ロストソードの使い手

しぐれのりゅうじ

文字の大きさ
17 / 102
ギュララ編

十七話 グリフォドールと林原空

しおりを挟む
「良かったわ、大したことなくたどり着いて」
「僕、死にかけたんですけど」
「死んでないからだーいじょぶなんだよ」

 その結論はたくましすぎる。この人達は一体どんな修羅の道を歩んできたんだ。異世界ビギナーとベテラン差を感じる。

「村って中は安全なの?」
「うん、村には結界があるから魔獣は入りこまないよ」
「よしっ早く中に入ろう」

 つまり、さっさと村に避難すれば悪夢の通り魔獣に連れ去られる可能性をゼロにできる。この世界は受け身では駄目な気がするし、入口はすぐそこ。僕は二人よりも前に出て、足早に開けた空間に出た。

「ゆ、ユウ……離れちゃ」
「……うん?」

 アオの引き止める声を振り切って進む。すると、上空から羽ばたく音がして、見上げると青色の巨大な鳥のような魔獣がこちらに下降していた。

「やばっ……」

 それを認知した瞬間に僕は踵を返して二人の後ろに隠れた。

「……あんた少しはプライドみたいなの?」
「離れるなと言われていたの思い出しました」
「あはは……正しい判断だと思うよ。あの子はグリフォドールって言う魔獣で結構強いからね」

 その魔獣は、何かを足で掴んでいたらしくそれを地面に投げ落としてから着陸する。
 グリフォドールは、鷹の顔と翼に、身体はライオンのようでいて猛獣の手と鋭い爪を持ち合わせていた。その姿を端的に言えばゲームに出てくるようなグリフォンだ。大きさは僕の背を超えていて、遠くにいるのに威圧感がある。落とされたのは、銀色の毛皮の人狼のような姿をしていて、ピクリとも動かない。

「あれってウルフェンよね。こっちの島に来て襲われたのかしら」
「わからないけど……少なくとも彼にはもう命はなさそう」

 死者には会っているけれど死体は初めて見る。あんな風になるんだと冷静に観察していた自分がいて少し驚く。

「ウルフェンって魔獣?」
「ううん、テーリオ族の人。あの人狼姿は変身している状態だね」

 そんな会話していると、地上で羽根を休めてるグリフォドールのスカイブルーの鋭い目がギロリと僕を睨んだ。

「何か、嫌な予感する……」
「良い感してるじゃない。グリフォドールは人型の生き物を連れ去る習性があるのよ。でも人型のぬいぐるみとか人形も対象みたいで、それを身代わりにできたりもするの。ちょっと親近感が湧くわ。あんたもそう思うでしょ?」
「わかりますけど、それどころじゃないです!」

 何故この状況で共感を求めてくるのか。いくら自分が対象じゃなくても、少しくらい配慮して欲しい。

「ユウ、絶対に離れないでよ」

 グリフォドールは羽根を大きく羽ばたかせて、空中に滞空し出す。そして鳥類が発する耳に刺さる高い鳴き声が空気を震わせた。

「来たっ……」

 羽根を一度力強く動かすと一気に空中を滑って強襲してくる。

「レイアちゃん力借りるよ……はぁぁぁ!」

 アオは白銀に光を帯びたロストソードを横一閃。銀色の斬撃が撃ち込まれた。それは途中で姿を変え二つに分かれる。

「ピャァァ……」

 グリフォドールは回避しようとするも、同時に二つが襲いかかり、判断が遅れ顔面にもろに喰らう。それに、驚いたのか方向転換し空高くに逃げ出した。

「逃さないから!」

 すかさず、桃奈さんが赤い魔法陣を発生させて、そこから巨大な火球を発射した。背についた羽に直撃して、そのまま力なくさっきまでの場所に墜落する。

「トドメっ!」

 アオは刀身を橙色に変えて、ロストソードで斬り払う。三日月型の光は直線上にいる魔獣を捉えていた。

「ピャアアァァ!」

 だが地面スレスレの所で態勢を安定させると、羽を閉じて防御。それから足でウルフェンを掴むと飛び去ってしまう。

「やばっ!」
「大きさのくせにすばしっこいわね」

 逃すまいとアオと桃奈さんは連続で攻撃するも旋回と急停止で上手く躱されてしまい、グリフォドールは遠くに逃げてしまった。

「……流石に見過ごせないよね」
「ミズちゃん?」
「ちょっと探してくるから先行ってて。別の島に移るほどの体力はまだないだろうから」

 それだけ言い残してアオは森の中に消えていった。それで僕と桃奈さんの二人きりなってしまう。

「行っちゃいましたね」
「強い上に優しくて本当にかっこいいわ……」

 アオの行動に感銘を受けたのか恍惚な表情をしている。

「よし、あたし達もミズちゃんに負けちゃ駄目よね! さっさと村に行くわよ」
「はい」

 突然の出来事に手間取ってしまったが、僕達は村へと足を踏み入れた。
 ウルブの村は四角に囲われた柵の中にあり、自然に溢れていた。建てられている家々のほとんどが木で組み立てられていて、田畑がいくつもあり、他にも色々な植物が植えられている。道もほとんど舗装されていなく、自然のカーペットだった。人工的な物と言えば街灯と中心に置かれている女神像と時計。それはセントラルパークと同じものだった。人の数はまばらで、ほぼ全ての人が何らかの動物の特徴を持ち合わせている。
 ただ一人だけ、女神像の前にいる男性は人間の耳をしていて。

「ソラくん!」

 桃奈さんは彼を見ると弾んだ声で名前を呼んで駆け寄った。

「愛理……ミズアを呼んでこれたのか?」

「ええ。けれど、ちょっとやる事ができてしまって少し遅れて来るわ」

「そうか。それで……彼は?」

 二人の会話を少し後ろで見ていると話の対象がアオから僕に。

「日景優羽。向こうの世界から来た子よ」
「……そうか」

 キリッとした切れ長の目が僕を見る。どこか圧のようなものを感じて、少し緊張してしまう。

「こ、こんにちは」
「ああ」
「……」

 それだけで会話は途切れる。何か続けようとしたいが、話題が見つからず言葉は出なかった。こちらから自己紹介でもした方がいいのだろうか。

「彼は林原空っていうの。あたし達と同じくこっちの世界にやって来た一人よ」

 桃奈さんが無言状態を貫いて彼のことを紹介してくれた。林原さんは、顔さシュッとしてパーツ一つ一つが整っていて美形だった。黒い瞳に黒髪でセンター分けをしている。身長は僕よりも高く、細身ながらもどこか力強さがあって。服装はシンプルな白のシャツに黒の長ズボンで、スタイルの良さがよりわかる感じになっている

「ふふっ、ソラくんはクールな感じとか素敵なのよね。それに、実は凄く優しい所とかも本当最高って感じで」
「……」

 表情をほころばせながらそう褒めちぎる。桃奈さんのその感じは、アオといる時と同じもので。対して、褒められている本人は表情は変わらないものの、恥ずかしそうに顔を逸らした。

「もしかして林原さんのことも……」
「もちろん、ミズちゃんと同じくらい愛してるわ!」
「そ、そうですか」

 堂々とそう言えてしまうメンタルが凄いと思ってしまう。自分もできたならと羨ましさもあった。

「でも、だからなのよ。あんたの気持ちに応えられないのは。好きになるのは二人までって決めてるから。ごめんなさいね」
「……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~

今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。 大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。 目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。 これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。 ※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...