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にわとりの里

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「ぴよの故郷にいこーよぴよ!」

 カラスの子が王様の仕事にすこしなれたころ、とつぜんひよこが言い出しました。カラスの子もアヒルも困惑しましたが、ひよこが言い出したら聞かない性格なのを理解しているため、次のお休みの日にお忍びでひよこの故郷である〝にわとりの里〟に向かうことにしました。
 にわとりの里はアヒル帝国から見て東にあり、朝日とともに大きな鳴き声がとどろくことから、朝の里とも呼ばれています。

「ついたよついたよ! ここがぴよの故郷!」

 ひよこは里の入り口で楽しそうに踊りだします。

「くわあ。ここに来るのはひさしぶりくわあ」

「アヒルさんはここに来たことがかあ?」

「くわ。まあ入り口までだがなあ」

「さあ! いくぴよ!」

 ひよこはしゃべる二人の羽をつかんでずんずん進みます。まずは商店街をぶらりと散策です。

「ここは里でいちばんの商店街ぴよ! そしてこれがあーー!」

 ひよこは三人分の飲み物を買ってきます。

「ひよこの里名物! 生みたて卵のミルクセーキぴよ!」

 ひよこから受け取ったアヒルとカラスの子は顔を見合わせてからストローを口にします。

「あまい!」

 二人は同時に言いました。

「ぴよぴよ。それがいーのぴよー!」

 ひよこはおいしそうにごくごく飲むのでした。
 そうしてひよこたちが歩いていると、ひときわ大きなにわとりに守られた、おしゃれなにわとりの一団をみかけました。

「あ、あのにわとりたちはこの里で一番偉いうこっけーさんたちぴよな。ぼでーがーどをしているのは、里で一番つよいしゃもさんぴよ。ぴよもうこっけーさんみたいにきれーなにわとりになりたいぴよ!」

 ひよこの説明を聞きながら、アヒルとカラスの子は一団を眺めるのでした。

◆◆◆

 そしてひよこは自分の巣へ2人を案内しました。元気よく巣の扉を開けます。

「ぱぱー! ままー! ただいまぴよー!」

「あらあらこけこけこっこちゃん。おかえりなさい。……あら、そちらはこけ?」

「ブランとノワールぴよ!」

「こけ? ノワール? そういえば最近即位されたカラスの国の王様がそんな名前だったような?」

「ぴよ? カラス王本人ぴよよ?」

「こ、こ、こけえええええええ!?」

「ぴよよ、今日ぴよの巣に泊めるからー」

 ひよこはいつでもどこでもマイペースなのでした。
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