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【悪酔いと「会社」の忘れもの】
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「もう、しっかりしなよ」
そう素で口にしてしまってから奏は小さく頭をふると意味もなく言い直す。
「しっかりしてください」
普段のように声音を変え、トーンを落とし、あくまでも暗く、おとなしく。面白みのかけらもない女子社員の声で。
そしてそんな自分が可笑しくなって、小さく声をたてて笑った。
そう。
酔っていたから。
店を出て捨てていこうとした朗太が大量リバースし、奏の衣服までも汚したから、だからかなりムカついて勢いで近場のラブホテルへ連れ込んだのだ。
本当に酔っていたとしか言いようのない話だ。
部内一、いや好みによっては社内一のアイドル友部朗太が目を覚ましたとき、その横に──しかもエロホテルのベッドに、社内一地味で大人しく面白みのない自分なんかがいたらどんな顔をして、どんな言い訳をするのか。
後で酒の恐ろしさに身震いすることになるのだが、そのときは謎のテンションで仕返しの方法を考えていたのだ。
どうせ衣服が乾かなければ帰れないんだからと、朗太が目を覚ました時のために、イメージトレーニングに励む。
処女だったのに、とか?
うわ。
それはかなりウザくていいっ!
しかもジットリとネットリと上目遣いで見ながら重ーく告げて、嘘泣きのひとつもかましてやろう!
爽やかで誰にでも優しい──そう、社内で空気となっている奏にすら明るく接する朗太が陥るであろうパニックを思えば、バカバカしくもワクワクした。
空気感マックスの地味な女と寝てしまった朗太。
男に免疫のない処女に酒の勢いで誤って手を出して挙句泣かれたとき、朗太はどんな反応をするのだろう。
久しぶりに笑い声をたてた。
汚物を処理してそれなりに時間も経過し、それなりに酔もさめたけれど、それでもやっぱり酔っていたのだ。
そうでなければ朗太など捨て置いて、服が乾くこともまたずタクシーを拾ったはずだから。
マヌケにも自分の笑い声で朗太が目を覚ますまで居座るなんてことはなかったのだ。
「……ん…」
掠れた声を漏らし目を細めた朗太と視線が絡む。何が起こったのか理解できないようで、ガッツリ固まったまま奏を見ていた。
ふふ。
ざまあ。
そりゃあパニックにもなるだろ。
その他大勢以下の地味女が半裸で横にいて、熱い視線を送ってるんだから。
奏は、なるべく重い女と思われるように、一生懸命な表情で胸元のシーツを握った。
「あ……おは…よう。あの……ゆうべの…こと……」
辛気臭い上目遣いの奏に、まん丸になった朗太の目は、まさに豆鉄砲をくらった鳩のそれだと、吹き出しそうになるのを堪えるためシーツを引き上げて顔を隠した。
「……え……あの……、ごめん……オレ…」
ふん。
パニクれパニクれ。
そして月曜に会社で触れ回られないよう必死で言い繕え。
「私……初めてだったの……。痛かった……。あ……その……ゴ……ゴム…つけてくれなくて……」
おおっと!
中出しですよーっ!
奏の中でのみ盛り上がるクライマックス。
ついつい笑みに緩む顔を見られるわけにはいかないと笑いを堪えるのに、肩がプルプルと震えた。
けれど、それはきっと朗太の目にはリアルに泣いてるように映るだろう。
いや、でも、本気で涙出てきた。
笑い堪えるのに。
そう素で口にしてしまってから奏は小さく頭をふると意味もなく言い直す。
「しっかりしてください」
普段のように声音を変え、トーンを落とし、あくまでも暗く、おとなしく。面白みのかけらもない女子社員の声で。
そしてそんな自分が可笑しくなって、小さく声をたてて笑った。
そう。
酔っていたから。
店を出て捨てていこうとした朗太が大量リバースし、奏の衣服までも汚したから、だからかなりムカついて勢いで近場のラブホテルへ連れ込んだのだ。
本当に酔っていたとしか言いようのない話だ。
部内一、いや好みによっては社内一のアイドル友部朗太が目を覚ましたとき、その横に──しかもエロホテルのベッドに、社内一地味で大人しく面白みのない自分なんかがいたらどんな顔をして、どんな言い訳をするのか。
後で酒の恐ろしさに身震いすることになるのだが、そのときは謎のテンションで仕返しの方法を考えていたのだ。
どうせ衣服が乾かなければ帰れないんだからと、朗太が目を覚ました時のために、イメージトレーニングに励む。
処女だったのに、とか?
うわ。
それはかなりウザくていいっ!
しかもジットリとネットリと上目遣いで見ながら重ーく告げて、嘘泣きのひとつもかましてやろう!
爽やかで誰にでも優しい──そう、社内で空気となっている奏にすら明るく接する朗太が陥るであろうパニックを思えば、バカバカしくもワクワクした。
空気感マックスの地味な女と寝てしまった朗太。
男に免疫のない処女に酒の勢いで誤って手を出して挙句泣かれたとき、朗太はどんな反応をするのだろう。
久しぶりに笑い声をたてた。
汚物を処理してそれなりに時間も経過し、それなりに酔もさめたけれど、それでもやっぱり酔っていたのだ。
そうでなければ朗太など捨て置いて、服が乾くこともまたずタクシーを拾ったはずだから。
マヌケにも自分の笑い声で朗太が目を覚ますまで居座るなんてことはなかったのだ。
「……ん…」
掠れた声を漏らし目を細めた朗太と視線が絡む。何が起こったのか理解できないようで、ガッツリ固まったまま奏を見ていた。
ふふ。
ざまあ。
そりゃあパニックにもなるだろ。
その他大勢以下の地味女が半裸で横にいて、熱い視線を送ってるんだから。
奏は、なるべく重い女と思われるように、一生懸命な表情で胸元のシーツを握った。
「あ……おは…よう。あの……ゆうべの…こと……」
辛気臭い上目遣いの奏に、まん丸になった朗太の目は、まさに豆鉄砲をくらった鳩のそれだと、吹き出しそうになるのを堪えるためシーツを引き上げて顔を隠した。
「……え……あの……、ごめん……オレ…」
ふん。
パニクれパニクれ。
そして月曜に会社で触れ回られないよう必死で言い繕え。
「私……初めてだったの……。痛かった……。あ……その……ゴ……ゴム…つけてくれなくて……」
おおっと!
中出しですよーっ!
奏の中でのみ盛り上がるクライマックス。
ついつい笑みに緩む顔を見られるわけにはいかないと笑いを堪えるのに、肩がプルプルと震えた。
けれど、それはきっと朗太の目にはリアルに泣いてるように映るだろう。
いや、でも、本気で涙出てきた。
笑い堪えるのに。
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