【R18】男装がバレていると私だけが知らない

黒うさぎ

文字の大きさ
6 / 7

6.右手が隠していたもの

「それで、ナニを隠すのはわかるけどよ。何で胸まで隠してるんだ? 女じゃあるまいし」

「それは……、こっちも恥ずかしいから」

「恥ずかしいって、ナニならともかくそれは繊細すぎねぇか?」

「うっ……」

 確かに訓練後など、半裸になって汗を拭っている者たちを見かけることはよくある。
 胸を見られて恥ずかしいという男も探せばいるだろうが、あまり一般的な感覚ではないのだろう。

「なあ、ちょっと見せてみろよ」

 後ろから抱きつくように、カプノスの手が胸を覆う私の右腕を掴んだ。

「いや、ちょっと離せっ!」

「いいだろ、別に減るもんじゃないし。別に筋肉がなくたって笑ったりしねぇからさ」

(筋肉じゃなくて、もっと別のものがあるんだよっ!)

 カプノスはいつものスキンシップの延長線上でじゃれているだけなのかもしれないが、私は必死だ。
 いくらなんでも胸を見られて女だとバレないはずがない。

 腕を剥がされまいと足掻くが、やはり純粋な腕力ではカプノスに劣っている。
 拮抗はすぐに崩れ、私の胸はカプノスの前に晒された。

(見られた……)

 羞恥と後悔とで頭の中がくらくらする。
 これは悪い夢だと思っても、下を向けばそこには確かな膨らみとその頂きに咲く桃色の蕾がはっきりと見えた。

 終わりだ。
 学校での生活もクラージュ家の跡継ぎとしても。
 男として築き上げてきた場所に、女の私の居場所はない。

 濡れた髪から水滴が落ちる。

「なんだ、しっかり肉ついてるじゃねぇか」

「……?」

 何を言っているんだ?

「でも確かに変な肉のつき方してるな。だから恥ずかしがってたのか」

 まさかこの胸の膨らみを、筋肉だと思っているのか?
 そんなことありえるのだろうか。

 確かに私の胸は特別大きいわけではない。
 しかし、かといって無いわけではないのだ。
 しっかりとお椀型の膨らみがある。
 いくらなんでもこの胸を筋肉と誤解するなんて無理がありすぎる。

 そこで私はひとつの仮説を思いついた。
 ここは名門ピオニエ騎士学校だ。
 ここに足を踏み入れるものは私がそうであったように、幼い頃から鍛練に生活の全てをかけてきたはずだ。
 例えば私のように母親がいない家庭環境で育った者ならば、女の裸体どころか、女とろくに接点を持つことのないまま今まで過ごしてきた可能性があるのかもしれない。
 現実にそんなことありえるのかと思うが、カプノスの反応から察するにそうとしか思えない。

 女の胸を見たことがないから、私の胸を見ても女だと気がつかないのだ。

 女だとバレなくてほっとしたような。
 胸を見せても女だとバレなかったことに憤りを感じるような。
 モヤモヤとしたものが胸の内を渦巻いた。

「……もういいだろ。手を離してくれないか」

「ああ、わりぃ」

 自由になった右腕でさっとむねを隠すと、私はそのままカプノスの脇を抜けて脱衣場へと駆けていった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。