転生者は隠しボス

アロカルネ

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第二章

2-3

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冒険者での初めての依頼は平たく言えば、ゲームでのサブイベントの解説であり、同時にヒロインとの出会うための強制イベントでもある。ちなみにサブイベントは仲間たちの友好度を上げられたり、連携技を覚える事が出来る。
最初のサブイベント以外は任意なので、やらなくても問題なく進められるが、やっといて損はないですよーと伝えるのがゲームでの流れだ。
そして、その最初のサブイベントはテオは騎士団を追放され、今回のように支度金も出されないから、次の街で路銀の確保をするために冒険者として初めての依頼を受けた所から始まる。サブイベントを無事に終えた帰り道、汚れていたテオは身体を清めようと近くにあった湖に行くのだが、その時に水浴びを先にしていたエルフの少女と出会う。この時には仲間にならないが、そのあとに紆余曲折あり、テオが勇者だという事を知って仲間になるのだが・・・
「もうお婿に行けない・・・」
「・・・・大丈夫だ。僕がお婿になるから」
「それ、先を超してやる宣言なだけじゃねぇか!?」
「・・・・テオのお婿さんになるから大丈夫だ」
「俺もお婿さんになりたいの!!」
「・・・じゃあ、一緒にお婿さんだね」
そんなヒロインである彼女との出会いでのイベントショックで、さめざめと泣くテオを気の毒に思いながら頭を優しく撫でて慰める。可愛いテオの息子さんも紹介したかったんだが、テオ的には少しだけ恥ずかしかったようだ。たぶん、寒さで縮こまっていた所為なんだろう。全世界に個人的にテオの可愛い姿を広めて回りたい。
「貴方たち、仲がよいね。誤解、申し訳ない」
「ぐず・・・うん・・・大丈夫だ」
申し訳なさそうにする彼女は、エルフという事もあり、時々人語が上手く使えないのがコンプレックスというのがゲームの設定なのだが、実際に見ると堂々としてるように見える。ゲームが進んでいくにつれて、テオから言葉を学んでいくので初めは感じる違和感もなくなっていく。そういうイベントも多々あり、主人公とヒロインだし、仲を深めていくのだ。ゲームでは得意げに教えてるテオも可愛かった
「えっと・・・・」
「ボク、エルム」
「エルムさんも旅をしてるのか?」
「ええ、綺麗なものを見てみたい」
「そ、そっか・・・・」
エルフというのは見目が麗しいのが大半な事もあってか、頬を赤らめているテオも可愛い。話を聞くと彼女もユミバナで路銀を稼ぐ為に行くために旅をしており、野営の準備を終えた時に男の子の呻くような声を聞き、こちらに駆け付けたらしい。
「俺、やっぱりもうお婿にいけないかも」
「・・・・大丈夫だ」
「???」
喘ぎ声まで彼女に聞かれていたようで、再び落ち込むテオを抱っこしながら、僕は役得とテオの可愛さが伝わっていた事に満足して鼻を鳴らすのだった。


俺の心にダメージを残すハプニングはあったが、何とか誤解が解けてよかった。
今度からは外で見せるときにはキャンプの中でだけにしておこう。
「・・・・一つ、提案がある」
そろそろ彼女も自身のテントに戻ろうとしていた時、フェルから待ったがかかった。
「・・・ユミバナに着いたら一緒に冒険者ギルドで依頼をしないか? 報酬はこっちが3でよい」
「ボクに有利。なにか企んでる?」
エルムさんは綺麗な見た目だし、そういう下心があるという奴も何人もいたんだろう。
警戒した顔になるとフェルは頬を赤らめてて、ますますエルムさんの警戒度を上げていく。
「・・・えて・・ほしい・・」
「?」
「・・・代わりに冒険者としての指導や旅の仕方を教えてほしい」
確かにエルムさんなら一人で旅をしていたようなので、そういう事にも適任だろう。
俺が教えても問題はないが、これからは冒険者として旅であり、小間使いや騎士として部隊があった頃の遠征ぐらいしか経験のない俺だと、どうしてもズレというものが出てくる可能性はある。
「貴方たち、実力はある。でも、冒険者は初心者?」
「ああ、実は俺たちは・・・・」
旅に出た経緯を簡単に説明すると、エルムさんは半信半疑という顔で俺たちを見てくる。
エルフの生態は詳しくは分からないけど、善良な種族ではあるけど、人間嫌いという話を聞いたことがあるし、こうやって話を半ばでも信じてくれたり、誤解とはいえ助けようとしてくれたり、ありがたい事なんだろう。
「勇者なら勇者の証がある筈。見せてほしい」
「えっ゛」
「? なにか不都合がある?」
また険しくなる声に俺のほうが非常に参ってしまう。これが額とか手とか、胸とかだったら問題なかったんだけど、見せるという事は彼女の前で再び股間を晒すという事になるわけで・・・綺麗な彼女を相手にそれは絵面的にもやばい。


もしも本当に勇者であるならば、ボクはエルフとして彼らを助ける使命を得る。
エルフは大樹と勇者を崇拝している一族であり、ボクも例に漏れない。この旅も綺麗なものを見てみたいというのも本当だけれど、復活した魔王を倒すために勇者を助力して共に旅に出るつもりだったのだ。
でも、今の彼らの反応を見ると、本当に勇者というのが怪しくなってくる。勇者ならば勇者の証があるのは当然だし、それを知らないというなら話にもならない。
しかし、疑うボクに無表情で整った顔をした少年フェルの方が・・・
「・・・・あんな舐めまわすようにテオの裸を見たのに見てなかったのか? いや、痴女の類か?」
「みみみ、見てない、そんな舐めるようにない!!」
呆れた顔で言われてしまう。まるでボクが痴女のような言い方をされるが、見たら悪いかなっと思って出来るだけ上半身を見るようにしてたのに何て言い草だ。
「そ、そんな事を言って、誤魔化す。ない!!」
「・・・・・テオ」
「うぅ・・・み、見せなきゃ・・・ダメ?」
きゅーんっと聞こえてきそうな子犬のような顔をされ、どうしてそんなに見せるのを嫌がるのか理解できない。
だが、二人の反応を見る限り、証の事は知っているようにも思える。見せられない事情があるのだろうか?
「・・・見えるように手で隠さないようにしたのに、本当に見てなかったのか?」
「・・・・・っ!?」
フェルの言葉にボクは、テオが隠そうとした時に両手を掴んで隠せないようにしたのを思い出す。あの時には羞恥で泣く少年の恥部を見せつけさせて苦しませるなんて、なんてひどい奴なんだと思ったが、フェルは私がエルフだという事に気づいていたなら・・・・あの行動は・・・・
「あ、あるのか・・・その・・・そこに・・・」
「・・・・・う、うん」
私は頬が熱くなるのを感じながら、震える指先でテオの股間を指さすとテオは両手で隠しながら涙目で頷いてきて、周知で震える姿は、なんというか守ってあげたくなるほどだ。確かにこれは見せるのを嫌がるわけだ。
勇者の証は代々あらゆる所に出現した。腕や額だけでなく頭皮や臀部、眼球や足の裏なんて言うのも伝承には残されている。ならば、出た場所が、その、アソコだとしても嘘だとは断定できない。
『フェ、フェル、人見てる、見てるから!!なあ、やめてくれよっ、頼むよぉ・・やぁ・・やぁだ・・』
『・・・我慢だ・・今回だけだ・・・ほら、もっと足を開いて・・見せてやれ・・』
『いやぁ・・えぐっ・・・やだぁ・・ひっく・・・やだあぁ!!』
『くっ、この外道めが!!』
十数分前のやり取りは、思い返せばそういう意図な気がしてきた。あれだけ堂々と嫌がって泣く親友のテオに恥ずかしい思いをさせてまで晒させて胸を痛めたというのに、また見せろという私を、フェルが痴女だと疑ったのも無理からぬ事だと思える。
「・・・その・・悪かった。無茶言った。見ない。見たくない」
「い、いえ・・・うぅ・・・断言されるとそれはそれで泣ける・・・」
「ごほんっ、て、提案なのだが、とかく受けよう。報酬は同じ良い」
「あの・・でも、それだと不公平じゃないですか?」
「代わりに私に人間の言語、教えて。時々上手く喋れない」
本当に勇者かはまだ疑わしい部分もあるが、彼らと一緒に冒険をすることで見極めよう。
「・・・パンパカパーン、痴女エルムが仲間になった」
「フェ、フェル!?」
「・・ち、痴女じゃない・・・痴女ない・・・・」
ついでに、私が痴女でないこともぜひとも見極めてもらおう。絶対に・・・・
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