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マルタの計らい
しおりを挟む騎士団見学から戻った翌日の朝、私は自室で朝食を済ませていた。
昨日訓練場で見た、黙々と剣を振るカイルの姿が、ふと脳裏をよぎる。
寡黙で、孤高な雰囲気。ロバート様の隣にいた私に気づかないほど、己の鍛錬に打ち込む彼の姿は、どこか不思議な魅力を放っていた。
いやぁ、イケメンだったなぁ…。
そんなことを考えながら、マルタに言われてティーサロンへ向かった私は、自分の目を疑った。
そこには、昨日騎士練習場で私が見つめていた、あの寡黙な騎士が座っていたのだ。控えめながらも凛とした立ち姿は、間違いなくカイルだった。
「聖女様、ご紹介いたします。こちらはカイル様と仰います。近衛騎士団に所属する、大変優秀な騎士でございます」
マルタがにこやかに紹介してくれた。カイルは、静かに立ち上がり、簡潔に頭を下げた。
「カイルと申します」
その声は低く、しかし芯が通っているようで、彼の誠実さを感じさせた。
「え、カイル様が…なぜ…?」
私は驚きを隠せない。
まさか、まさかだけど、私が興味を持ったそぶりを見せてたから呼んだの!?
マルタさん、本当に仕事が早すぎない!?
これだから、このハーレム生活はやめられないのよ。
控えめに言って、最高すぎる!
お茶会が始まると、カイルは多くを語ることはなかったが、私の問いかけには真摯に答えてくれた。故郷のこと、騎士としての務め、そして今の国の状況について。
話していくうちに、彼が故郷を遠く離れ、この国に身を寄せている私に、静かな同情を抱いていることに気づいた。同じように、帰る場所のない人間としての共感のようなものがあったのかもしれない。
カイルとの出会いは、久しぶりに日本のことを思い出させ、私の心に新たな波紋を広げた。彼の存在は、ローズ宮の賑やかな日常に問いを投げかけきたようであった。
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