転生者は隠しボス

アロカルネ

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第一章

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本国の宿舎に戻ったテオと僕は一緒に布団で横になっていた。
元々遠征の後は休暇の予定ではあったが、精鋭の一人が魔物化した事への対応と見習い騎士たちのメンタルケアで、予定よりも長い休暇になるらしい。それに、ガッツが魔物化したことが、テオには相当に応えてしまっている。
「フェル、わりぃ・・・」
「・・・いや、役得だ」
背中を優しく撫でるとテオは僕の胸に顔を埋めながら甘えてきて、それが非常に可愛らしくて堪らない。
でも、流石に手を出せる空気ではないし、今はしばらく我慢するとしよう。
それにしても、一体いつ教えれば良いのかなぁ。
「ガッツさんってさ、俺がこの宿舎に泊まり込んでから、ずっと面倒見てくれた人なんだ・・・ぐずんっ・・」
ポツポツと語り始めるテオに、僕はいよいよもって伝えるタイミングを逃していった。
数十分後・・・
「ええぇ!?す、救える方法があるのか!?」
「・・・・そりゃ、憑依されてるだけだし、憑依を解けば人間に戻るよ」
「そそそっ、そういうことはもっと早く言えよ!?」
「・・・泣いてるテオもとても可愛かった」
「うわあぁぁ!!い、言うなよッ、馬鹿ぁ!!」
顔を真っ赤にして怒ってくるテオに癒やされながら、勇者としての力を高めていくことが大切だという事も伝えておいた。それに俄然やる気を出すテオを眺めていると・・・
「テオ、少し良いか?」
「え? あっ、た、隊長!?お、お疲れ様です!!」
部屋に入ってきた隊長にテオは慌てたように敬礼し、僕もそれに習って敬礼する。
一瞬だけ、隊長は僕に視線を向けてくるが、すぐにテオに視線を戻す。
「非番の日に悪いな。実は・・・」
そして、テオが来週に王族にいる王城で勇者としての確認と勇者降臨を祝って祝賀会をされるという説明を受けた。


隊長からの説明を受けた俺は頭の中がパンクしそうになっていた。
いつかは騎士として、国王様から勲章を授与されるとか言う夢を見なかったわけでは無いが、それが来週に叶うとか急に言われても、今はガッツさんを助けられると言うことを聞いただけでいっぱいいっぱいだ。
それに・・・
「え゛っ、勇者の証を大勢の前で見せるって事・・・・ですか?」
「ああ、そういう予定になってるんだが、どうしたんだ?」
不思議がる隊長に俺は頭の中が真っ白になる。トイレとかでこっそり確認したのだが、勇者の紋章は足の付け根。しかも股間の真横に出ており、これを見せるって事は当然真横にあるチンコも一緒に見せるということになる。
「じ、実は・・・・」
俺の説明に隊長の非常に気の毒そうな顔をしてくれるが、すでに決まってしまっている事であり、王族の決定を覆す事は出来ないと言われてしまった。まさか、王族の皆様方も俺のチ〇コの真横に証があるなんて思ってないからなんだろうけど、大勢の貴族たちの前で局部を晒すなんて、不敬罪にならないかが心配だ。
「・・・・・みんなの前でテオがフルチン。エロイな」
「い、言うなよぉ・・・うぅ・・」
「恥ずかしがっているところ申し訳ないが・・・そんな余裕もないと思うぞ?」
「え?」
隊長は小さく咳払いをすると、これから俺が必要になるものを説明してくれる。
・王族に対する礼儀作法
・騎士としての礼儀作法
・食事マナー
・ダンスの練習
・貴族たちの囲い込みによる勧誘に対する断りの入れ方等々・・・
「ちょっ、ま、待ってください!!そんなにいっぱい覚えきれる自信ないです!?」
「いいや、嫌でも覚えてもらうぞ。お前の行動が引いては軍の評価にもかかわるわけだからな・・・」
非常に座った眼で肩に手を置かれてしまい、その目は絶対に逃がさないという強い意志が感じられる。
まだ勇者としての自覚もないのに、今から訪れる試練に俺は腰を引こうとしたが・・・
「という事で非番は返上だ。今からノルと一緒にたっぷりとお勉強の時間だ」
「い、いやだー!!フェル、フェル~!!」
「・・・・怯えて嫌がってるテオも可愛いな」
唯一の頼みのフェルに助けを求めるが、相変わらずの平常運転のフェルは、引っ張られる俺の後についてきながら無表情でファイトと応援だけをしてくれるのだった。
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