高い音を――立てることはなかった。
私は流れるように木剣を傾け、男の木剣の軌道を逸らしたのだ。
突然標的を失った男はその姿勢を崩した。
時間にすれば瞬きほどの隙だが、それだけあれば十分だ。
崩れた男の体勢に合わせるように足を出してやると、男は受け身をとる余裕もなく地面にキスをした。
無様に転がろうとも、それでも騎士を志す者だ。
すぐさま起き上がろうとするが、そんなことを私が許すはずがない。
男の手に持つ木剣を弾くと男の背に乗り手を捻りあげ、その首元に己の木剣を添えた。
「そこまで! 勝者、フラウ!」
訓練場に響いた教官の声に、私は男の上から下りた。
「いや~、やっぱりフラウは強いな。さすがは将来の王国騎士団長様だぜ」
倒れていた男、カプノスが埃を払いながら立ち上がる。
「カプノス、お前はまだまだ鍛練が足りないな」
「相変わらず厳しいね~、フラウは」
「っ!」
まるで今の模擬戦の勝者を労うかのように、カプノスが私の肩に腕を回してきた。
「おい! 離れろ!」
こうして肩を組まれると良くわかる。
いくら強くなろうとも、私の身体は女なのだと。
私より一回りは大きい体格に、鎧のようにがっしりとした筋肉。
そんな肉体を持つカプノスもこの騎士学校では標準的な体格だ。
私がどれだけ欲しようとも手に入れることのできない物を持っているカプノスに、どうしようもない苛立ちが沸き上がる。
「こんなに小さいのにあんなに強いなんて不思議だよな」
私の身体の大きさを確かめるように抱き寄せるカプノス。
ふわりとカプノスの男臭い汗の匂いが鼻腔をついた。
「いい加減に、しろっ!」
「がぼっ!」
私の肘鉄を鳩尾に受けたカプノスはその場に崩れ落ちた。
「ふざけている時間があったら走り込みでもしていろ」
私はうずくまるカプノスをその場に残して、その場を離れた。
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